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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第31章 黒影傭兵
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第1話 ドラゴン売却

 ドラゴンの素材は高値で取引される。これまでアリスターとウィンキアで売らせてもらったが、どちらも売っているこちらが「大丈夫か?」と思うほどの高値で買い取ってくれた。彼らも商人。きちんと利益は出すはずだ。


 大量に手に入れたドラゴンの爪や鱗といった素材。

 大鬼(オーガ)へ鍛冶に必要な分を渡して、余りを売却するつもりでいた。しかし、大鬼が要望してきたのは腕一本分にも満たない量の鱗のみ。ドラゴンの鱗は下手な金属よりも頑丈なため装備に使うなら必要だと思っていた。


 大量に余ってしまった素材。

 魔力に換えてしまうよりも売って金にした方が儲かる。


 ただし、大量にある、というのが問題だった。

 1箇所で卸せば値崩れを起こしてしまう。


 普段世話になっていることもあって必要とされている量をアリスターで売却させてもらった。

 次いで、イシュガリア公国へ行って冒険者ギルドで売らせてもらった。


 ……それでも、大量に余っている。


 貴重な王竜の素材。

 1体でもあれば十分らしく、2ヶ所を回ってもフォリスの分しか売ることができなかった。


 そこで俺が訪れたレジュラス商業国。

 首都のレジェンスなら多くの商人がおり、様々な物が集まるため王竜の素材でも買い取ってくれると考えたため訪れた。


「お久しぶりです」

「元気にしているようでなによりだ」


 落ち着いた様子の青年。

 彼はレジュラス商業国にある商業組合で副会長をしているゲイツ・ギブソン。


「今も副会長をしているみたいですね」

「あの時の一件でジャレッド会長は失態を犯した。だからといって会長職を辞さなければならないほどの失態ではない。ただし、以前ほどの横暴はできなくなっているから数年の間は名前だけの会長を続けることになるだろう」


 その後、どうなるのかは分からない。

 ゲイツの頭には計画があるのだろうが、それを誰かに漏らすような真似は絶対にしないだろう。


「さて、私は『貴方が珍しい物を持ち込んだ』とだけ聞いています。どのような物を持ち込んでくれたのか興味がありますね」

「ドラゴンですよ」

「……そうですか」


 スッと興味を失ってしまったゲイツ副会長。


 あれ……?

 もっと食い付くような反応を予想していたんだけど、興味を失くしてしまうのは予想外だった。


「メティス王国ではどうなのか知りませんが、ここレジュラス商業国でドラゴンはそれほど珍しい物でもないですよ」


 大規模な迷宮を保有するエスタリア王国が近くにあるのが大きな理由だ。

 途中で攻略を止めてしまったため知らなかったが、迷宮の奥の方ではドラゴンが出現するエリアがあり、冒険者の中にはパーティの枠を超えて徒党を組んで討伐に当たる者までいるらしい。


 貴族の力が強いエスタリア王国ではドラゴンのような強い魔物は剥製にして売ると人気が出る。

 そのためドラゴンを狩る冒険者は懐が潤っており、次から次へと狩られる。

 素材の一部がレジュラス商業国へと流れてくるためドラゴンには見慣れていた。


「けど、見慣れているのはその程度でしょう」

「と言うと?」


 冒険者数十人でドラゴンを討伐する。

 その程度の戦力で討伐可能なドラゴンは少なくとも王竜には遠く及ばない。王竜を討伐する為には数を集めたところで意味などない。英雄と呼ばれるような人物を呼ぶか化け物に頼るしかない。


 懐から皮袋を取り出してテーブルの上に鱗を置く。


「これは……」


 さすがは商業組合の副会長を務める商人。

 見ただけで今まで扱ってきた鱗を上回る品質だと見抜いた。


「王竜と呼ばれる特別な力を有するドラゴンの鱗です」


 ドラゴンには地竜や飛竜。

 さらに得意な属性の力が極端に強くなった属性竜。

 そこから特別な力を有し、他のドラゴンを支配することができるドラゴンが王竜と呼ばれている。


「本物のドラゴンの鱗」


 王竜の素材に比べれば他のドラゴンの素材など偽物扱いされても仕方ない。


「これが3体分はあります」


 ゲイツ副会長もドラゴンを見たことはある。

 ドラゴンがどれだけ大きいのかは容易に想像することができ、鱗の大きさと比較して総量の計算をしている。


「いくらで買い取りますか?」

「逆に聞きたい。いくらで売っていただけますか?」

「そちらの言い値に任せますよ」


 敢えて値段は提示しない。

 こちらにとって不満に思うような値段を提示してくるようなら他の人へ持ち込めばいい。伝手がないので面倒なことになるが、損をするよりはマシだ。


 すぐには値段を提示してこない。さすがのゲイツ副会長も王竜の鱗をいくらで買い取ればいいのか判断できない。


「ところで、ここには王竜の素材を扱えるだけの職人がいますか?」

「もちろんです。ここは多くの品物が集まる場所。ただ素材をやり取りするだけでは利益を出せません。本当に利益を出すつもりなら、ここでしかできない付加価値が必要になります」


 多くの職人を呼び集めた。

 集めた職人に武器や防具へ加工させることで付加価値を与える。


「それはよかった。ここへ来る前にも素材の一部を提供させてもらいましたが、扱うことのできる職人がいるからこそ買い取ってもらうことができました。果たしてレジェンスにいる職人ならどれだけの価値を付加させることができるのか非常に興味があります」

「それは、挑発と受け取っていいですか?」

「お好きなように受け取ってください」


 王竜の素材から造られる装備は間違いなく超一級品。

 これらの素材が生み出してくれる利益を考えれば職人として逃すような真似をできるはずがなかった。

 これで退路は断った。


「失礼」


 席を立つゲイツ副会長。

 しばらく待っていると両手で持てるほどの大きさをした箱を抱えて戻ってきた。


「こちらをご覧ください」


 箱の中には魔物の物と思われる角が納められていた。

 綺麗な真っ白い角。見ていると吸い込まれるような気がするほどだ。


「どうやら興味を持っていただけたようですね」

「これは?」

「数日前にエスタリア王国から流れてきた曰くのある角です。こういった品々を集める趣味を持つ貴族の方が保有していたのですが、少し前にエスタリア王国で政変があったらしく、爵位を失った貴族が泣く泣く手放した物です」

「曰く、というと?」

「この角に魅入られた者は正気を失ったように人を襲うようになってしまうようです。一時は、何も知らない貴族の豪邸で飾られていたところパーティーの最中に呪いが発動して参加者の全員がお互いに殺し合い、惨殺される事件がありました」

「どうして、そんな物を取っておいてあるんですか」


 そんな危険な代物なら処分してしまった方がいい。


「いいえ、そういうわけにもいかないのです。この角は、特殊な霊薬を作る素材として欠かせないのです。実際、最初に持っていた者は呪いが発動する前までは削り出した僅かな欠片だけで財を成した、と言われています」

「へぇ」


 徐に【鑑定】を使用してみる。

 どうやら迷宮の宝箱から得られた物なのか、それとも迷宮生まれの魔物の角なのかは分からないが鑑定することができた。


 ――ユニコーンの角。

 ユニコーンは魔物にしては珍しく回復魔法を使うことができ、様々な毒を中和させることができる。人間が相手だったとしても本当に病で困っている者には聖職者をも超える回復魔法を行使して人を助けることがある。

 しかし、基本的に森の奥深いところを好んで生きていることから出会うことが非常に稀なため素材を得られたことは少ない。

 たしかにユニコーンの角から作った薬なら万病にも効く。


 もしかしたら静かに暮らしていたところを無理矢理狩ったのかもしれない。そのせいで人間を恨む気持ちが強くなって人を呪うようになった。


「後はこちらをお持ちしました」


 懐から皮袋を取り出す。

 中には何枚かの硬貨が入っているのが音から分かった。


「これは?」

「この角は、非常に貴重な素材を持ち込んだくれたことへのお礼としてお渡しします。そして、王竜の鱗に私はこれだけの値段をつけました」


 皮袋の中に入っていたのは金貨ではなく白金貨。

 金貨の200倍の価値があると言われている。国同士のやり取りで使用されることが多い硬貨だ。


「それは前金です。さすがに手元である資金で用意するのは不可能でした。ですので、とりあえず1体分の対価を用意させていただきました。残金については後ほどということでお願いします」

「いいですよ」


 俺たちにとっては余った素材。

 予想以上に高値で引き取ってくれたので、売り渡すことにした。

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