エピローグ
『『スーパーガール』では、宇宙の場所や星によって、太陽の色が変わるんでしょ。そして太陽の色によっては、スーパーガールが大ピンチになるって展開だとか読んだけど。複数の太陽がある星も出てくるんだっけ。ドラゴンボールで出てくるナメック星みたいね』
「うん。あえて好意的な解釈をすると、スーパーガールってアルコール中毒みたいな状態でさ。それで、現実世界では、アルコール依存からの回復って大変だと思うのよ。そういう人たちに取っては、太陽の色も普通とは違って見えるのかもね。そういった試練の末に、スーパーガールは本来の力を取り戻すって展開なわけよ」
細かい不満点は、いくつもある。スーパーガールには飼い犬くらいしかパートナーがいないので、今回の映画で出てきた敵討ちを願う女の子や、ゲストキャラとの一時的な共闘しか描かれない。
一時的な関係だから、どうしても浅い付き合いになるし、息の合った遣り取りが少ないのだ。下手にゲストキャラに活躍されて、続編でも再登場するとなると、キャラクターの権利関係が面倒だったり、俳優への出演料が高騰するとかで不都合が生じるのだろう。そんなことを思わされた。
「映画の話は、この辺りで切り上げましょうか。楽しかったわ、付き合ってくれてありがとう」
『うん。最後になるけど、『侵略者は死ね!』っていうような、監督のメッセージというか姿勢は見える作品みたいね。『スーパーマン』も、そうだったし。その辺りはハリウッド映画の健全さを感じたなぁ』
「そうね、いろんな国の大統領への批判は伺えたよ。あと『スーパーガール』は個人的な復讐っていう、小さなスケールから始まる物語で。その分、途中で出会う女性たちの被害にも、スーパーガールが寄り添っているのよ。行動原理のスケールが小さいからこそ、人々に取っては身近なヒロインになってる気はしたね。テーマは悪くないから、もう少しシリアスな映画にしても良かったんじゃないかな」
とはいえ、そうなっていたら映画の客入りは、もっと悪かったかもしれない。『スーパーガール』に次回作があれば、もっと見どころがある映画になるんじゃないかと期待はしている。
『私も映画を観たいなぁ。今、私がいるのがアンドロメダ銀河でしょ。ワープ航法でも、地球の近くまで行くには時間が掛かるからさ。海賊版の映画を観るだけでも大変よ。宇宙船の通信技術は発達してるから、貴女との通話は遅延もなくリアルタイムで可能だけど』
「私は今、地球から、ほんの数光年しか離れてないからね。時空歪曲で地球に侵入して、地球人に紛れて映画館に入るのも簡単よ。それにしても元は地球人だった私たちが、まさか転生して宇宙人になるとは思わなかったなぁ」
私と彼女は前世からの友人で、二人で旅行していたときの交通事故で一緒に死んでしまった。そしたら二人とも宇宙人に生まれ変わって、宇宙船で銀河を股にかけた配送業をやることになってしまったのだった。それなりに適応しているけれど、宇宙は娯楽が少ないのだ。
『今は地球に寄ったとき古本屋で買った、アメコミや小説を読み返すのが唯一の楽しみよ。アメコミは英語だから、読むのに苦労はあるけどね。あとは貴女との通話かな。地球の文化に詳しい宇宙人って希少だもの。まあ地球オタクの、一部の宇宙人が映画のネタバレ記事を書いたりはしてるけどさ』
「そうそう。あの記事、日本語で書かれてるから読みやすいよね。まさか宇宙で、日本語が広く使われてるなんて思わなかったなぁ。オタク文化の伝達は光より速く進むのかもね」
宇宙で地球の映画を観るのは難しいから、映画好きの宇宙人がネタバレを避けたがるのは、むしろ当然かもしれない。私たちよりも情熱的な映画ファンは、きっと苦労を重ねて、遠い惑星から地球へと移動をして映画館に通うのだろう。その旅路のほうが映画などより、よっぽどドラマチックなんじゃないかと私は思うのだが。
『私たちの退屈な日常も、他の誰かから見たら、映画みたいに刺激的なのかな。疑わしいけど』
「さあねぇ、わからないな。今度、合流できたら銀河系ラーメンでも食べに行きましょ。地球で修業した宇宙人が、アンドロメダ銀河でも店を開いたらしいから」
私も彼女も地球人だったときの感覚が抜けない。もっと別の宇宙人とも交流すべきかなぁと、私は思った。




