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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第30章 賢竜咆哮
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第9話 緑ドラゴンからの情報

前半はイリス視点。

後半はマルス視点です。

 迷宮の地下深く。

 地下81階の廃都市フィールド。その郊外に緑色のドラゴンが伏せていた。

 ドラゴンと言えば最強種の魔物。それが拘束されることもなく大人しくしていること自体が異常。


 そのドラゴンに近付く。

 私たちの姿を見たドラゴンがビクッと震える。


 ドラゴンを恐れない理由が二つある。


 一つは人間である私たちがドラゴンを恐れるどころか、ドラゴンの方が私たちを恐れている。

 そのため無闇に攻撃してくることはない。


 そして、もう一つの理由が致命的だ。

 マルスはドラゴンの命を助ける代わりに一つの契約を提示した。

 調教(テイム)契約。

 先に迷宮で待機していたノエルの手によって迷宮の魔物へと変えられたドラゴン。どれだけ足掻いたところで迷宮主や眷属である私たちを傷付けることは絶対にできない。

 仮に何らかの方法で傷付けた場合には、契約条件であるドラゴンの命が失われることになる。

 既に恐怖で怯えているドラゴンにそんなことができるはずがない。


「じゃあ、話をしよう」


 一言声を掛けただけなのに怯えて蹲ってしまった。

 このままだと話が進まない。


「ドラゴンさん。悪いようにはしないから話を聞かせてくれないかな?」


 一緒について来たノエルが優しく語り掛ける。

 それで少しは心を開いてくれたのかドラゴンが少しだけ落ち着きを取り戻す。

 知性があって、こちらの言葉を理解できるドラゴンだけど、さすがに人の言葉を話せるようには創られていない。けど、迷宮の魔物になってしまえば相互に意思の疎通が可能になる。

 ノエルがこの場に同席しているのは、眷属の中で最も魔物との親和性が高い為だ。


「まず、あなたがあそこで何をしていたのか教えてくれる?」


 緑のドラゴンが姿を消してあの場にいたのは赤いドラゴンのバックアップの為だった。

 ドラゴンと言えども倒されることはある。現に冒険者の手によって1体のドラゴンが既に討伐されている。そこで、ピンチになるようなら駆け付けて救助に向かうのが緑のドラゴンの役割だった。


 ところが、私たちの手によってあっさりと倒されてしまったせいで救援に駆け付けることができなかった。

 これは、非常にマズい。

 自分だけが帰れば叱責されるのは間違いない。しかし、既に死んでいるようにしか見えないドラゴンを助けても意味がない。おまけに、あっさりと首を落とされた光景を目にして動けずにいた。


「そうこうしている内にシルビアが気付いた訳だ」


 後はマルスが対処したように緑のドラゴンは討伐された。


「じゃあ、赤いドラゴンは何で来たの?」


 赤いドラゴンは、集められたドラゴンの中でも若い個体で待機している時間が続くことに耐えられなかった。

 そこで、たった1体で飛び出してしまった。

 緑のドラゴンが受けた命令は、飛び出す赤いドラゴンを見ていた指揮官が慌てて出したものだった。


「赤いドラゴンが来た理由。それにあなたが来た理由も分かった」


 完全に偶発的なもの。

 そこに戦略的な意味はなく、暴れたいドラゴンが襲いにきただけの話。


「それに指揮官がいる事も分かった」


 ギャ、と声を挙げて慌てて口を手で押さえる。

 が、どれだけ以前の上位者に対して敬意を表して口を噤もうとしたところで契約には勝てない。


「聞きたいことは二つ。指揮官は何者なのか? そして指揮官の目的は?」


 緑のドラゴンが酷く怯える。

 それだけ以前に仕えていた相手が強者だということ。

 ドラゴンがここまで怯えてしまう事自体があり得ない。


「話してもらおう」


 まあ、そんな事は関係ない。


「教えてくれた後なら迷宮の中限定だけど、好きに生きていていい」



 ☆ ☆ ☆



 イリスが緑のドラゴンから情報収集に成功した。

 その結果、指揮官の存在についても分かった。


「黒いドラゴン?」


 今日戦った赤いドラゴンも緑のドラゴンも人間の俺たちから見れば違いがあるようには見えない。

 色で判断するぐらいしか区別する方法がない。


 場所はウルカの宿の一室。

 そこで作戦を立てることにした。


「元々ドラゴンの何体かはノーズウェル山脈の奥深い所で人間と関わることなく過ごしていたらしい」


 イリスが話を聞いた緑のドラゴン、俺たちが倒した赤のドラゴンもそんな山脈の奥で生活していた1体だった。

 たしかに稀ではあるもののドラゴンの目撃例はある。

 それに数十年に一度ぐらいは山脈からドラゴンが下りて来て人間を襲うことがあるらしい。とはいえ、人間を襲うドラゴンは1体だけで群れるようなことはない。


 だからこそ、ギルドは大慌てだった。


「ところが、ある日突然北から黒いドラゴンが3体のドラゴンを引き連れてやって来たらしい」


 黒いドラゴンは、ノーズウェル山脈にいたドラゴンたちに対して自分の支配下に降るよう要求した。


 もちろん自分の力に自信のあるドラゴンたちは拒否した。

 当然、要求した黒いドラゴンには受け入れられるようなものではなく、力で誰が上位者なのか分からせることにした。


「結果は黒いドラゴンの圧勝」


 戦いにすらならず3体のドラゴンが殺されたところでドラゴンたちは実力差を理解した。

 賢いが故に諦めもよかった。

 ノーズウェル山脈にいた15体のドラゴンは黒いドラゴンの支配下に降った。


「現在、3体のドラゴンが討伐された。残りは12体か」

「違う。北から来た黒いドラゴンと3体の部下もいるから残りは16体」


 16体……けっこう稼げそうだな。


「そもそも、そいつらの目的は何だ?」


 北にも別の大陸がある事は知っている。

 しかし、かなりの距離があり、海が荒れていることから船を使っての交流は大型船を利用した長距離航行でしか行われていない。そんな船と燃料を用意できるのは国ぐらいなので交流は限られている。

 それでも、こちらの大陸と同じような生活が営まれているのは知っている。


「そこについては緑のドラゴンも知らなかった」


 情報が漏れてしまうことを恐れたのか黒いドラゴンも自分の目的は語らなかった。

 ただし、命令に対する目的だけは明確にしていた。


「今日のドラゴンの行動は予想外だったけど、この間あった村が襲われた件については計画的に行われた事だった」


 村の襲撃に参加したのはドラゴンの中でも比較的に若い個体。

 その中に今日ウルカを襲撃してきた赤いドラゴンも含まれている。


 その目的は、少しでも多くの人間を喰らい強くさせ、実戦を経験させることで若いドラゴンを強くさせる、というものだった。

 実際、数人程度とはいえ初めて人間を食べたことでドラゴンは強くなっていた。

 そして、人間を簡単に殺せることから自信がついた。


 だが、必要以上に自信をつけてしまった。

 増長したドラゴンは自分一人で街も壊滅させられると勘違いしてしまった。いや、俺たちがいなかったら壊滅できていたかもしれないので、強ち全てが勘違いという訳でもない。


「で、どうするの?」


 アイラが尋ねてくる。


「できれば生態系を崩すような真似はしたくないんだよな」


 元々いたドラゴンは後から来た黒いドラゴンに従っているだけ。

 それまでドラゴンがいても平和が保たれていたなら崩すような真似はしたくない。

 しかし、ドラゴンは強さを信条としているところがある。そんなドラゴンが強さを誇示されて降った黒いドラゴンに反旗を翻すとも思えない。


「俺たちの目的は黒いドラゴンの討伐だ」


 元々いたドラゴンについては黒いドラゴンさえいなくなれば大人しくなってくれるかもしれない。

 

「もっとも邪魔するようなら他のドラゴンも排除する」

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