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動物病院日誌   作者: じょんどぅ


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短頭種の「夏休み」は24時間冷房?

短頭種の「夏休み」は24時間冷房?


### 1. 診察室の「ダイレクトメール」

七月半ば。連日 $35$ ℃を超える猛暑日が続く京都で、パグの「もんじろう」君と飼い主の大野さんがやってきました。

「先生、うちの子、最近寝ている時もずっと『グーグー』とイビキみたいな音が大きくて。それに、散歩は夜遅くに行っているのに、帰ってくるとしばらく口を閉じてくれないんです」


もんじろう君は、診察台の上で目を丸くし、大きく舌を出して「ハッハッハッ」と激しく喘いでいました。その音は、まるで壊れた掃除機のような、苦しげな摩擦音を伴っていました。


### 2. 「鼻ぺちゃ」たちの身体的ハンデ

「大野さん、もんじろう君のような**短頭種**にとって、日本の夏は私たちが想像する以上に過酷な『サウナ』なんです」




彼らは長い時間をかけて、愛嬌のある顔立ちになるよう改良されてきましたが、その代償として呼吸器に大きな問題を抱えています。

* **鼻腔狭窄びくうきょうさく:** 鼻の穴が極端に狭く、空気の入り口が絞られています。

* **軟口蓋過長症なんこうがいかちょうしょう:** 喉の奥のヒダが長く、呼吸のたびに空気の通り道を塞いでしまいます。

* **パンティングの限界:** 犬は汗をかけないため、呼吸による気化熱で体温を下げますが、短頭種はこの「効率」が極端に悪いのです。


### 3. 「24時間冷房」は贅沢ではない

「先生、やっぱりエアコンはつけっぱなしの方がいいんでしょうか?」


「はい。彼らにとっての適温は、人間が『少し肌寒い』と感じる **$22$ ~ $25$ ℃** です。電気代を気にするよりも、熱中症で入院するリスクを考えてあげてください」


1. **湿度の管理:** 温度だけでなく、湿度を $50\%$ 前後に保つことが重要です。湿度が高いとパンティングの効果が激減します。

2. **夜の散歩の罠:** 「夜なら安心」は大間違い。日中の熱を蓄えたアスファルトは、夜も赤外線を放出し、地面に近い彼らの喉を熱し続けます。

3. **首元の保冷:** 外に出る際は、必ず保冷剤入りのネッククーラーを。ただし、冷えすぎによる血行不良にも注意が必要です。




### 4. 救急車を呼ぶ前の「サイン」

「もし、舌の色が**紫色チアノーゼ**になったり、目を見開いてヨダレをダラダラ流し始めたら、それは一刻を争うサインです。迷わず体を冷やしながら電話してください」


大野さんは、もんじろう君の小さな鼻を愛おしそうに撫でながら、「今日から設定温度、もう二度下げます」と決意を固めていました。


### 5. 静かな午後の祈り

「先生、お疲れ様です。……パグさんたちのあの『プゴプゴ』いう音、可愛いけど、夏は聞いてるこっちまで苦しくなりますね」

河野が、院内の温度計をこまめにチェックしながら言った。


「そうだね。彼らは一生懸命、あの小さな鼻で夏を戦い抜こうとしている。僕たちの仕事は、その戦場をできるだけ涼しく、快適に整えてあげることなんだ」


診察室を出ていくもんじろう君の背中に、僕は心の中で「頑張れよ、夏はまだ始まったばかりだぞ」とエールを送りました。


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