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第2話 私にとって男はロクなものではない。

 





 口ではああ言ったものの実のところ恋には大変興味がある。ただ、現実には起きる気配が全くしない。息をするようにナンパする男ばかりの国ピアチェーヴォレなのにだ。何故だ? 弟のジーノ曰く。


「遊び相手を見繕うのに身分が自分より上の女性を狙うはず無いよ。後腐れなく別れれる遊び人な女性ならまだしも、真面目な王女……じゃなくて今は女王だね。絶対後々問題になる女王を口説こうという輩がいないのは当然だよ」


 らしい。私が恋するにはこの身分は障害にしかならないらしい。身寄りのない孤児のがよっぽどナンパされるようだ。まあ、どうせ遊びだから良いじゃんと割り切れない。遊びだろうが何でも良い私は恋愛がしてみたい!


 父の事はアホだと言ったが、所詮は血の繋がった親子。私にもそのDNAは受け継がれてるのだ。私が男なら遊び人であっただろう。だが、残念ながら私は女だ。性別は権力がどんなに高くても変えられるものではない。なら、私からナンパすれば良いじゃんってなるじゃん。ピアチェーヴォレでは女性から誘うなんて本当奇跡かってぐらいあり得ないらしい。ふざけてる。国民の看板である女王がそんな奇跡かってぐらいの行為を恥をしのんで起こすわけにはいかない。私が残された道は政略結婚での起きるかもしれない恋愛にかけるしかないのだ。


「あー早く。縁談こないかしらー」


 20歳ってもうすぐで行き遅れである。


 執務室で書類とにらめっこする私。ソファでくつろぐ弟ジーノ。ジーノの外見はピアチェーヴォレ人の特徴とはかけ離れて、繊細な少年って感じだ。さらさらのピンクブロンドの髪に薄い黄緑色の瞳。白い肌はみずみずしくて痩せ気味な体型。身長は平均的な女性の身長の私より少し高いだけ。年齢は見えないけど18歳。まあ、中身は生粋のピアチェーヴォレ人なのだがね。


「姉上。諦めて僕と結婚する? この国で姉上を口説けるの僕ぐらいだよ?」


「だまらっしゃい。色んな意味でドキドキする事を言わないでよ」


 父も母も一緒の弟と結婚なんて有り得ないわ。


 執務室の扉がノックされ「陛下。急ぎの用です」と声がかかる。


「入って」と私は入室を許可した。


 真面目な宮中伯が部屋に入ってきた。


「陛下! 実は縁談の話が来ました!」


 私はガタッと立ち上がった。


 ついにきたか! 私の気分は舞い上がった。


「ジーノ殿下にルーナ国の姫君からです!」


 急激に室内温度が下がった。瓶底眼鏡越しに私は弟に凍てつく視線を送った。


 これはどういう事だ? さっき私と結婚するとかぬかしてなかったか?


「あれ〜? おかしいなぁ。確かにルーナ国に仕事で行った事あるけど、姫を口説いた覚えないよ」


 冷や汗をかく弟をギロリと睨んだ。こいつの口説いてないって言葉程信用出来ないものはない。こいつは息をする様に甘い言葉を平然と囁くのだ。それは女性だけじゃない。男性にもだ。老若男女問わず虜にするその美貌とオープンな性格。この弟は物凄くモテる。そのモテる要素を少しでも分けて欲しいぐらいだ。


「ジーノ良かったわね〜。骨を埋める場所出来て。姉さん全力で、権力振りかざして応援しちゃおうかな」


 冷めた視線を送りつつ口はにやりと歪んだ。


「あ、姉上の応援は遠慮しとくよ。ほら、恋は自分で掴まないとね!」


 わざとらしく手を振りかざす弟。こいつの場合まだ遊び足りないから結婚したくないのだ。結婚して浮気なんぞしようものなら女王である私がコテンパンに懲らしめる事を承知してるからだ。




 〜〜〜




 翌朝。私はいつものように執務室で書類仕事をしようとしていた。そう。しようとしていたのだ。デスクには確かに書類が積まれてるが、いつもよりも少ない。そして、目を通してみると署名以外の欄はびっしりと埋まってる。固まる私。……私の仕事がなくなってる。


 地味にショックを受けた。恋愛を諦めていた私に残された楽しみは仕事しかなかった。仕事は頑張れば頑張った分だけ評価される。まあ先日の舞踏会での断罪した貴族と男からは盛大に恨まれただろうが。ちなみに罰は爵位の剥奪と労役だ。万死に値するとかカッコいい台詞を言ったのはパフォーマンスだ。お前達も罪を犯せばこうなるぞ! という見せしめである。被害者の人は私に感謝してることを願おう。


 デスクを呆然と見つめてるといつの間にか執務室に入っていたらしい宮中伯の男が私に声をかけた。


「ああ。それ同僚と一緒にやっときました。後は署名だけですよ」


 そんなの見れば分かる。私が知りたいのは何故やったという理由だ。私は掠れた声で(予想外にショックだったらしい) 「何故?」と呟いた。


 男は眩しい笑顔でこう言った。


「陛下は年頃の女の子なのだから、一日中こんなジメジメした室内にいないで、外で遊んで来てくださいよ。たまにはお茶会でも開いては如何ですか?」


 あっ親切心のようです。その親切心はちょっと迷惑ですがね。小さな親切大きな迷惑とはまさにこの事を言う。私お茶会って全然開かないし、参加しないわ。だってみんなしてウキウキと心踊る恋の話をするんだもん。初めのうちは良かったけど、だんだんと自分が滑稽に思えてきて、行くのやめたのよね。


 私は苦笑いをして書類に署名する作業を開始した。内容をじっくりと丁寧に嫌味ったらしくねっちりと読んだ。いつもは気にならない文の間違いがやけに気になる。


「提案書はきっちり5W1Hで書きなさい。データはもっと正確な数字を出して。これグラフ書いた方が見易いわね」


 細かい指示に今度は宮中伯が苦笑いする番だった。


「陛下は仕事熱心過ぎます。少しは不真面目な周りを見習った方がよろしいかと思います」


 余計なお世話。はあ。ここの宮中伯たちはみんな真面目で良い人なのよね。女王になった最初のうちは真面目な人との恋を期待した。が、皆総じて既婚者なのだ。ふざけんな。そりゃ出世頭のようなエリートコースな宮中伯の人達はモテるでしょうね。年中発情期中の貴族達よりも信用できる分モテる。ピアチェーヴォレでの女性たちの奇跡的なナンパはこの宮中伯たちへ対して起きてるのだ。そりゃ、信用できる真面目な宮中伯になら恥をしのんで挑もうとする気持ちは分かるよ。


 これはあれか? 陰謀か? 私にそんなに恋愛させたくないのか? もし私の恋愛を阻止する使命を帯びた間諜がいるのなら、ここまで天晴れな仕事が出来る間諜は他にいないだろう。本当にいたら私は脱帽です。







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― 新着の感想 ―
[良い点]  楽しみは仕事というのが面白いです [一言]  楽しく読み進めさせていただいています。
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