ネクロマンサー③
「そういうことだから、なんとかしろよクソ呪術師。ここまできて、『実は作戦はこれから考えるんだ』とかは無しだからな」
「ええっ!?なんか言い方がきつくない?ボクと仲良くすることは、ご褒美なんじゃなかったの?」
そんなのは嘘に決まっているじゃないか。しかし、やる気を落とされても困るので、ここは適当な事を言っておこう。
「それはお前の活躍次第だ。例えば…犠牲者を一人も出さずに勝利できれば、喜んで友達になってやるよ」
100体を超えそうな敵の数を考えると、”犠牲者ゼロ”はかなり厳しい条件だろう。だが、エリーは困惑するどころか、むしろこの状況を楽しんでいるようにも見えた。
「ふーん。結構無茶な要求をしてくるんだね。でもそういうの、嫌いじゃないよ♪」
エリーの余裕な様子から、何かとっておきの策を考えているように感じる。この短時間で何か思いついたのなら大したものだ。帝国を追放されるほどの実力を、ここで見せてくれるということだろうか。
「策は考えてあるけれど、みんなの協力が必要だよ。あっ、でも全然難しいことじゃないから安心して。兵士たちには、奴らを門まで誘導してくれれば良いだけだから」
門に誘導?それって、自ら敵を招き入れるということか?気が進まないにもほどがある作戦だ。
チーフもさすがに危険な作戦と判断したのか、すかさずエリーに問いかけた。
「その作戦は、どんな仕組みで相手を無力化するんだい?敵を懐に入れるリスクがあるのだが、勝算はどのくらいあるのかな?」
チーフは関所を守護する責任者として、当然即決はできないだろう。なんといっても、失敗すれば関所陥落の恐れもあるリスクだ。はっきり言って、確実に勝つという約束がなければ採用は難しいだろう。
「門より内側のところに”魔力吸収”の効果がある魔法陣を書いて、そこに死体人形を集めるのさ。一か所に集めて一掃するには、それが一番手っ取り早いからね。奴らは魔法で動かされているから、魔力さえ奪ってしまえば無力化できるよ。…本当は術者を抹殺したいけど、それは難しいだろうね。かなり遠隔から操作しているみたいだし」
動く死体を無力化する仕組みを聞き、チーフは再び考え込んだ。どうやら、すぐにこの案を却下するつもりはないらしい。
「なるほどねぇ。そんで、上手くいく確率はどれくらいだと考えている?」
「ははっ!ボクを誰だと思っているの?伊達に祖国を追放されてないって。100パーセント成功させる自信があるよ」
「…わかった。キミがそこまで言うのなら、その作戦を採用してみよう。今は迷っている時間が惜しい。だが、その作戦に関するリスクを放置することもできない。万が一失敗したときに備えて、主力部隊は門の内側に配置する。そんで、魔法陣とやらはどれくらいで完成する?」
チーフの決断はやや時期尚早のようにも感じるが、確かに時間が無い。改めて動く死体どもを確認すると、さっきよりも明らかに近づいている。ここは1秒でも早く行動に移したいところだ。
「5分もあれば十分だよ。今回のやつは、意外と簡単な呪術だからね。その辺に落ちてる木の枝で、落書きみたいに書いていけば準備完了さ」
「了解。それなら時間を稼ぐ必要もなさそうだ。さて、サクマくんにストロス、そして女兵士諸君に早速任務発生だな」
おや?すっかり傍観者気分でいたのだが、どうやら仕事が舞い降りてきたらしい。一体、どんな雑用を任されるというのだろうか。
「キミたち遊撃部隊には、敵を門まで誘導する役目を任せたい。主力部隊は、門の内側で待機しなければならないからね。オレもキミたちと共に行動するから、よろしく頼むよ」
「えっ!?それってつまり…前線に出るんですか?この俺が?」
まさか最も危険なポジションを任されるなんて、全く予想していなかった。今まで幸運に頼って生きてこられたが、いよいよここで終わってしまうのかもしれない。
―――――『絶対に生きて戻って来なさい』―――――
さっきアンナさんと交わした約束は、果たして守ることが出来るのだろうか…。




