43. 画策?
昨日はいろいろあったので今日1日くらいは休みたい。
そんな気分でいっぱいだが、そうもいっていられない事情が私たちにはあった。
固定資産税の支払い。
そのための金策である。
今後の生活費を安定して稼ぐ必要もあるので、何とかしてこれを早めに解決しておきたいのが心情だ。
「昨日マーリンに使ってもらった三輪車を売って稼ごうと思うんだけど、ただ売るだけじゃ、半年で金貨6枚と大銀貨14枚の一括払いなんてできるわけがない。
というわけで案を募集します!」
午前のうちにマイホームの2階増築工事を済ませた私たちは、冷房の効いた2階の会議室で今後の金策について話し合っていた。
ちなみにおさらいしておくと金貨1枚は日本円の感覚だと多分2~30万円くらいだと思う。
まぁ、物価とかそもそもの物の価値自体が日本とは異なるから、安易に何円くらいなんて比較はできないけど、雰囲気的にそれくらいの感覚だ。
(大銀貨で買えるものがそこそこいい感じの小型家電とか大型家具みたいなものって話だったからな……その28倍っていうなら、大銀貨1枚がおよそ1万円くらいだと思っておくのが妥当だろう、うん)
「確かに、普通に売るだけじゃ無理だろうな。
それに俺たちは冒険者だ。
金策はあくまで拠点維持費であって、そっちを本業にしてしまっては本末転倒になる」
「その通りなんだよね……。
個人で稼げる額には限度がある。だから私は人を雇って、そっちに働かせて稼ごうと思ってるんだよ」
「一理ありだが、それだと生産コストとかどうなるんだ?」
「だから悩んでる」
マーリンの鋭い指摘に、私はソファにもたれかかった。
「それに、人を雇って企業化するとしても、それ以前に信用がなければ人員は集まらねぇぞ。
すぐ潰れるかもしれないガキの作った会社に、誰が投資するんだ?」
「ごもっともで」
続く彼の指摘に、私は天井を仰いだ。
「じゃあ、マーリンならどうするのさ?」
「俺なら、ライセンスを売る」
「ライセンス?」
彼の言葉に、私はそのままの姿勢で尋ねた。
「製造権とか販売権みたいなものだな。
職人が魔道具を作って売るには2種類の方法があるんだよ。
1つは自分で作って売る。だがこれはさっきも言った通り自分の時間を消費するから大量生産には向かない。
もう1つはどこかの工房に委託して作ってもらって、定期的に製造権と販売権で利子をとる。
売れた分の数%が手元に来るわけだな。
こっちの方は自分の手を使う必要がないから時間に空きができるし損失も少ない。
が、作って売ってくれるかは工房次第で、下手すりゃ1ヵ月で契約を切られるし、形として残らない以上、こっちの知名度がないとライセンス料を回収できなくなる」
「あぁ、そんな権利を買った記憶はない、これは自分たちで発明したものだって言われて権利を盗まれるのか」
「そういうこと」
マーリンの説明に、私はなるほどと納得する。
要するに特許で稼ごう、という話だ。
発明品と言う体でショップ機能で購入した三輪車と、その設計図を用意して製造と販売を委任する。
そしてその売り上げから数%徴収して、これを税金の支払いに回す。
このやり方なら、別に三輪車に限った話ではなく、別の商品でも応用が利く。
物理的な機構を持つものなら、解体してその設計図を作ることなんて誰でもできることだしね。
難しいものがあるとしたら魔道具か。
こっちの方は仕組みがわからないからな……。
元の世界のものをそのまま流用というわけにもいかないだろうし。
そんなことを考えながら、稼働し続ける会議室のエアコンを眺める。
私が買った家電は、ことごとく魔道具化されていた。
電気はいらない。
ただ大気中の魔力を吸収して勝手にエネルギーを用意してくれる優れもの。
イメージ的にはソーラー発電みたいなものか。
それにしても、マーリンって法律とか詳しいよなぁ。
やっぱり神殿にいたころにそれなりに勉強とかしてたのだろうか。
まだ中学生くらいなのに……ひょっとしてこいつやっぱり天才なのでは?
「ど、どうしたんだよ、急に見つめたりなんかして」
「いやぁ?
相変わらず頭いいなと思って」
「……そんなことねぇよ。
俺はただ……」
「ただ?」
言いよどむマーリンの顔を覗き込むと、彼は長い前髪の下で視線を逸らした。
「なんでもねぇ」
「そうかいそうかい、まあ言いたくないなら深堀はしないよ。
話したいときに言ってくれればそれで」
「……あぁ、じゃあお言葉に甘えさせてもらいますよ、ご主人様」
不意に、マーリンが席を立った。
「どうした?」
「ちょっとトイレ」
「行っトイレ~」
「なんだそりゃ」
苦笑いを浮かべて部屋を出る彼を見送って、息を吐く。
「信頼か……」
正直言って、マーリンのライセンスを売る案については賛成だった。
だってそっちの方が仕事らしい仕事をせずに楽して稼げるし、冒険者業とも両立できる。
しかし同時にリスクのある話でもあった。
信頼がなければ裏切られる。
そうでなくとも、物が売れなければそもそもただの紙切れになってしまう。
正直言って賭けでしかない。
三輪車が売れそうなことについては、正直確信がある。
馬車よりコストがかからないし、荷物だって籠に入れて運べる。
日常の買い物にはもってこいの代物には違いないし、良さを知れば誰だってほしくなるものだ。
実際、自転車を持っていない人は前世にはいなかった。
売れば確実に金になることは分かり切っているが、この世界の人たちにとってはどうだ?
まったく見たことのない代物に、どこまで価値を感じてもらえる?
感じてもらえたところで、今の私に信用なんてあるのか?
「金策の前に、まずはそこからか……」
冒険者と商売のことを考えて、ふとジュンのことを思い出す。
彼女は冒険者として有名になって、父親の商品を宣伝することで助けになりたいとか言っていた。
つまり、この世界の人たちにとっては高ランクの冒険者はただそれだけで信頼の証になるのではないだろうか。
だとしたら──。
「いいこと思いついたな」
私はにやりと笑みを浮かべると、トイレから戻ってきたマーリンにこの作戦を伝えてみることにした。
すると彼も、なるほどと笑みを浮かべて賛同の意を示す。
「つまり、勇者として協力する代わりに、その仕事を冒険者ギルドを通した指名依頼として受けることで、名声も一緒に稼いじまおう、ってわけか」
私の説明を要約するマーリンに、私は満面の笑みで頷いた。
「そうそう、そしたら神殿に睨まれなくて済むし、一石二鳥でしょ?」
「あぁ。ちょうど、神殿とはコネもできたわけだし、猫探しの件の直後で騎士団からの評価もそこそこある」
彼の首肯に、私は一瞬小首を傾げる。
「……えっと、なんで急に騎士団?」
「なんの理由もなしに神殿が個人に依頼なんてするか? って話だよ。
騎士団からの信頼があれば、少なくとも神殿が指名するのに一応の納得のいく言い訳をつけられるってこと」
「あぁ、なるほど」
言われてみれば確かに、周囲からすればぽっと出のニュービーが急に神殿に指名依頼をもらうのは不自然だ。
ともすれば、噂がそこそこある今のうちに神殿から依頼が来た方が、周囲からの不信感もない。
(神殿は、魔王復活の件を隠したがってるみたいだからね……)
互いに頷く顔を見て、悪い笑みを浮かべる。
「そうと決まれば、さっそくギルドに行くか。
下準備をすませないとね」
「だな」
拳をぶつけ合い、ギルドへ行く準備を始める2人。
こうして、私たちの優雅なスローライフのための作戦が幕を開けたのだった。
現在の悠里のステータス
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■ステータス■
名前:鑑 悠里 Lv.12
性別:女
種族:異世界人 Lv.1
職業:ノービス Lv.1
称号:〈異世界人〉Lv.1
〈臆病者〉Lv.2
〈何にも束縛されない〉Lv.2
〈無謀な挑戦者〉Lv.2
〈導師見習い〉Lv.1
〈追跡者〉Lv.1
〈暗がりに潜む者〉Lv.1
〈呪術医見習い〉Lv.1
〈樵見習い〉Lv.1
HP:120/120
MP:120/120
SP:160/160
筋力:43
活力:13
速度:13
知能:13
感覚:19
残りステータスポイント:0
■スキル■
◇武術系◇
〈剣術〉Lv.5
└〈偃月殺法〉Lv.1
〈聖柄の太刀〉Lv.1
〈居合抜き〉Lv.3
〈鎧徹し〉Lv.1
〈体術〉Lv.1
└〈空気投げ〉Lv.1
〈投擲〉Lv.1
〈卍蹴り〉Lv.1
〈蝦蹴り〉Lv.1
◇魔術系◇
〈呪詛マスタリ〉Lv.1
〈魔法〉Lv.1
└〈術式理解I〉Lv.1
〈結界〉Lv.1
└〈反転結界〉Lv.1
◇身体操作系◇
〈身体操作マスタリ〉Lv.1
◇防御・回復系◇
〈自動回復〉Lv.5
〈食い縛り〉Lv.1
◇耐性系◇
〈驚愕耐性〉Lv.1
〈痛覚耐性〉Lv.2
〈負傷耐性〉Lv.4
〈転倒耐性〉Lv.1
〈気絶耐性〉Lv.2
〈トラウマ耐性〉Lv.1
〈脱水症耐性〉Lv.1
〈熱中症耐性〉Lv.1
〈精神攻撃耐性〉Lv.1
〈拘束耐性〉Lv.1
〈呪詛耐性〉Lv.4
〈隷属無効〉Lv.1
〈恐怖耐性〉Lv.3
〈不意打ち耐性〉Lv.1
〈閃光耐性〉Lv.2
〈麻痺耐性〉Lv.1
〈粉塵耐性〉Lv.1
〈冷気耐性〉Lv.1
〈病魔耐性〉Lv.1
〈瘴気耐性〉Lv.1
◇隠遁系◇
〈忍足〉Lv.2
〈気配隠蔽〉Lv.2
◇感知系◇
〈洞察〉Lv.2
└〈名推理〉Lv.1
〈気配察知〉Lv.5
└〈霊感〉Lv.1
〈先の先〉Lv.1
〈魔力感知〉Lv.1
〈遠見〉Lv.1
〈暗視〉Lv.1
◇生活系◇
〈交渉〉Lv.1
〈高速思考〉Lv.3
└〈並列思考〉Lv.2
◇ギフト系◇
〈水神の加護〉Lv.1
└〈水中呼吸〉Lv.1
〈水上歩行〉Lv.1
〈水袋勁〉Lv.1
〈木神の加護〉Lv.1
└〈成長促進〉Lv.1
〈効力増強〉Lv.1
〈笑桜勁〉Lv.1
〈火神の加護〉Lv.1
└〈二段跳び〉Lv.1
〈燃焼無効〉Lv.1
〈火鳥勁〉Lv.1
〈土神の加護〉Lv.1
└〈障壁〉Lv.3
〈土圧無効〉Lv.1
〈捻央勁〉Lv.1
〈金神の加護〉Lv.1
└〈金属操作〉Lv.4
〈即死耐性〉Lv.1
〈拡金勁〉Lv.1
〈五行神の加護〉Lv.1
└〈気功法〉Lv.1
└〈遠当て〉Lv.1
〈沈墜勁〉Lv.1
〈纏絲勁〉Lv.1
〈十字勁〉Lv.1
残りスキルポイント:1
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次回もよろしくお願いいたします!




