契約の印紋と2人だけの秘密の話。
起承転結の起承くらいまで来ました…
「それでね、僕にもベニカにも契約の印紋は1つしかないでしょ?これが証明。僕は後にも先にもベニカだけだ。」
「私だけなんて…レオナルド様のご成婚までならば、ルル様も他の方に契約の印紋を付けることはあるでしょう?」
私の疑問にルル様は困ったように笑う。
「…無いよ。ベニカとの契約の印紋を消してしまえば…僕は他の人に付けることは無い。そもそもベニカにも付けたくなかったんだよ、本当は。」
「なら何故?」
「早くしないと…兄さんなら、ベニカに印紋を付けかねないと思ったからだよ。兄さんは優しそうに見えてなかなか良い性格をしているからね。欲しいものには容赦しない。」
だから…ごめんね、と抱きしめながらルル様は呟いた。
「ベニカが兄さんに囲われるだなんて死んだ方がマシだ。今でさえ…ベニカの良さが無くなっているのに兄さんの愛妾になんてされたらベニカが壊れてしまう。」
「そんな…大袈裟ですわ。」
「大袈裟なんかじゃない。…ねぇ、ベニカ。君は僕の太陽なんだ。昔のお転婆で無邪気な君が大好きなんだ。だから…少しの間だけでいい。その、作られた話し方じゃなくて、僕の前でだけは…あの頃みたいに話してくれないかな?」
「だ…っ」
綺麗な顔を少し歪めて。
初めて出会った時のような泣きそうな顔をして。
あの頃の私が大好きなんだって。
お願いだなんて言うから。
「…私が、あなたのお願いを断れる訳ないじゃない。後から不敬だなんて言わないでよね。」
紛らわしい言葉選びをする第二王子の要求に…応えてあげないとね。
「言うわけないよ。…ありがとう、ベニカ。酷いことをしたのに…僕を受け入れてくれて。」
「…理由があって、だから。それでも無理矢理は…よくは無いけれど。」
「それは、本当にごめん。ちゃんと、兄さんの成婚後に僕の契約の印紋を消した後のことも考えておくから。」
それから…ルル様とはレオナルト様のご成婚まで、どう過ごすかを相談して。
王城にいる時は必ずルル様の傍にいること。
レオナルト様が政務中以外には王城に近づかないこと、と。
「それと、誰にも契約の印紋の事は言わないで。消す時に面倒なことになり兼ねないから。」