第十二話 廃墟
まぁ結果から言うと特に問題はなく進んだ。
仲が悪いと連携に支障が出るかとも思ったが、そもそも弱過ぎて連携なんてしなくても倒せるので問題なかった。
ユリも武器がNPC仕様なので手数はかかるが危なげなく、無傷で進んでいく。
アヤは武器こそユリと同じだが、レベルはもう19でSTRに多くステータスを振っているので魔物を一撃で屠って行く。
南のフィールドは東のフィールドと似て一面に緑が広がっている。
しかし、一つだけ東のフィールドとは異なって町の出口からフィールドの奥までずっと整地された道が出来ていた。
町の周辺には昨日散々狩りまくったゴブリンさんや狼がうろついていた。
アヤが言うにはこの街からある程度までの範囲は全て同じような草原が広がっていて、出てくるモンスターも同じで、ある一定の距離を越えると特徴的な地形に変わっていき、出てくるモンスターも変わるらしい。
なぜ東のフィールドは変わらなかったのかというと、おそらく東の地形の特徴が草原なので進んでも景色が変わらなかったんだと思う。
ちなみに西は森、北は荒野が地形特徴らしい。
そして俺たちが向かっている南は・・・
「廃墟ね・・・」
俺たちがサクサクと敵を切り捨てながら道に沿って進んで30分ほどすると道が途切れ、その先には廃墟としか表現出来ない光景が広がっていた。
朽ち果ててボロボロになった壁に囲まれた廃墟はもし栄えていたならアリシアの町と同じくらいの大きさがあるだろう。
廃墟の入り口に近づくと入り口の隣には剥がれかけたプレートにスライブと書かれたていた。
おそらくは町の名前なんだろうがこの廃墟に栄えるなんて意味の名前を付けるなんて製作者は相当ひねくれた奴なんだろう。
まぁそもそもデスゲームなんて作ってるんだから今更って感じだけどな。
一応始めての場所なので三人で固まって警戒しながらスライブの町の中に入って行った。
町の中の建物はほとんどがボロボロの廃墟になっていて、辺りはガレキなどがあり足場も悪く、今にも幽霊やなんかが出てきそうな雰囲気がある。
しばらく進んだが今だに魔物が出てこない。
まぁこういう場所はだいたい・・・
「グゥァ〜」
「キャッ! 」
という声がユリの方から聞こえた。
すぐにユリの方を向くとユリの横から案の定映画に出てくるようなゾンビが出てきた。
ゾンビは意外にも俊敏にこちらに近寄ってくる。
驚いて硬直していたユリは我に返り、ゾンビに向かって先手必勝とばかりに走って近づいて行った。
ユリはそのままゾンビの懐に飛び込み短剣でゾンビの腹を横薙ぎに切り裂き、ゾンビが腕を振り上げるのを見て一度離脱、ゾンビの攻撃が空を切ったのを見て、再び攻撃というヒットアンドアウェイを繰り返していた。
ユリも上位プレイヤーなだけあって、始めての敵でも危なげなく戦っている。
しかし、ユリの武器は短剣でスタイルとしては斥候に分類されるので、倒すまでに時間がかかる。
そこで、俺もユリに気を取られているゾンビに近づき、狼刀でゾンビの頭を切り裂いた。
その直後、俺の攻撃で硬直したゾンビの胸にユリの短剣が刺さりゾンビは消えていく。
にしても予想通り耐久力が高かったな。
フィールドの特徴が現れたところに出る魔物は街の周囲の魔物よりも強いのだがそれにしても高かった。
しかも高い上に俺が頭に攻撃しても、クリティカルは出ず、どれだけ攻撃を与えても攻撃が鈍らなかったところから考えて純粋なHP以上に高く感じられる。
まぁ、その分中々の経験値が入ったから良しとしよう。
「ユウありがとう」
「ああ。それにしても耐久力半端無かったな」
「ね〜、何度も切っても動き鈍らないから焦ったよ」
「まぁアンデッド系はそんなもんだろ。そういやアヤは?」
さっきまで俺たちが居たところを振り返ると、そこには膝を抱えて丸まっているアヤがいた。
「そういやそうだった・・・」
アヤは昔からこういう怖いものが苦手なんだ。
昔、そこそこ綺麗なファンタジー系のVRMMOで出てきたアンデッドモンスターを見た時もこの状態になっていた。
まして、このゲームは異常なほどリアルなグラフィックなので、ゾンビもとてもリアルに再現されていて、怖いものが苦手なアヤには十分なダメージを与えたのだろう。
もう倒したというのに今だに耳を塞いで震えているアヤに近づいて行く。
「おい、アヤ。もう倒したから大丈夫だぞ〜」
肩を揺すりながらそう声をかけると目を潤ませながらアヤがこっちを見上げてくる。
っべ〜!ヤバすぎる!いつも強気な奴が目を潤ませながら上目遣いとか破壊力強過ぎてチェリーボーイにはきつすぎる!
俺が惚けていると、
「怖かっだ〜〜〜」
と言って俺に抱きついて来た。
ヤバイ!ただでさえドキドキだったのに、今はさらにいろいろと柔らかいものが当たっている!今ほど運営がリアルにゲームを作ったことに感謝したことはない。
「おおおおおお、落ち着け!ほ、ほら深呼吸だ!ヒ、ヒ、フー。あれ?これは妊娠の時のだ。って違うぞ!お前との間に子供が欲しいとかそういう意味じゃ・・・」
俺が何を言っているかわからねーと思うが、俺も何を言っているかわからねー。
そんなアホなことを考えていると首筋にヒンヤリとした硬いものが当たる。
「ゆ、ユリさん?これはどういうことでしょう?」
「ユウ?今何かやましいこと考えてなかった?」
「ハハ、ナンノコトカワカラナイナア」
首筋に当てられていた凶器が下げられた。
「フゥー」
と一息ついた瞬間脳天に衝撃がはしった。
「〜〜〜〜!?」
すると俺が頭を抑えている間にユリはアヤと俺の体を離した。
嗚呼!俺の楽園が!
名残惜しそうに顔を上げるとユリが睨んで来た。
マジ怖い
というか実際さっきの拳骨でHPバーが削れたんだがあいつはここがフィールドだってわかっているのだろうか?
俺にフィールドで初ダメージを与えたのが魔物ではなくユリというのがちょっとショック。
そんなことをしていると、アヤは落ち着いたようでさっきの行動を思い出して顔を赤くしていた。
「その・・ゴメン」
「いやいや、むしろ役得役得」
場を和ませようとふざけて言ったらユリにスネを蹴られた。
本当にこいつはフィールドだってことを忘れているんじゃなかろうか?
そして俺も本当の意味でフィールドだってことを忘れてた。
いつの間にか周りにはたくさんのゾンビが集まっていた。
おそらくここはまだほとんどのプレイヤーが来ていないためモンスターが狩られず、いわゆるモンスターハウス状態なのだろう。
某ゾンビ映画のような状況にアヤが意識を飛ばしかけていた。
これは本当にまずい。
いくら技術があろうがあれだけの耐久力も持った魔物20体に囲まれたているとなると流石に無傷じゃ済まない。
俺一人ならどうにでもなるが、戦闘不能のアヤをユリに守らせながら逃げるとなると誰かが死ぬ可能性が出てくる。
俺はここで始めてデスゲームの恐怖を味わった。
死んだら終わり
その事実が今になって頭をめぐり、足を鈍らせる。
今すぐにでも突破しなければ次から次へと集まってくる。
ユリは意識を飛ばしかけているアヤに肩を貸して立っているが、その顔を青ざめている。
クソッ!
もう迷ってられない。覚悟を決めてユリに指示を飛ばそうとした瞬間、廃墟の入り口の方にいたゾンビの一体の背後から攻撃のエフェクトが輝いた。
すると他のゾンビが振り返る前に数度のエフェクトが放たれゾンビが消えて行き、そこから現れたのは村長だった。
「ユウ君!二人をつれて先に外に出るんだ! 」
いきなりの登場に硬直していたが、我に返ってすぐに動き出す。
「ユリ!アヤを連れて来てくれ!」
「分かった!」
俺は二人に付き添いながら街の入り口に走り出す。
俺たちが走り始めた頃にはもう入り口側にいたゾンビは全滅していた。
この人本当に人外だな・・・
俺たちは入り口まで一度も戦闘にならず辿り着けた。アヤとユリを廃墟の外のフィールドに待たせて俺はさっきまで俺たちのいた場所へ村長の助太刀に戻る。
草原フィールドの魔物ならユリだけで十分だし、すぐにアヤも復活するだろう。
俺がさっきの場所に戻るとすでにゾンビの姿は見えず、村長が笑顔を浮かべて立っていた。
俺はあなたが一番怖いです・・・




