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動物病院日誌   作者: じょんどぅ


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換毛期、再び。春の「毛玉」警報、あるいは胃の中のフェルト

換毛期、再び。春の「毛玉」警報、あるいは胃の中のフェルト


### 1. 三月の「雪」は毛の色

二月の終わり、京都の厳しい底冷えがふっと緩む日があります。梅の蕾が膨らみ始めると、診察室の空気清浄機は再びフル稼働を始めます。

「先生、うちの『ルナ』が、さっきから何度も吐く仕草をするんです。でも、何も出てこなくて……。お腹が波打つように動いているのに、苦しそうなんです」


長毛種のラグドール、ルナちゃんを抱えた加藤さんは、彼女の背中を不安そうにさすっていました。


### 2. 「冬の鎧」が「胃の石」に変わる時

「加藤さん、これは季節の変わり目特有の**『毛球症もうきゅうしょう』**かもしれません」




春に向けて、猫たちは分厚い冬毛を脱ぎ捨て始めます。

* **セルフグルーミングの罠:** 猫はザラザラした舌で、抜けた死毛をきれいに絡め取ります。しかし、その毛のほとんどはそのまま飲み込まれてしまいます。

* **胃内でのフェルト化:** 通常は便と一緒に排出されますが、換毛期は量が多すぎて胃の中で絡まり合い、大きな「毛玉ヘアボール」を形成します。

* **閉塞の危機:** 毛玉が胃の出口(幽門)や腸に詰まってしまうと、激しい嘔吐や食欲不振を引き起こし、最悪の場合は開腹手術が必要になることもあります。


### 3. 「吐かせる」より「流す」ケア

「ルナちゃんのように、吐こうとして出ないのは一番辛い状態です。まずは胃腸の動きを助ける処置をしましょう」




僕はルナちゃんに皮下点滴を行い、胃腸の滑りを良くする「毛玉除去剤ラキサトーンなど」を処方しました。

「お家では、これ以上『飲み込む量』を増やさない工夫が必要です」


1. **ブラッシングの倍増:** この時期は「一日二回」が基本です。飲み込む前に、私たちがブラシで回収してあげましょう。

2. **「猫草」の活用:** 新鮮な草の繊維は、胃を刺激して毛玉を吐き出しやすくしたり、便と一緒に押し出す助けになります。

3. **高繊維フードへの切り替え:** 換毛期限定で、毛玉配慮用のフードを混ぜるのも非常に有効です。


### 4. 胃の中の「冬の忘れ物」

「先生、お疲れ様です。……さっきルナちゃん、処置のあとに立派な毛玉を吐き出しましたよ。まるでフェルトの塊みたいでした」

河野が、トレイに乗った指先ほどの大きさの毛玉を見せてくれました。


「お疲れ様。あれだけのものが胃の中で暴れていたら、そりゃあ気持ち悪いよね。冬の終わりは、彼らの体にとって『大掃除』の季節なんだ」


### 5. 春の予感とともに

「先生、ブラッシング……今日から頑張ります。ルナも、軽くなったみたいでスッキリした顔をしてます」

加藤さんは、少し元気を取り戻したルナちゃんをキャリーに入れ、春の陽光が差し始めた外へと向かいました。


窓の外では、冬を耐え抜いた木々が新しい芽を準備しています。

動物たちもまた、重いコートを脱ぎ捨てて、新しい季節へと走り出そうとしています。


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