41. 再会のノエルと、理事長センリの挑戦状。
「着いたよ~。んじゃ、あたしたちは戻るね!」
アクアたちが消えた先には、悪趣味なほど金ピカな扉。そこには『理事長室』のプレートが掲げられていました。
「無駄に豪華ね……これ、絶対生徒の学費を注ぎ込んでるわよ」 「同感だよ、フィラルちゃん」
私とネフィは顔を見合わせ、意を決して扉を押し開けました。
「失礼します!!」
中にいたのは、豪華な椅子に深く腰掛けた一人の青年。……いえ、見覚えのある「彼」でした。
「……もしかして、フィーちゃんかい?」 「センリお兄ちゃん!? なんで、あなたが理事長室に……」
センリはかつての優しい笑顔を浮かべましたが、その瞳の奥には鋭い光が宿っていました。彼は元最高神ドラグニールとも知己であり、私の記憶が戻ることも予見していたと言います。
入学拒否を申し出る私たちに、センリは冷徹に言い放ちました。
「断るよ。こんな才能あふれる子を手放すわけにはいかないからね」
「……あいつら教師どもの腐った根性を見せつけられて、誰が入学なんてするものですか」
横から鋭い声が響きました。ネフィです。彼女……いいえ、「彼」の口調が突然変わりました。
「お嬢様を守るという、僕の使命がありますから」
「え……その声、まさかノエル君!?」
驚く私の前で、ネフィの姿が陽炎のように揺れ、かつての従者・ノエルの姿へと変わりました。
「お久しぶりです、お嬢様。……事情はすべて承知しております」
「ノエル君……ごめんなさい、私、みんなを……母様と姉様を守れなかった……っ!」
「泣かないでください。旦那様も若様も、ご存命ですよ」
その言葉に、私は崩れ落ちるような安堵を覚えました。父様と兄様は、まだ生きている。……私は、一人じゃないんだ。
「お取り込み中悪いけれど。話はまだ終わっていないよ」
センリの声が、感動の再会を切り裂きました。
「ノエル君はいいけれど、フィラルちゃん、君はダメだ。……どうしても入学したくないなら、僕と『決闘』しよう。君が勝てば自由にしてあげる」
センリの体から溢れ出すのは、人間離れした神聖な魔力。
「半分正解……僕には、天使族の血が流れているんだ。決闘は来週の朝。ここで待っているよ」
「……いいわ。その勝負、受けて立つわよ」
私はノエルの手を握り、センリを真っ直ぐに見据えました。
「来週、後悔させてあげるわ。……行くわよ、ノエル!」
転移で部屋を去る間際、背後からセンリの不気味な笑い声が聞こえた気がしました。 五歳児の姿をした元令嬢と、天使の血を引く若き理事長。 運命の決闘まで、あと七日――。




