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動物病院日誌   作者: じょんどぅ


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春編・最終回:夏への準備、あるいはバトンを繋ぐ

春編・最終回:夏への準備、あるいはバトンを繋ぐ


### 1. 予防シーズンの出口

六月の終わり。長かった梅雨が明けようとし、京都の街には祇園祭のお囃子「コンチキチン」の音が遠くから聞こえ始めました。狂犬病予防、フィラリア検査、健康診断……。嵐のような忙しさだった当院の待合室も、ようやく少しずつ落ち着きを取り戻しています。


「先生、おかげさまで今年の予防は全部バッチリです。あとは夏を乗り切るだけですね!」


柴犬の「小鉄」君を連れた常連さんが、誇らしげにフィラリア薬の袋を抱えて帰っていきました。


### 2. 「暑熱順化しょねつじゅんか」という宿題

「皆さん、予防が終わって一安心されていますが……実は**今この瞬間**が、夏本番を左右する一番大切な時期なんです」




本格的な猛暑が来る前に、動物たちの体を「暑さに慣らす」ことが重要です。

* **少しずつの露出:** 冷房の効いた部屋に一日中閉じ込めるのではなく、朝晩の涼しい時間に外の空気に触れさせ、体温調節機能を呼び起こします。

* **換毛期の総仕上げ:** 最後に残ったアンダーコートをブラッシングで完全に取り除き、風通しを最大化してあげましょう。


### 3. 「熱中症」は準備で防げる

「先生、夏になったらお散歩の時間を変えるだけでいいんですよね?」という質問に、僕は改めて三つの「鉄則」を伝えました。


1. **「アスファルト」はフライパン:** 私たちが手を触れて熱いと感じる路面は、地面に近い犬たちにとって地獄です。**「早朝5時」**か**「日没後1時間以上経ってから」**が基本です。

2. **室内での落とし穴:** 意外と多いのが「お留守番中の熱中症」。エアコンの停電対策や、カーテンでの遮光、そして複数の場所にたっぷりの水を用意すること。

3. **短頭種の特別警戒:** パグやフレンチブルドッグなどの鼻が短い子たちは、パンティング(呼吸による放熱)が苦手です。彼らにとって日本の夏は、私たちが思う以上に過酷なサウナなのです。


### 4. 春の成果を夏に繋ぐ

「先生、お疲れ様です。……今年もみんな、春の健康診断で大きな異常がなくて良かったですね」

河野が、一息つきながらカルテを整理して言った。


「そうだね。春に血液検査をしたことで、それぞれの『平常値』が分かった。もし夏に体調を崩しても、そのデータがあれば迅速に、正確に救ってあげられる。春の努力は、夏の安心に繋がっているんだ」




### 5. 輝く季節へ

診察室の窓から見える空は、高く、抜けるような青さに変わりつつあります。

狂犬病の「守り」を固め、フィラリアの「盾」を構え、健康診断という「地図」を手に入れた。

さあ、準備は整いました。


「よし、行こうか。次は……いよいよ**『夏編』**だ。熱中症との闘い、海や山でのアクシデント、そしてお盆の救急医療。命の熱量が一番高まる季節がやってくるよ!」


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