月齢4 苦労人の竹の姫君
ここに嫁いできた頃、家は雨漏りもする位のぼろぼろだった様に思う。あまり詳しく覚えてはいないが。布団も薄く、寒くて凍える日もあった。
竹細工を売り始め、生活は苦しいがまともに暮らされる様になったのはつい最近の事だろう。しわだらけの婆さんになった時、ようやく『普通』に過ごせるようになった。子は結局恵まれなかったのが心残りだった……
ある時、夫である爺さんが竹を取りに行ってから日が暮れる頃まで帰らなかった時があった。彼も歳だ。途中で力尽きたのか…熊にでも鉢合わせしたのか…そんな不安に押しつぶされそうになりながら帰りを待った。
日が沈む直前に彼は帰ってきた。怪我なく帰ってきた。その手には伐られた竹ではなく、高級そうな布に包まれた赤子を連れ帰ってきた。その赤子は光り輝いているようだった。
その赤子が来てから、我が家は変わった。何故か竹を伐ると金銀が出てくるのだ。我が家は一気に金持ちになっていった。
嬉しかったのは菜が一品、二品と増えたことだった。今まで雑穀の粥と味の薄い汁、お情け程度の漬け物だけ夕飯が豪華になった。満足に食べることができなかった自分と同じような経験を、我が家の娘となった赤子に同じ思いをさせずに済む。それが堪らなく嬉しかった。
娘となって一月程経つと言葉をたどたどしく話すようになった。娘は己を『おうぎ』と名乗った。字は知らない。
夫を共に見送り、炊事に洗濯をしている間にのんびりと日向ぼっこをしている。手のかからない娘だ。そこに年相応の『子供らしさ』がないだけで。




