第十三話 怒らせたら怖い人
あの後村長と一緒に廃墟の外にいるユリとアヤのところに戻ってきた。
戻ってみるとすでにアヤは復活していたが、顔が青ざめ、震えている。
ユリにその理由を聞くために視線を向けるが首を横に振っていた。
周りには幸い魔物も居ないし怯える必要も無いと思うんだが・・・
ユリに話しかけようと口を開こうとした瞬間
パーーーン!!!
と大きな音が響いた。
音のした方に目を向けると村長がアヤに頬にビンタしていた。
あー、そういうことか
村長はいつもは優しく、穏やかで人当たりの良い性格をしているが戦闘や武術に関してだけは凄い厳しい。
アヤが愚痴をこぼしているのを聞いたことがあるし、実際俺も村長に剣術を教えてもらっている時は厳しくされた。
それにしても怒っている村長は怖い。
今、俺が見た中で一番怒っていると思う。
「どういうとこだ?」
「・・・・・」
「なぜお前はあの場で動いていなかった?」
「・・・・・」
「まさかあの程度の魔物を怖がっていたわけでは無いだろうな?」
「・・・・・」
「お前のせいで他人の命まで危険に晒したんだぞ!」
「・・・・・」
・・・・・・ヤバイ
ゲームの中なのに冷や汗が止まらない。(実際に汗は出てないけど)
何の技も使ってないのに村長の周りからすごい圧力がかかる。
アヤも村長の威圧を間近で受けて涙を流しながら震えている。
へぇー、汗は無いけど涙は出るのか。
すげぇなMW!
我ながらよくこんな状況でこんなアホな事考えられるよなぁ、俺。
村長はずっと黙っているアヤに痺れを切らしたのかアヤの首根っこを掴みそのまま廃棄の街まで引きずって行く。
「ちょ!ちょっと村長!これからどうするんですかっ!?」
するとさっきまでの般若のような表情から一変して、申し訳なさそうな顔をすると
「うちの娘が本当に迷惑をかけた。今回のことについてはまた改めて謝罪しに行く。本当にすまなかった。」
そういいながら土下座しそうな勢いで頭を下げる。
「いやいや!結果的には助かりましたし全然気にしなくていいですよ!なぁユリ?」
「え、えぇ。本当に大丈夫です!」
アヤと仲の悪かったユリも流石に気の毒だったのかアヤの肩を持つ。
村長の後ろで俯いていたアヤだが、俺たちの言葉で助かると思ったのか
顔を上げ希望のこもった視線を村長の背中に送る。
それから何度も自分たちが気にしてないことをアピールしてようやく村長は顔を上げた。
「それで村長はこれからどうするんですか?」
すると村長はいつものような笑顔を浮かべる。
あ、こりゃあかん。
顔は笑顔だが目が笑ってない。
「それはもちろん二度とこんなことがないように少しそこの廃墟でアヤに稽古をつけてから帰ろうと思うから、先に帰っていてくれ」
その言葉を聞いた瞬間、後ろで希望に満ちた表情を浮かべていたアヤが今度は青ざめ絶望に打ちひしがれた表情を浮かべた。
「それじゃあ、ユウ君にユリさん。いつになるか分からないけどまた会おう。」
そう言うとアヤを引きずりながらさっきの廃墟に戻って行った。
引きずられているアヤは絶望で青ざめ、涙目てこちらを見てくる。
すまん。
俺にはどうすることもできん。
村長とアヤが廃墟の門をくぐり、少し経つとアヤと思われる悲鳴が聞こえてきた。
「・・・・・」
「・・・・・」
ようやく村長から放たれる重圧から解放された俺とユリはその場を動けず何も言わず立ち尽くしている。
まぁなんにせよ村長がいるなら万が一にも死ぬ可能性は無いだろう。
死にたくなるような事はあるかもしれないが・・・
それに、俺たちがここで棒立ちになっていてもしょうがない。
「帰ろうか・・・」
「そうだね・・・」
俺はアヤの冥福を祈りながら街に向かって歩き出す。
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10時半くらいには町に着いた。
死の危険を感じたこともあるが、それ以上に村長の怒りを目の当たりにして、狩りをする気力が全く起きなかくなってしまったので、出来るだけ戦闘をさけ、最短距離を走ってきたからである。
俺たちは暗い表情で宿へととぼとぼ向かっていく。
二人とも足が重く、普通に歩くよりも時間がかかりながらも宿に着いた。
「じゃあ、私は部屋に戻るから・・・」
「あぁ、お疲れ」
二人とも挨拶だけ交わしそれぞれの部屋へと戻っていく。
部屋に戻るとケン兄がベッドに寝転がっていた。
何も無い空中に視線をさまそわせているから、メニューでも見ているんだろう。
「おかえり」
「ただいま・・・」
メニューを見ながら出迎えたケン兄だったが、俺の雰囲気を察したのかすぐにメニューを閉じ、心配そうに俺をみる。
「何かあったのか?」
「あぁ、ちょっとね。今は無心になりたいからちょっとこの石借りるよ」
俺はベッドに腰掛け、机の上に置いてある石を凝視する。
なんかこれ、無心になりたい時にはいいかもしれない。
俺の心の中で石の評価が少し上がる。
「何があったのか教えてくれよ」
ケン兄が真剣な表情で聞いてくる。
そりゃあこんな暗い顔で帰ってくれば気にはなるよな。
今は喋りたく無かったが、石から視線を逸らさず仕方なくさっきの事を話し始めた。




