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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第35章 人形墓標
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第10話 鋼の猟犬

 鋼で造られた猟犬が駆けてくる。

 群れらしく20体ほどが一緒に行動している。


「任せたメリッサ」


 メリッサが先頭に立つと杖を掲げて炎の矢を飛ばす。

 正確に猟犬の頭部に命中した炎の矢は鋼の猟犬を次々と爆散させていく。


「何か詰まっていますね」


 たしかに炎の矢には貫いた相手を爆発させる力がある。

 それでも爆発の威力がメリッサの想定していたものより高い。鋼の猟犬の内部に爆発の威力を高めるような物があり、それに誘爆している。

 その考えは正しかったらしく駆けながら開けられた口の奥から銃口が飛び出してくる。


 ドゥル、ドゥル、ドゥル、ドゥル、ドゥル、……!


 銃身が回転しながら6門の銃口から弾丸が放たれる。

 炎の矢に弾丸が当たり爆発が起こる。

 強い力を誇る炎の矢だけど、事前に何かを当てることで防げるという弱点が存在している。だから使用するなら遠距離攻撃を封じることができる状況にするか仲間が注意を惹いている必要がある。


「アイラとノエルはメリッサの援護。お前はそのまま打ち続けろ。敵はゴーレム。普通の生物なら攻撃しながら近付いて来るなんていうことができないはずなのに、あいつらは平然と近付いて来ていやがる」


 鋼の猟犬まで30メートル。

 弾丸が止まり、鋼の猟犬が飛び掛かってくる。丁寧なことに4本の足の先からは鋭い爪が飛び出て斬り裂けるようになっている。


 飛び掛かってきた猟犬の爪を剣と錫杖で受け止める。

 鋼の体から放たれる重さに苦戦しながら弾き飛ばすと倒れた鋼の猟犬へトドメを刺そう武器を伸ばす。


「……!?」


 しかし、踏み込んだ直後に銃の照準が定められていることを見て身を翻す。

 二人が背後を弾丸が掠めて行くのを感じながら鋼の猟犬の体に武器を突き刺す。


「離れて……!」

「……ッ!?」


 鋼の猟犬から放たれる火薬の臭いにアイラとノエルが後ろへ跳ぶ。

 直後、体内にあった火薬が爆発する。


「ったく、なんだっていうんだ……?」

「どうやら自爆したようです。それよりも気を付けて下さい、障壁を張って爆発は防ぎましたけど、まだ猟犬は残って……」


 爆発の向こうから鋼の猟犬が駆ける音が聞こえる。


 ただ、さっきまでとは微妙に違う。

 ブオッ、と爆煙の向こうから鋼の猟犬が飛び出してくる。ただし、飛び出してきたのは天井付近。

 爆発を防ぐ為に張られたメリッサの障壁だったが、爆発による炎と煙を防ぐことを目的にされたもの。遺跡の高い天井まで防ぐ必要はなかったため2メートルの障壁を横一杯に広げられていた。

 天井付近は警戒の範囲外。


 障壁を跳び越えた鋼の猟犬がスタッと着地する。


「てい」


 着地したばかりの腹を蹴り上げて壁に叩き付ける。

 壁に叩き付けられたことでバラバラに砕けて首辺りから魔石が転がり落ちてくる。見た目は普通の魔石と変わらない。けれども、内包している魔力の量が大きさを考えると倍はある。


「マルス、何をしているの!?」


 次々と障壁を跳び越えてくる鋼の猟犬をイリスが斬っていく。犬の形に拘ったせいか両断すれば動き出すこともない。


「メリッサ代われ」


 床に手をついて魔法を発動させる。

 ……ん?


「おい、魔法が使えないぞ」

「土壁を出そうとしたのなら不可能です」


 メリッサの張った障壁に頭をガンガンぶつけてくる猟犬。

 障壁の手前には頭部が砕けて動かなくなった残骸がいくつも転がっている。こいつらにとって破壊されることはなんでもない。


「床や壁を見てください」

「見て、って言われても……」


 相変わらず鋼鉄の壁があるだけで、おかしなところはどこにもない……


「綺麗なまま、なのね」

「その通りです」


 シルビアが跳び越えてきた鋼の猟犬の喉へ適確にナイフを突き刺して魔石を抜き取る。

 傷付いてしまっているため価値は下がるだろうが、持ち帰ることにしたのか収納リングへしまっている。


「これだけ爆発が起こっているにもかかわらず傷が全くついていません」

「そうだ……」


 試しに床を殴ってみる。

 少しばかり強めに殴ったおかげで穴を小さく開けることに成功した。しかし、数秒と経たずに床の向こうからドロドロとした鋼鉄のような物が溢れてきて以前のような形になると穴を塞いでしまう。


「自己再生能力を持った建物……」

「それだけではありません。耐久力の強い資材を使われており、床や壁に接して使用された魔法は無力化されるようになっています。土壁を出して猟犬を止めるのは不可能です」


 床が金属で造られていたとしても通常は金属を寄せ集めるようにして壁を出現させることが可能だ。

 だが、今は全く成功する気配がない。


「強い力を用いれば干渉も可能です。ですが、それは上級魔法並の力を使用して下級魔法並の効果を生み出しているようなもの……効率が悪いです。全力で攻撃すれば壁を破壊することも可能だと思いますが、すぐに再生されてしまいます」

「それも、そうだな!」


 上から落ちるように襲い掛かってきた猟犬の頭を押さえると床に叩き付ける。

 バラバラになる鋼の猟犬を見ながら晴れてきた爆煙の向こう側を見る。


「減った様子がないな」

「もう最初に見えた20体は倒しているはずです」


 今も20体近い鋼の猟犬が同時に体当たりをメリッサの障壁に対して行っている。

 床には鋼の猟犬の残骸が20体分以上は転がっている。


「どこかからなのか知らないけど補充されているんだろ」

「尽きる様子が全くありません。この場で足止めされていても時間の無駄です」

「メリッサ、障壁を解除だ」


 唐突に障壁が消える。

 その事に気付けなかった体当たりを繰り返していた鋼の猟犬が体を滑らせて転倒する。

 致命的な隙を晒している間に斬撃を飛ばして首を刎ねる。

 やはり、魔石は首辺りにあるらしくピクリとも動かなくなる。


「チッ、面倒な……」


 視界の隅には遺跡の地図が表示されるようにしてある。

 そして、同時に【気配探知】も使用し、敵の反応があった時には地図に表示されるようにしてある。シルビアが早々に気付いてくれたおかげで敵の出現を知ることができた。


 チラッと見えたのは人型のゴーレム。ただし、体長が3メートル近くあり、外で門番のように立ちはだかったゴーレムと同様に左右それぞれに3本の腕を持っている。


「ここは先へ進むしかないな」


 ブライアンさんの手から小さな光の球が放たれる。

 それは、鋼の猟犬たちの方へと進んで行き、光による爆発を生み出して鋼の猟犬たちを巻き込んでいく。

 さらに光の鞭が左から右へと振るわれると猟犬たちの体が両断される。


「本当に何体いるんだ?」


 廊下の向こうから駆けてくる姿が見える。


「行くぞ--」


 ラチェットさんを先頭に走る。


「私は、あまり走るのが得意、じゃないんだがな」


 奥に現れたゴーレムの手前にある曲がり角を右へ進むラチェットさん。

 その後ろをアイラとノエルが続いて警戒している。


「やった、大部屋!」


 開けた空間が見えてはしゃぐアイラ。


 ブ―――! ブ―――!


「何をやったアイラ!」

「あたし!? あたしは本当に何もしていないわよ!」


 再び鳴り響く警報。

 何かを作動させてしまったのは間違いない。

 すぐ隣を走っていたはずのブライアンさんが遅れ出してシルビアがフォローする為に速度を合わせて走っている。


 どんなトラップを作動させたのか考える暇も……


「そういうトラップか!」

「きゃっ」


 咄嗟に近くにいたメリッサを前へ蹴り飛ばす。

 直後、天井から鋼鉄の壁が落ちてくる。こちら側にラチェットさんとシルビア、俺とイリスだけが取り残された。


「どうして私を……」

「そっちの戦力が偏ることになるだろ」


 高火力の魔法を使える者がいなくなる。

 分断されてしまった時に備えてメリッサだけでも送らせてもらったが、不要な気遣いだったかもしれない。


「ふむ……」


 落ちてきた壁を触ってみる。

 見たこともない材質の金属で造られているが、触ってみた時の感触としては破壊できない訳ではないようだ。


「離れていろ」


 声も向こうに届く。

 さっさと合流する為に神剣を振って壁を斬る。


「よし」


 人が十分に通れるスペースを確保する。


「まったく……」


 せっかくトラップで壁を落としたというのに、その壁をあっさりと斬ってしまったことにメリッサが呆れている。


「ここから向こう側へ行きますよ」


 鋼の猟犬から逃れているブライアンさん。

 鋭い爪で斬り裂かれそうになるところをシルビアが助けているおかげで逃れられている。


「……! マルス、跳んで!」


 イリスの切羽つまった声。

 理由を考えるまでもなく後ろへと跳ぶ。


 ――ガシャン!


 新たな壁が天井から落ちてきた。イリスの忠告がなければ潰されていたかもしれない。


「安心しないで!」

「げっ、マジかよ」


 後ろへ跳んだ先でも壁が次々に落ちてくる。

 同じ壁なら神剣で斬ることはできる。しかし、新たな壁が落ちてくるのでは斬って向こう側へ行くのは難しい。


「戻るぞ」

「あ、おい……!」


 疲れ始めていたブライアンさんの体を抱えて来た道を戻る。

 その間にも落ちる壁が後ろから追ってくる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 現代系統の科学と言うよりも魔法科学や魔導科学って感じなのかな?
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