冬の「鼻づまり」と猫風邪、あるいは乾いた粘膜
冬の「鼻づまり」と猫風邪、あるいは乾いた粘膜
### 1. ズビズビという夜の音
二月。京都の底冷えは最高潮に達し、どの家庭でもエアコンやストーブがフル稼働しています。
「先生、うちの『ルナ』が、最近ずっと鼻をズビズビ鳴らして、くしゃみを連発するんです。食欲も落ちてきて、大好きな缶詰を出しても匂いを嗅ぐだけでプイッとしてしまって……」
保護猫出身のルナちゃんを連れてきた佐藤さんは、心配そうに彼女の鼻先を見つめていました。ルナちゃんの鼻は、本来のピンク色を失い、カサカサに乾いて少し赤く腫れていました。
### 2. 「乾燥」が招くウイルスの再燃
「佐藤さん、これは単なる風邪のひき始めではなく、暖房による**『極度の乾燥』**が引き起こした慢性鼻炎の悪化かもしれません」
猫、特に「猫風邪」のキャリアである子にとって、冬の乾燥は最大の敵です。
* **バリア機能の低下:** 湿度が $40\%$ を切ると、鼻や喉の粘膜を覆う粘液が干上がり、ウイルスの侵入や増殖を許してしまいます。
* **嗅覚の麻痺:** 猫は「匂い」で味を判断します。鼻が詰まって匂いが分からなくなると、どんなにご馳走を出されても食欲が湧かなくなるのです。
### 3. 診察室の「霧」:ネブライザー治療
「まずは、固まった鼻水をふやかして、呼吸を楽にしてあげましょう」
僕はルナちゃんを専用のボックスに入れ、**ネブライザー(吸入器)**のスイッチを入れました。
細かい霧状になった薬剤が、ルナちゃんの鼻の奥深くまで届き、炎症を鎮めていきます。
「人間と同じです。鼻が通るようになれば、自然と元気も戻ってきますよ」
### 4. 理想の「潤い」を作る三つの習慣
「お家でも、ルナちゃんの鼻を守るために『湿度』をコントロールしてあげてください」
1. **湿度の『見える化』:** 加湿器を回すだけでなく、猫が寝ている高さに湿度計を置いてください。目標は **$50\%\sim 60\%$** です。
2. **「お風呂場」の活用:** 飼い主さんがお風呂に入った後の蒸気が残る脱衣所に、数分間ルナちゃんを連れて行くだけでも、天然の吸入治療になります。
3. **鼻の周りの清拭:** 鼻水が固まってカピカピになると、さらに炎症が進みます。ぬるま湯で湿らせたコットンで、優しくふやかしてから拭き取ってあげてください。
### 5. 潤いを取り戻した瞳
「先生、お疲れ様です。……ルナちゃん、吸入が終わったら目がパッチリ開いて、心なしか表情が明るくなりましたね」
河野が、ルナちゃんの鼻先に保湿用のジェルを薄く塗りながら言った。
「鼻が通るってことは、世界が広がるってことだからね。猫にとっての匂いは、僕たちにとっての視覚と同じくらい重要なんだ」
一週間後、佐藤さんから「ルナが自分からお皿を舐めるようになりました!」と嬉しい報告がありました。
窓の外では、冷たい風が吹き荒れています。
でも、加湿器の湯気がゆらゆらと舞う佐藤さんのリビングでは、ルナちゃんが美味しそうに夕食の匂いを嗅いでいるはずです。
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