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転生チートに出遅れて  作者: 月灯 雪兎
第9章 独立宣言
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5.幕間 黒猫と癖っ毛わんこ

「イオリちゃん、また明日ねー」

「おー。またな!」


 曲がり角でクラスメイトのトアに手を振って別れ、幼少部のある別棟の一つに向かった。

 あたしは今何故か忙しい。

 学校が終わると育児が始まる。


「こんにちはー」


 オートロックのセキュリティを指紋(しもん)認証で開け、壁のようにも見える透過扉(とうかとびら)ピアドを(なな)めにスワイプした後通り抜けた。

 元は開発した会社名で、似た形式の出入口の通称として定着しているらしい。


「あらお帰り。今日は早いのねぇ。リトちゃんお姉ちゃんよー」

「いおいー!」


 年配の保育士さんが声をかけると、トタトタトタトターっと小さいのが何人も集まってきた。


「トもかえうー」

「うん、そのために迎えに来たんだよ」


 自分より先に他の子たちがあたしのまわりを取り囲んだから、先を越されて置いていかれるとでも思ったのか、リトが半泣きなのが笑えた。


「大丈夫よ。お姉ちゃん置いていかないって」


 保育士さんも笑っている。


「おいで」


 手を広げると抱きついてきたからそのまま抱えた。

 保育士さんたちにお礼を言って、後追いをしている他の子どもたちにも全員にタッチをして、幼少部を後にした。


 工場地帯みたいな配管と煙突だらけの市街地と違って、家の手前まではきれいな石(だたみ)の歩道を通って行ける。


「いおいー」

「ん? どした?」

「といしゃん」

「鳥さん? どこ?」


 あたしは空を見上げたり、あちこち見回したけれど、鳥らしいものは見つからない。


「かぁいーねー」


 リトはだっこされたままニコニコしながら宙の一点を見ている。

 どこだろう?

 赤ちゃんにだけ見える世界があるのかもしれないとも思った。


 石畳の歩道をゆっくり空を(なが)めながら歩く。

 車とかは通ってなくて、基本みんな歩いている。

 それかキックボードやインラインスケート、スケボーみたいなもので走ってるのはよく見かける。


 どれもタイヤがないけれど。


 ヨースケと二人でリトを拾ったのは989年3日向日葵(ひまわり)。初夏で暑くなり始めの頃だった。


 今は(もみじ)で秋も終わりに近づいてるからリトを(ひろ)ってからもうすぐ半年。拾った日を誕生日にしてあるから、リトはもうすぐ1歳になる。

 

 親は見つかっていないようで、何かわかったら連絡くれると言っていた役所からも音沙汰(おとさた)がない。


「おうち帰ったらなにして遊ぼうか?」

「ぼーう。ト、ぼーうやう」

「ボールかぁ。新しいの買ったもんな。帰ったらやろう」

「うん。やう」


 自分の名前をまだ上手く言えなくて、『ト』になってしまうのが可愛い。


 巻き毛のリトには頭の両サイドに少し()れた耳がある。

 人間の耳より少し上の部分についていて、髪の毛の間から横にぴょこっと出てる感じ。


 あたしの黒い猫耳はアルさんが送ってくれた(にせ)物だけど、リトのは本物だ。


「いおいのみみー」

「ん? ちょっ、リト引っ張らない……あっ!」

「とえたねー」


 普通は取れない。

 取れたのを誰かに見られるわけにはいかなかったから、すぐにまた付けた。


「もー」


 あたしが文句を言うと、リトはきゃっきゃ言って喜んでいる。

 リトを降ろして、手をつないで歩くことにした。


 フラフラしてるから手をつなぎながら歩いて帰る。


 ヨースケ今日は早く帰って来るかなー。


 夕飯何がいいか、こっそりお菓子でも買おうかとか、色々なことを考えながら、のんびり歩く。


 振り返るリトのニコニコ顔が今日も可愛かった。



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