ネクロマンサー④
早速遊撃部隊は、死体どもをおびき寄せる囮として行動することになった。今回はチーフも参加しているため、俺たちはその指示に従う。
「皆よく聞け!あいつらはアンデッドではなく、ネクロマンサーが使役する死体だ!魔法で強化されている分、想像以上の速さで襲い掛かってくるぞ!くれぐれも近づきすぎないように注意してくれ!特にストロス!!今回の目的は、門への誘導ということを忘れるな!!」
「「「了解っ!!」」」
チーフの呼びかけによって、いよいよ緊張が最高潮に達した。数少ない知り合いであるレナの方を向いてみると、今まで見たことのない表情で敵を見詰めていた。
「あいつ…あんなに真剣な顔に…」
俺よりもずっと年下の少女が、腹をくくっているというのか。これは負けてられないな。俺は再びやる気を取り戻し、チーフからの指示をじっと待つ。暫くして、ついに号令が響いた。
「全員、オレの後に続け!!」
「「「おおっ!!」」」
チーフを先頭に、兵士達が一斉に敵の方へと向かう。囮となるためには、集団でよく目立つようにしなければならない。今は軽い駆け足程度のスピードで、ゆっくりと敵の大群に接近している。ある程度近づいた時点で、Uターンして門まで引く流れだ。その時は全力で走るだろうから、今は体力を温存しておかなければ。
そして、敵までの距離が100mくらいになった頃だろうか。俺たちを認識した死体共が、一斉にこちらへ向かって走り出してきた。
「き、来た!!」
どっかのゾンビ映画で見たような光景だが、実際に目の当たりにすると尋常じゃない怖さだ!敵の動きを見て、チーフが新たな指示を出す。
「全員、引き返せ!!」
チーフの合図とともに、全員が進行方向を180度変え、全力疾走で門へと引き返す。急な方向転換に足がもつれそうになるが、なんとか堪えて集団についていく。周りの兵士達は足が早く、昨日の疲労を溜めた俺の足では、じわじわと差が開いてくる。
「はぁ、はぁ…ダメだ、置いて行かれる」
始めは集団の中心辺りにいたのだが、気付けば最後方を走っている。少し振り返って敵の距離を確認すると、かなり距離が縮まっていた。こうなったら、死んだふりでもしてやり過ごすか?
集団の後方で孤独に苦しんでいると、それに気付いたレナがスピードを落として隣についた。
「お前、何しに来た!?俺は大丈夫だから、先に行ってくれ!!」
「そんなこと言わずに、一緒に走りましょうよ。まだ追い付かれるような距離じゃないですし」
こいつは何を考えてるんだ?今は構ってやる余裕なんてないのに。こんなことをしていると、2人とも犠牲になるかもしれない。
「ところでサクマは、わたしに生き残って欲しいですか?」
「はぁ、はぁ…。あ、当たり前だろうが!!だから先に行けって!!」
レナは少し馬鹿なところもあるが、俺みたいな奴を迷いなく救うような善人だ。こんなところで死なすわけにはいかない。間違っても、俺の道連れにするなんてあってはならないことだ。
「そうですか。じゃあ一緒に走りましょう!」
「はあ!?どうしてそうなるんだよ!!」
こいつ、人の話を聞いていなかったのか?今の会話の流れで、何故その結論に至るんだよ!
「わたしに生きてほしいのなら、全力で…いいえ、超全力で走ってください!!そうしないと、一緒に後ろの魔物にやられちゃいますよ?」
…なるほど、そういうことか。どうやら俺は、またこの少女に救われようとしているらしい。まったく、情けない話だぜ。
「はぁ、はぁ、うおおおおおらあああ!!」
俺は先程よりも数段階ギアを上げて走った。肺が破裂しそうだが、この愚かな少女に生きてもらうためならば仕方がない。肺の一つや二つを捧げて済むのなら、安いもんだろう。
じわじわと近づいている門は、敵を迎えるため全開になっている。俺は最後の力を振り絞り、超全力で門を駆け抜けた。




