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僕らは女神を失った  作者: 昆布
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02.加護持ち




パレードも終わり家に帰るべく人混みの中を掻き分けて歩く。未だパレードの熱が冷めない街で皆口々にパレードの感想を言い合っているようだ。

どれも特務部隊に対しての賞賛ばかり。



この国アインデルンでは発言の自由が認められている。身分に関係なく、おかしいと思う事をおかしいと言う事に関してこの国は寛大である。この国の現国王、賢王とも呼ばれるアルフォンス国王が国の在り方を変えるために発言の自由という政策を打ち出したからだ。


…まぁしかしそれは表面上の話で、実際には平民には発言の自由なんて認められていないのが現状。平民が生意気にも口を出すと法的には何もなくても、プライドの高い貴族達に裏で何をされるかわからないので普通の平民達は口を閉ざすしかないのだ。


この国の誇りを貶す事は国を貶す事と同じ事と考えれているため、誰もが特務部隊を賞賛する。


と言っても特務部隊の人気は確かなものなので、実際に素晴らしい功績もある。

わざわざ悪口を言うような愚か者はこの国にはいないのだ……僕以外には。





「いや〜、今日のパレードも凄かったなぁ!」


「そうだね、いつも通り素敵だったよ。マリアベル様以外は……いや、マリアベル様もいつも通りと言えばいつも通りだったけどね」


「ばか、お前!こんな所でそんな事言うなって!誰が聞いているのかわからないんだから!」


「あぁ、ごめん…つい。あの人を見ると疲れちゃうんだ」


「オレはお前の親友だからな、お前の言う事を信じてやりたいって気持ちはあるけどよ…。こればっかりは信じられねぇ!!」


「僕だって自分の目で見るまでは信じられなかったよ……できれば一生見たくなかったね…」





ロニと人の少ない道を選びながら平民街を歩く。中心街から街はずれまでは少し歩かなくてはいけない。エリオンド家のようなお金のない下級貴族は街の外れに屋敷を構えるが、基本的には中心街の隣に位置する貴族街に屋敷があるのが殆どだ。

それか余程の物好きでないと貴族でありながらわざわざ街はずれに屋敷を構えたりはしない。


理由は簡単、中心街から遠いからだ。マーケットなどもありなんでも揃う中心街に近く貴族街は警備兵なども常に配置されているので安全でもある。


恵まれた土地で他国に比べるとこの国の治安はいいらしい。現国王様や軍の人達が頑張ってくれているお陰だ。

しかし、未だに行き届いてない場所があるのは事実でこの国にもまだスラム街と呼ばれる場所がある。そこには絶対に近づくな、というのが暗黙のルールである。



そしてこんな街中で僕のように特務部隊にいい顔をしない奴はーーーー





「おい、お前…!今マリアベル様の事悪くいいやがったな!」


「その身なりお貴族様か!お貴族様は気楽でいいねぇ、国の為に頑張っているマリアベル様にまで悪口を言えるんだからなぁ!!」





こういうチンピラ達に絡まれるわけだ…。

小声で話していたつもりだったので、どこで聞いていたのかはわからないが話を聞かれていたらしい。ロニまで巻き込んでしまったのは申し訳ないな…。

というわけで、僕達はチンピラ達に絡まれたのであった。相手は五人…か。





「い、いや…悪口なんてそんなつもりじゃなかったんですよ、こいつも!なぁ、ジュード!」


「そうですね、悪口ではないです。事実を口に出しただけなので」


「お、おいぃぃいっ!ジュード、お前バカかっ!!」


「てめぇっ!いい加減にしろよ!!」




五人の中でも一番恰幅の良い男が僕に殴りかかってきた。僕はそれを交わしながら男達に話しかける。




「いや、別に悪く言ったつもりはないんですよ。マリアベル様も別に嫌いじゃないし、ただ少し苦手ってだけで…」


「それが!悪く言ってるって言ってんだ!!」




殴りかかるチンピラの攻撃を避ける




「く、くそ、なんであたらねえ!!!」


「あぁぁ…やっぱりこうなっちまったか…。ジュード、あんまり煽るなよ!」




煽っているつもりはないんだけどな…。一人の男の攻撃を避けていたら、他の男達もイラついたのか僕に殴りかかってくる。


でも残念、僕には当たらないんだよ。


だって僕はーーーー




「くそお!ちょこまかと逃げやがって!!」


「おい、お前ら下がれ…!もういい、爆発させてやる!!ははは!平民だと思ってバカにしたか!俺はな!右手を爆破させられるっていう精霊からの加護をもらってんだよぉ!!」



茶色い髪をしたチンピラの右腕が光りだす。こいつ…加護持ちだったのか…。

周りの男達もまさか加護を使うとは思わなかったのか、オロオロしだし、茶髪を必死に止めようとしている。


この国では私益なことに加護を使うのは禁止されていて最悪の場合牢屋に入れられることもある。


それにしても自分の加護をベラベラと説明しだすあの男、物語でいうと序盤にやられる三下感がすごいな…。


と、少し余裕ぶってみたけどこれは流石にまずい…三下の加護だと思ってたけど右手で爆発を起こしているチンピラ


これは思ったより爆発が大きそうだ。




「やばい、ジュード!さがれ!!」




ロニの焦った声か響く。このままでは大怪我は免れないな…と呑気な事を考えながら目を瞑った、その時ーーー




「そこまでよ」




平民街に似合わない透き通るような凛とした声が響く。

この場に不釣り合いの声にびっくりして僕が目を開けると先程僕に攻撃しようとしたチンピラの右腕が凍っていた。





「マ、マリア、ベル様…!」


「な、なんで…貴方様みたいな方がこんな所に…」




そこには綺麗な髪を靡かせて、凛とした面持ちでこちらを見ているマリアベル様が立っていた。

チンピラの右腕が凍っているという事はマリアベル様が凍らせたのだろう。





「わたくしが何故ここにいるのか、なんて些細な事はどうでも良いのです。貴方達、加護の私的な利用は罪にあたりますよ。」


「し、しかし!この若造がマリアベル様のことをですね…っ!」


「あぁ…貴方達はわたくしの為に怒ってくださったのですね…ありがとうございます…。ですがわたくしは悲しいです…。貴方達のような善良な市民が、この様な争いを起こしてしまった事が…」





綺麗な顔を泣きそうに歪め口元を押さえながらチンピラ達に訴えるマリアベル様。



いつもの美しさを残しつつ可愛らしさまで感じさせるマリアベル様にチンピラ達、後ロニも目がハート状態である。

さっきまで僕を爆破させようとした茶髪のチンピラは別人のようにマリアベル様へ跪き。





「申し訳ありませんでした、マリアベル様…!今後はこの様な事に加護を使う事なく、マリアベル様のように国の為に使っていくと誓います…っ!」


「そうですか…。皆さま話のわかる方々でよかった。」




ニッコリと満面の笑みを浮かべチンピラを見るマリアベル様

。僕はこの場で一人唯一別のことを考えていたと思う。





「では今回の事は特別に目を瞑りましょう。わたくしの為に怒ってくれたこと、わたくしはとても嬉しく思いますよ。」


「「「マ、マリアベルさま!!なんて慈悲深い」」」


「では、貴方達は騒ぎになってしまう前にお行きなさい。」


「「「はい!!!」」」




と、チンピラ達を逃してしまった。

なんなんだ、さっきの茶番は…。

僕はとある理由があってこの人と話したくはない。

助けてもらっておいてなんだが…早々に立ち去るべきだな…



「マリアベル様、助けていただきありがとうございました。では、僕達もここで…いこう、ロニ」


「あ、あぁ!本当にありがとうございました、マリアベル様!」




面倒にならないうちに僕もそそくさと帰ろうとした次の瞬間。




「お待ちになって」




呼び止められてしまった……


いつものマリアベル様の声より幾分か強さがある。

い、嫌だ…逃げたい、逃げ出したらダメかな…だめだろうなどうせすぐに捕まる。





「先程から見ていましたが、そこの貴方…




ーーーーー加護持ちですね??」






僕をしっかり見据えて彼女はそう言った。






ほら、やっぱり面倒な事になった。









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