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ーぎぎ…ぎぎぃぃー
夜と朝のちょうど間、空が白み始めるために、太陽がその存在を主張しようと動き出す。
まだ、城壁の上に登る兵士達がに緊張の色は見えず。突然の開戦を予期する者は居なかった。
…ただ一人を除いて
「はぁ…はぁ…」
グテ山の山頂に朝日が掛かったのを確認して、俺は橋を渡って国内へ入る為の東門の閂を震える手で外す。
じきに亜人の強襲部隊が見張りに見つかるだろうが、その時には門は破られ、このクソみたいな国での生活は終わるんだ。
弱小貴族の末っ子に生まれて、成人するまで邪魔者扱い。成人したら直ぐに出ていけと、兵役送りだ。
他所の国では、ドラゴンを倒して大貴族になるような才能ある人間もいるが、俺には無縁の世界だ。
それなら、こんな世界一旦壊して、俺が輝ける未来を作ればいい!
…誰かに見つからないかオドオドと周りを見回す男の気持ちを知ってか、城壁の上が慌ただしくなり、鐘が打ち鳴らされる。
カン! カン! カンッ! 敵襲! 敵襲だー!
鐘の音と警戒の声に一気に周りが慌ただしくなる気配を感じ、男は高揚した!
これで、これで、俺の人生は変わるんだ!!
「貴様!何をしている。」男は冷や汗を流しながら答えた。
「俺はこの功績で、亜人達から、この国を任せてもらうんだ!お前らは皆俺の下僕さ!あははは」
守備兵長は、気が触れたように笑う兵士の男を見つめ吐き捨てる「裏切り者が」
兵長が閂を取り返し、門に収めようとするが、騒がしい気配が門前に迫っているように感じる。
急がねばと門前に迫るも、他方、敵亜人軍の強襲部隊が先に門を押し開いた。
「はっはー!一番乗りだぜ!」
「取り敢えずこの付近の兵士は殲滅だ!本隊が来るまで門を死守する」亜人部隊の隊長が号令を出す。
「隊長、あの裏切り者はどうするんで?」
「斬って捨てておけ」「おぅよ!」
ーそれより少し前の城内ー
うぅ…がはっ!? バッ!
俺は飛び起きた。あの死にかけた記憶…夢を見て、やたらとリアルに痛みや恐怖が襲ってきたからだ。
真っ白なタオルで寝汗を拭いながら、窓の外を見たが、どうやらだいぶ早く目が覚めたみたいだ。
外は薄暗く、まだ朝とも夜とも言えない位の時間だと言う事が見て取れた。
「朝は…誰かが呼びに来てくれるんだったか…」
部屋の中を見渡すと、テーブルの上に水指しとグラスが置いてあり、水を注ぎ一口飲む。
この部屋は、王城3Fにある来賓室で調度品等も一流の物っぽいのが、所々に飾ってある。昨日の防衛戦への参加表明から、ジェラサードさんと、色々な事を確認した。
俺は異世界から来たとか、召喚士としては駆け出しレベルしか無い事とか。肉体のレベルは【真実を映す鏡】と言う物で測れたんだけど、150LVまでしか測れないようで、000ってなってた。
恐らく肉体レベルだけは、転生前を継承って感じかな?
ードンドンドン! ドンドン! 召喚士様!ジェラサード将軍より、直ぐに作戦室へ来て欲しいとの事ですが、入ってもよろしいでしょうか?ー
直ぐに出ますと短く答え、風の纏いに袖を通す。
ドアから出ると、作戦室まで兵士の人が案内してくれるそうだ。何があったのか尋ねると、亜人の奇襲があったと教えられた。
部屋に入ると、王女、将軍、誰か知らない人がこちらに目線を送ってきた。
「私は、守護軍隊長の小太郎・アズマ・セリストと申します。」
歓迎してくれているのか、握手を求められた。
「かの召喚士様と一緒に戦えるとは、大変光栄です!」腕をぶんぶん振るわれた。
見兼ねた美月王女が声を掛けてくれて、ジェラサードさんが説明詳しい説明をしてくれた。
すでに城壁門は突破され広場も占拠されているそうで、敵の本隊が集結しつつあるようだ。
「俺はいてでも行けますよ。」と、軽く答えたが少し動悸が早くなった。
大規模なプレイヤーvsプレイヤー戦も経験した事はあるし、対人・モンスター戦も飽きるほどしてきたけど…所詮はゲームだったし、生身での戦いがどうなるかは、正直不安が過ぎる。
小太郎さんが鼻息荒く、直ぐに向かいましょうと煩いが、美月王女が俺の手を取って「ご武運を」と真剣な表情で見つめてくる。
「これは、本気ですか?」と軽口を言うと、「もぅ」と頬を膨らませて睨まれる。
…これは惚れるわと心の中で思う。
小太郎中将と城内の守護本隊と共に城門広場へ向かう。
広場では既に戦闘が激化しており、俺たちも急いで配置に着く。
「リブロ、ペンネロッサ」
「オートクリエイト」
昨日、事前に描いてストックしておいた、アークエンジェルを召喚した。
戦闘用として、一番低位ではあるが人型の光の精霊が現れた。右手に光りの剣と、もう片方にラウンドシールドを携えている。
「おぉー!」「あれは…」等、味方の軍が騒めきと敵軍に動揺広がっていくのが分かる。
「しかしデカイな…」やはり、通常より1.5倍位ある天使を見ながら呟いた。




