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16、再会

16、再会



俺はクォーツとガーネットを殺し、死神になった。


莉奈には悠希を探すと言って、テネブラエの街で魔王の前でくすぶっている冒険者を狙った。一方的に弱い者を狙うのは気が引けた。だから、同レベル以上か少し下と戦った。


どの冒険者もSランクまで来ると、戦闘力は半端無い。さらに戦い慣れもしている。毎回ボス戦のような苦しい戦いだった。おかげでこっちのレベルは意図せずに上がっていく。そうでもしなければ、あいつには追い付けない。


俺は智樹が宿に遺した、数多くの『モルスのヴィトロ』を使って冒険者の魂を集め続けた。時には手強い冒険者に打ち負け、自らが『モルスのヴィトロ』に入った。


『モルスのヴィトロ』から復活するには、イグニスの噴火口で採れる黒い砂が必要だ。イグニスで黒い砂を採集しつつ、テネブラエに通った。


莉奈はと言うと……イグニスのトパーズの研究所で研究の手伝いをしている。という事になっている。


が……俺の予想では絶対にレベルあげをしている。


この前様子を見に研究所へ寄ると「金のオッサンが……」と、トパーズと何やら火の国の番人の話をしていた。


そんなある日、月の光の明るい夜……


そろそろイグニスへ帰ろうとした時、暗闇から話しかけられた。


「お前、何者だ?」


その声ですぐにわかった。そいつは俺が探していた相手だ。俺はすぐに黒いローブのフードを取ってみせた。


こうやって冒険者の魂を集め続けていれば、いずれ会うだろうと思っていた。


「俺の他に死神がいるとは聞いていたが……お前かエメラルド」

「俺はお前と違って、ガーネットに命令された掃除とは違うで?」


俺が死神をやるのは、お前を誘き寄せるためでもある。


「お前も『purus aqua』を探しているのか?」


……探す?


「当たり前やん。ガーネットの言う通り闇雲に冒険者の魂集めても見つからんで?」

「ガーネット?ああ、あの嘘つき女の事か」


ガーネットのご褒美が『purus aqua』というのが嘘だという事を、悠希は知っていたようだった。


待て?『purus aqua』が存在しないと思っているなら、何故魂を集めるのを止めない?


「ガーネットが嘘つき言うんやったら、お前はホンマの在処を知ってんのか?」


その問いに、悠希は答え無かった。


「エメラルド、お前は本当に『透明な水』が欲しいか?」

「欲しい。欲しいと言うよりは見てみたい。自分が作った世界のホンマのエンディングを見てみたいんや」

「作った……?エメラルドが?」


俺は、悠希に前世の記憶を思い出した事を説明した。


「悠希、ここは協力せえへんか?俺とお前が組めば効率的に冒険者の魂を集められる」

「それは、嘘だろう?お前は嘘をついている」


はぁ?


「なんでや?なんでそう思うんや?」

「俺は、この世界を作った人に会った。本物の製作者に会ったんだ」


本物の製作者……?


そう言われて、思い出した。この世界は俺1人で作った訳じゃない。確か、他に何人かいた。


『住吉 大也』ふと頭に浮かんだのはその名前だった。


「ダイヤか?」


すると、次々と名前を思い出した。


「清水か?それともハクか?」


このゲームは、住吉 大也、清水 碧、白河 琥珀、そして俺、蒼井 緑。その四人で作ったゲームだ。


その様子に、悠希は少し驚いていた。


確か……俺は主に肉体と精神の分離、ゲームへの意識導入システムの開発担当だった。昔から幽体離脱~と言って兄と遊んでいた。いや、双子のアレじゃなくて、リアルなやつ。


「だったら、俺より『透明な水』に詳しいはずじゃないのか?」

「すまん、俺も完全には記憶が戻って無いんや。1万人の魂を集めるまでは確実なんやけど、それをどうするかは全く覚えて無い」


それでは嘘をついている証明にはならない。


「直接ダイヤに聞かんとわからんな。前世の記憶で何とかみつからんかな?トパーズに聞いて……」


しかし、最後まで話終わる前に悠希が言った。


「ダイヤは、グラキアスの王だ」

「大也がダイヤモンドになったんかいな!それ寒いな~!」

「寒かった……寒い氷の国だった。でも、温暖化の影響とかで突然消えた」


そこ、リアルな国際問題持ってくるか?顔はいいのに、センスの悪い所がダイヤの特徴だった。


「当時、冒険者の間では強制撤去のエリアだってもっぱらの噂だった」


今は無い国?


「そのグラキアスの王に1度だけ行った事がある。その時に、王が魔王を倒した冒険者に言っていた。『purus aqua』は本当に現実を受け入れられる者だけが手に入れられる」

「グラキアス、今は無いんか?なんでや?」

「わからない……」


しかし、実際に行ってみなければわからない。


「明日、グラキアスがあった所まで案内してくれんか?」


悠希はその願いを承諾した。俺は莉奈に会わせてやろうと、もっと詳しい話がしたいと言って俺に同行させた。


俺はその収穫を莉奈にいち早く見せようと、急いでトパーズの研究所を訪れた。


しかし…………


「莉奈が捕まった?」


悠希に襲われた冒険者の生き残りが、死神は悠希だと気がつき、妹を人質にヴィトロに入った仲間の解放を要求してきた。


「何やってんねん!」


自分が死神だとバレれば近づく冒険者が減り、魂が集めにくくなる。少し考えればわかる事だ。


「どうするんやYUK」

「莉奈に手を出した奴らは全員…………殺す」

「その意見には賛成や」


俺達はトパーズに場所を聞き、すぐに冒険者のいる洞窟に向かった。しかし、冒険者は思いの外低レベルで……俺達は洞窟にいた冒険者達を1人残らず倒し、莉奈を救い出した。


「莉奈、大丈夫か?」


莉奈は呆然としていた。


「そりゃそうやろうな。突然兄が現れたんやから」

「ちが……」

「違うんか?何や?どないした?」


莉奈は俺にしがみつくと、俺についた返り血を見て震えていた。


「血が………………」

「そりゃ人間同士の戦いや。血も出るやろ?」


その時初めて……


俺は…………本当の死神なんだと自覚した。


莉奈はただ呆然として訳じゃない。その、リアルな惨状に怯えていた。その感覚に慣れてしまった俺はもう正常じゃないのかもしれない。正に死神だ。


しばらくすると、莉奈は悠希の存在に気がついた。


「トムさん?違う。お兄ちゃん!トムさんはお兄ちゃんなんでしょ?」

「俺はお前の兄じゃない」

「どうして?どうして……智樹を殺したの?」


その質問には、悠希はすぐには答えられないようだった。しかし、悠希は冷たく冷静に言った。


「憎いからだ。お前も智樹も、この世界に来たら絶対に殺してやろうと思ってた。それだけだ」


寒い空気が、洞窟の中に流れ込んで来た。


「そら困るわ。俺は、お前ら三人全員帰したいんや」

「何だそれ?俺達全員を現実世界に帰してエメラルドに何のメリットがある?」


メリット?メリットがなきゃおかしいか?


俺がテネブラエへ行っている事を、莉奈には秘密にして欲しいとトパーズに頼んだ時……


トパーズに明言された。


「いいんですか?」

「何がや?」

「三人を帰すという事は、莉奈さんも帰すという事ですよね?」


何を今さら……


「それは、二度と会えない可能性が大きくなるという事ですよ」

「それでも……別にええやん」

「それでは、あなたは報われませんよ?」


好きになった相手が必ずしも自分を好きになるとは限らない。そんなの当たり前だ。


「報われ無くてもええ……」

「いえ、人間は報われなければ、その想いは方向を変えて行きます」


今さら方向が変わるのか……?


「メリット?大有りや。俺は莉奈が好きや!智樹も、もちろんお前も…………」


ここからどう変わるって言うんだ?


「なんや、俺に恥ずかしい事言わせんな!」


好きな相手の望みを叶えて、何がおかしい?


莉奈が好きな相手は……悠希だ。莉奈が大切なのは悠希と智樹。


それを助けたいと思うのは、おかしい事なのか?



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