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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第21章 海底遺跡
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第4話 森の向こう

 目の前に海が広がっている。


「森の向こう側がまさかこのようになっているとは……」


 森の中に道を作ってから3日後。

 エリオットを無事に海まで連れて来ることができた。


「かなりの時間を使ってしまいましたが……」

「いや、それは構わない」


 森は広大だ。

 そのため馬車で移動するとなると森の中を抜けるだけで半日もの時間を要する。

 たとえ、アリスターを早朝に出て真っ直ぐに向かったとしても海へ辿り着くのは夕方か日が暮れる頃になっていたのは間違いない。

 海で、そんな時間から活動を始めるのは危険だ。


 そこで、デイトン村で1泊してから出発した。

 おかげで昼過ぎには到着することができた。


「これで、あの場所にある村の需要が高まるな」


 今回、1泊したことで分かったが、本格的に港町が開発されるまではデイトン村で1泊する必要がある。

 そうなった時、デイトン村は宿場町として栄えることができるだろう。


「ですが、あの村に宿場町としてのノウハウなどありませんよ」

「そんな物はアリスターから派遣すればいい」


 辺境をまとめるアリスター家にとっては、あの場所に村があることこそが重要であって責任者が誰であってもいい。いや、むしろアリスター家が御しやすい人物の方がいいとすら考えている。

 リューたちに宿場町として発展させる能力がない事は明らかだ。


「その辺りの事はアリスター家と村の間で決めて下さい」

「あなたの故郷ではないのか?」

「故郷ではありましたけど、既に出た身です。あの村がどのようになろうと私には関係がありません」


 このままだとアリスター家に乗っ取られる未来しかない。

 しかし、準貴族とも言える村長という立場にありながら村を守る力がない彼らに責任がある。


「そうか。こんな話をしていても実現するのは何十年も先の話になる」


 それよりも今を考える方が有意義だ。


「随分と澄んだ水だな」


 適当に森の中を突き進んだ先には砂浜があった。

 砂浜に押し寄せる波の水は、綺麗で水底が見えるほどだった。


「これまで誰も利用した事のない水です。ゴミが流されることもなかったので自然がそのまま残っているんです」

「これならビーチとして利用することも可能だ」


 何かを思い出すようにしているエリオット。

 話を聞くとサボナにも寄ったみたいなので、俺たちも訪れたリゾートを思い出しているのかもしれない。


「そうですね。北へしばらく進んだ所から深くなっているようなので、港として開発するならそちらの方がいいでしょう」


 この辺りは、リゾートとして開発する。

 それもありかもしれない。


 もっと調査すれば詳しいことも分かるかもしれないのだが、1日しか作業に費やさなかったので大した事が分からなかった。


「ただ、どうするにしても大変な事には変わりがありません」

「どうしてだ?」

「それは――」


 森にある茂みがガサガサと揺れる。

 そこから現れたのは狸型の魔物。愛らしい表情をした魔物なのだが、水魔法を使用してくる少々厄介な魔物だ。


「エリオット様!」


 護衛の騎士がエリオットを守る為に魔物の前に立ちはだかる。

 今回の俺たちへの依頼は、森の向こう側まで連れて来る事だけ。道中や辿り着いてからの護衛は頼まれていない。


 だからエリオットを守るのは騎士の役割。

 一般人にとっては脅威となる魔物だが、エリオットの護衛に選ばれるほどの騎士ならば苦戦せずに倒せる。

 ここは、彼らに任せても大丈夫だろう。


「このように森からは魔物が現れてきます。この場所を本気で開発するつもりならあの程度の魔物を定期的に狩れるだけの戦力を調える必要があります」

「分かっている。街は周囲を壁で囲むつもりだ」

「最低限、それだけはして下さい」

「それにしても海に魔物がいないのは幸いだった」


 森から海へと現れる魔物。

 森の中にいた道中でも襲われることが度々あった。杭を打ち込んでロープを張ったが、その程度では魔物の侵入を完全に防ぐことは叶わなかったらしく、何箇所かのロープが食い千切られていた。


 たった3日でそれほどの被害だ。

 被害を可能な限り失くす為には毎日のように狩り続けるしか対処法がない。


「いえ、海に魔物がいないというのは間違いです」


 試しに道具箱から蟹型の魔物――アイアンクラブを取り出してくる。

 横幅は3メートル近くある大きな魔物で、硬い甲羅に守られた魔物なため討伐が非常に困難となっている。


「数日前までは、この魔物が海岸に何体もいました」

「なに!?」

「もっとも、その時に念入りに討伐しましたのでもう数日は大丈夫ですよ」

「そうか」


 安心してホッと胸を撫で下ろしていた。

 海岸にいる魔物を全滅させる勢いで討伐させてもらった。力の弱い魔物なら残っているかもしれないが、騎士なら片手間で討伐できるレベルの魔物なので放置させてもらっている。

 そこまで討伐しても今の状態が持続されるのは10日ぐらいが限界だろう。

 その後は、再び魔物が活性化することになる。


「そこまでしてもらって済まないな」

「いえ、これぐらいは開通依頼を引き受けた者としては当然です」


 道中の安全だけではない。

 目的地の安全を確保する事も俺たちの仕事だ。


「少ないかもしれないが受け取って欲しい」


 エリオットが自分の収納リングから金貨の詰まった袋を渡してくる。

 ズシッとした重みが手の平に伝わって来る。


「こんなにもらってもいいんでしょうか?」


 何十枚という金貨が詰まっている。

 そこまで働いたという自覚がないので戸惑ってしまう。


「気にしないで欲しい。それだけの事を貴方たちはやった」

「そうですか?」

「もしも、これだけの道を森の中に作ろうと考えたら100人以上を雇って、同じくらいの冒険者に護衛をさせながら行う必要があった。その時に必要となる金額を考えれば、この程度は安いものだ」


 本人が納得しているのなら俺から言うことはない。


「ありがたく頂戴します」


 受け取った金貨の袋を収納リングにしまう。


「では、ここからは遊ばせてもらいます」

「ほう」


 砂浜の目立つ場所に【建築(ビルド)】で造っておいた更衣室へと向かう。

 更衣室は一度に全員が着替えられるように大きめに造っておいたので余裕がある。

 去年サボナへ行った時に買った水着に着替える。


「仕事の話は終わった?」

「ああ」


 砂浜に差してあったビーチパラソルの下へ向かうとシエラを抱いたアイラが椅子に座ってリラックスしていた。


「お前は泳がないのか?」

「うん。あたしはシエラの面倒を見ているから」


 アイラも水着に着替えている。

 しかし、シエラがいるため今年は泳ぐつもりがないみたいだ。


 3日前、全ての作業を終えて屋敷へ帰ると寂しさに耐えかねたシエラが俺たちの姿を見るなり大泣きしてしまった。

 それから、というものアイラにベッタリ付いて離れようとしない。


「皆はもう遊んでいるみたいだな」


 朝の内に予定がなくて海へ来られる家族を全員連れてアイラたちを【召喚(サモン)】させてもらっていた。

 あれだけ苦労して作り上げた道の移動もスキルを使えば一瞬だ。


「遊んでいるけど、本当の目的はエリオットたちの護衛だからな」

「分かっているわよ」


 護衛の騎士がいるけど、彼らだけでは対処できない魔物が現れる可能性が捨て切れない。

 ただ、この状況で護衛まで買って出てしまうと騎士のプライドを傷つけてしまうことになる。


 そこで、遊んでいるフリをしながら護衛を継続する。


「さ、行こうか」

「あぃ」


 熱中症対策に麦わら帽子を被ったシエラを抱いて海へと向かう。

 泳ぐつもりはないが、シエラに海を見せてあげたかったので連れて来てあげた次第だ。


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