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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第17章 亡霊行進
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第11話 アンデッド対策

「では、これより明日に備えてアンデッド対策をしたいと思う」


 夕食後、ミシュリナさんの紹介してくれた宿屋で部屋を取る。


 この宿屋も彼女が懇意にしていた宿屋だった。

 国で重宝されている聖女であるミシュリナさんだったのだが、他国の冒険者であるグロリオを連れてくるなど時々出掛けてしまう癖があるらしく、そうして連れて来た相手を泊める為に使用している宿屋らしい。

 だが、聖女が紹介する宿屋だけあって警備は万全だし、隣の部屋に音が漏れないよう秘密も保護されている。


「今回は対アンデッドのエキスパートである聖女もいるから頼りにさせてもらおう」


 聖女がどれだけの力を持っているのか分からないが、それなりに信頼できるだけの実績があるのは間違いない。

 頼りにするとは言っても意見を聞いてもらうだけだ。


 食事をした時と同じメンバーを全員集めて対策会議を行う。


「まず、アンデッドにはどんな種類がいるか知っているか?」


 それぐらいはアンデッドと戦った事のある冒険者なら誰もが知っている。

 それに迷宮(ダンジョン)の説明をした時にどんな魔物がいるのかも説明しているので全員が知っていた。


「死人系と死霊系の二つでしょ」


 アイラが言うように分けるとしたら主にその二種類だった。


 死んだはずの人が生体機能は停止しているにも関わらず本能のままに動き回り、目に付く人を次々と襲い続けるゾンビやグール。

 亡くなったことで魂が肉体という器から解き放たれて霊体のみで活動している死霊系の魔物。


 死人系の魔物は、既に亡くなっていることから腕や足を1本斬り落としたところで動きを止めることがなく不死性が強くなっているので倒すのが厄介な存在となっている。


 死霊系の魔物は、魂だけの存在となったせいか生前よりも魔力が強くなっているパターンが多く、魔法を駆使した攻撃に注意しなければならない。


「以上の事を踏まえてアンデッドをどうやって倒せばいいのか?」


 魔物の討伐は適切な対処方法を知っているだけで効率が格段に跳ね上がる。

 そういう訳でどこまで把握しているのか確認しておきたかった。


「四肢を全部斬り落とす」

「えっと……首を斬り落とせばいいのではないですか?」


 アイラとシルビアの回答に言葉を失ってしまう。

 けれども間違っている訳でもない。


 死人は生きていた頃の名残なのか頭で物事を考えて行動するので胴体と頭部を切り離してしまえば動かなくなる。そして、動けない状態が続くと生命体としての影響が残っているのかアンデッドとしての機能も失われる。

 それは四肢を全て切り離して動けなくした場合も同じだ。


「そういう物理的な方法じゃなくて……」

「魔法で氷漬けにして動けなくする」


 物理的な方法じゃなくて魔法による攻撃。

 そういう問題でもない。


 もちろん俺たちの中で最も長く冒険者をしているイリスが知らないはずがないのでボケただけだ。


「光属性の魔法の中にアンデッドを浄化させる能力を持った魔法があるから、それで攻撃して浄化させる」


 浄化にさえ成功してしまえばアンデッドは死人系なら元の死体に戻るし、死霊系なら消滅させることができる。

 魔法なら広範囲にいるアンデッドを同時に消滅させることができるので魔法で倒した方が効率はいい。


 問題は、浄化魔法が希少だという事だ。


「イリスは使えるのか?」

「私は無理」

「でも、光属性には適性があっただろ」

「たしかに適性はあるけど、私の場合は水属性のついでにあるようなものだから水属性の回復魔法を強化するぐらいにしか使っていなかった。だから光属性の魔法は攻撃や浄化に使えるようなものは習得していない」


 使えたとしても威力の低い魔法になる。

 そんな魔法に頼るぐらいならもう一つの方法に頼るべきだった。


「もう一つの方法は浄化能力を持った武器でアンデッドを倒すこと」


 聖なる武器。

 代表的なのがアイラやイリスの持つ聖剣。


 聖剣には身体能力の強化などの効果以外にも浄化能力を持った光を纏うことができる能力がある。

 光を纏った状態で聖剣を使ってアンデッドを斬ればアンデッドの活動を停止させることができる。


「そういう訳で私がアンデッドと戦う時は聖剣を使って倒していた」


 威力の低い浄化魔法に頼るよりも聖剣に頼った方が確実だった。


「じゃあ、あたしも聖剣の力を使って倒せばいいんだ」

「使えるのか?」


 安易に考えていたアイラに確認をする。

 以前にメティス王国の王都にある迷宮へ挑んだ時にはアンデッドを中心に魔物を倒すことになった。その時に聖剣の力を使うようアイラに言ったのだが、魔法同様に苦手意識を持っているせいで上手く使うことができなかった。

 アンデッドの大軍を相手にするなら長時間の使用が必要になる。


「えっと……」


 俺に尋ねられたアイラが視線を逸らす。

 それだけで未だに苦手意識を持っているのは分かる。


「練習代わりにはちょうどいいだろ」

「まあ、がんばる」


 どうにも力強さがないので気になる。

 とはいえ、練習しなければ上達しないし、今さら迷宮で練習しているような時間はない。


「分かった。剣士二人の聖剣を使っての攻撃は魔法で一気に殲滅させた後に取っておくことにしよう」


 聖剣の力があればアンデッドも簡単に倒せる。

 だが、やはり多数のアンデッドを倒すなら魔法の方が効率はいい。


「メリッサは浄化魔法を使えるよな」

「問題ありません」


 静かにメリッサが頷く。

 彼女には全ての魔法に適性を与えてくれる【魔神の加護】というスキルがある。光属性に対して適性を与えてくれるスキルなのだが、その中に浄化に対する適性も含まれているので問題なく使える。


 後は俺も浄化魔法みたいな魔法を使える。


 迷宮の46~50階の神殿エリア。

 神殿エリアにいる『天使シリーズ』の魔物がアンデッドの来訪がないにも関わらず浄化能力を持った光属性の魔法を使うことができるので迷宮魔法での再現が可能になっていた。


 それに俺の装備している神剣。

 これは聖剣以上に強力な武器なのでアンデッドの浄化は近接戦闘でも可能だった。


「問題があるのはシルビアだ」


 剣士二人は聖剣。

 メリッサと俺には光魔法がある。


 ただし、シルビアにはそのどちらもなかった。


「そこで新装備を渡そうと思う」

「いいんですか?」


 新しい装備を渡されると聞いてシルビアが立ち上がる。

 しかし、どういう事なのかすぐに分かってベッドに腰を落ち着かせる。


「いえ、やっぱりいいです」

「気にする必要はないぞ」

「わたしだけ新装備を渡される訳にはいきません」


 新装備の調達は迷宮の魔力を使って行われる。

 シルビアだけ贔屓している事になりかねないので遠慮しようとしている。


「これはパーティを活かす為に必要な事だ」


 シルビアだけアンデッドに対抗できる術がない場合には誰かが守る必要がある。

 それに彼女にも戦って貰わなければならない事態が来ないとも限らない。王都の迷宮で戦った時は、戦う力を持たない騎士たちの護衛に回ってもらっていたが、今回は相手の数が多いのでこちらも戦力を温存している余裕がないかもしれない。

 何らかの戦う術は絶対に必要な事だった。


「という訳で、この中から好きな物を選べ」


 シルビアの前に透明な板状の画面を表示させる。


 表示された画面には様々な武器が描かれていた。

 迷宮の力で生み出すことのできる武器の一覧なのだが、最低限必要な機能として浄化能力を持っていることとシルビアの速さが打ち消されない軽めの武器、という条件で絞り込んだ一覧だ。


 これから使う武器なのだから好みもある。

 迷宮の魔力は気にせず自分で選ばせたかった。


「方針としてはこんなものでいいだろう」


 俺とメリッサの魔法でアンデッドを一気に浄化する。

 その後、魔法の範囲から外れてしまっていたアンデッドがいた場合にはアイラとイリスを中心に討伐してもらう。

 シルビアには万が一の場合のサポートに回ってもらう。


「そうですね。正直言って迷宮主の力が規格外だというのはグロリオ様で理解していますので、もしかしたら最初の浄化魔法で終わってしまう可能性もあります」

「まさか」


 けれども、そっちの方が簡単なのも間違いない。


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