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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第31章 黒影傭兵
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第2話 戦争の兆し―前―

 ドラゴンの素材を売却すると屋敷へと帰り、リビングで待っていた仲間に報告する。

 今回は一人で遠出していた。

 メリッサやノエルは遠出ができるような状態ではなく、他の3人には情報収集を頼んでいた。


 面倒事に巻き込まれない為には事前に動いておく必要がある。

 そっちの報告を受ける前に俺から報告する。


「あの、できればソファに座って報告をした方がいいのでは?」

「……疲れているんだよ」


 今の俺はメリッサに膝を枕にしていた。

 疲れている、というのは言い訳でこうして彼女の体と相対しているとはっきりわかる。


「本当に大きくなっているな」


 季節は秋になろうとしていた。

 メリッサとノエルが妊娠してから三カ月。普通なら妊娠した気がする程度に大きくなるお腹。しかし、今のメリッサは妊娠していることがはっきりと分かるほどに大きくしていた。獣人であるノエルも同様だ。

 【時空魔法】の応用らしく、胎児の成長を早めた結果だった。


「本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ。ここからは通常通り緩やかに成長させます。これ以上魔法を使うのは私の体への負担が大きいようですから、どうしても耐えられない時にのみ使用することにします」


 半年ちょっとぐらいの大きさ。

 この調子なら三カ月ぐらいで自然に生まれるそうなので、獣人と同程度に生まれるらしい。


「ですが、私がいないからといって値段を抑えられたのはいただけません」

「そうか?」

「私なら交渉して倍の値段を出させることができます。ですが、決して悪い事とは言えません。今後の関係を考えるなら適度な値段に抑えたのは正解でしょう。その辺りのことを見越してユニコーンの角を提供したのかもしれません」


 ユニコーンの角。

 それに白金貨。

 どちらも手元に残しておいた。


「どうされるおつもりですか?」

「何か使い道があるかもしれないから残しておこう。今は魔力に余裕があって逼迫している訳じゃない」


 別な使い道が見つかってさらに稼げるかもしれない。

 道具箱(アイテムボックス)に入れておけば朽ちることもないため保管に困るようなことはない。


「それよりも本題に入ろう。外国では正確な情報は得られなかった。ただし、帝国は警戒しているようだったな」


 リオが治めるグレンヴァルガ帝国。

 以前に皇帝であるリオが俺と密約を交わしたため王国へ攻め入ってくるようなことはない。こちらとの約束を破った瞬間に俺が敵に回ることになるからだ。俺一人を倒す為に帝国の戦力をどれほど消費するのか……最悪の場合には全滅すらも考えられる。


 数年前に皇帝となったリオ。

 グレンヴァルガ帝国の北には、ガルディス帝国と呼ばれる国があり虎視眈々と土地を狙われていた。

 代替わりでバタバタしている隙を狙って国境地帯では小競り合いが続いていた。


 ここまではいい。いや、ガルディス帝国へ行き難くなっているためよくはないのだが、想定された範囲内の出来事だった。


 問題は西側の国境を接しているメティス王国の動きだった。

 王国でも政変が起こった。

 クーデターだ。用意周到に計画されたクーデターは成功に終わった、というところまでは聞いていた。


「今はクーデターを推し進めていた公爵の幼い孫が国王代理を務めている」


 イリスが教えてくれる。

 彼女たちには俺が留守にしている間に王国内の情報収集を頼んでいた。


「今は10歳らしい」

「……そんな子供に国王が務まるのか?」

「務まる訳がない。だから、公爵が宰相として政務の補佐をしている」


 だったら公爵自身が国王になればいい。

 そう思わないわけではなかったが、そこまで単純にはなっていなかった。


「この国の王になる為には条件が必要なのは覚えている?」

「もちろん」


 王城の地下にある迷宮を最下層まで到達し、迷宮主として認められること。

 ただ到達すればいい、というわけではなく王族に連なる血筋であることが最低限必要だった。


「公爵は前国王の弟。で、公爵の息子に国王の妹が嫁いでいる。つまり、国王代理になった孫は濃く王家の血を継いでいる」

「それ、大丈夫なのか?」


 血縁的に近しい者との間に子供を作ると死産が多くなったり、生まれても色々な問題を抱えたりしている場合がある。

 だから普通は避けるべき事態だ。


「それは仕方ありません。公爵家としての格を保つ為には王家に近しい必要があるのですから」


 元貴族家だったメリッサが説明してくれる。

 王家に連なる爵位を持つ。

 もしも、王家に問題があって王位継承者が誰もいなくなった場合には継承権が与えられることもある。

 そのため血筋的に問題がないようにされている。

 時には王家から娘を降嫁させ、公爵家から娘を王家へ嫁に出すこともある。


「公爵自身では血統の問題から迷宮主になる資格を有していると判断されなかったのでしょう。そして、それは公爵の息子たちにも言える話ですし、あの迷宮核が女性に資格を認めるとは思えません。ですが、幼い孫は認められたのでしょう」


 もちろん幼い子供が王になる事を納得していない人は多くいた。

 しかし、多くの人を集めた場で大臣を務めたこともある公爵が新国王になった子供の頭の上に王冠を乗せた瞬間、王冠が光り輝いた。


 その光景を見た人々は騒めいた。

 代々の国王が受け継いできた王冠。

 国王として認められると王冠は強い光を発することがある。


「上位の貴族たちの間では有名な話らしいです」


 王の傍にいるような貴族は、大きな政変でもない限り受け継がれている。だから近しい者だけを集めて王であることを示す国王就任の儀式についても伝えられていた。

 とはいえ、実際には逆なのだろう。

 王冠に認められたからこそ王になれる訳ではない。

 王だと迷宮に認められたからこそ王冠は光を放った。


「今度会うような機会があったら【鑑定】してみるか」


 おそらくは迷宮の力で生み出した物品の可能性が高い。

 王冠にどのような効果があるのか分からないが、何かしらの意味があるのかもしれない。


「今の国王が誰なのかは分かった」


 実質、公爵家が権力を握ったようなものだ。

 辺境であるアーカナム地方にまで影響が及ぶ可能性は低いが、一人の人間が権力を握ったことで警戒する必要はある。


「問題なのは戦争を始めるつもりがあることだ」


 バタバタしている王都。

 戦力の再編成まで行われており、戦争を仕掛ける可能性を危惧されても言い訳のできない状態だった。


 表向きには政変の影響で再編成する必要がある、と言われている。

 けれども、王都へ物資を集めている。

 単純に戦力の再編成が目的なら物資の用意までする必要はない。


「権力を握った公爵だけど、新しく国王になった公爵の孫には全く実績がありません。ここで名ばかりの総大将にでもして実績がほしいのでしょう」


 長年争い続けている王国と帝国。

 帝国から少しでも勝利を奪い取ることができたなら実績として最低限の箔はつけることができる。


「でも、実績がほしいからって戦争をする?」

「戦争だから、ですよ」


 ノエルの疑問にメリッサは何気なく答えた。


「戦争をしたいのは上にいる人物だけではありません。武勇に自信のある騎士や将軍は自分の力を示す絶好の機会です。このチャンスを逃す訳にはいきません。そういった人たちの為に戦争は必要になっているのです」


 戦争で家族を失ったイリスとしては納得いかないだろうが、戦争に必要な面があるのも事実だ。

 だからといって戦争を肯定するつもりはない。


「そんな問題に巻き込まれる人たちが可哀想だよ」

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