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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第14章 迷宮踏争
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第12話 迷宮攻略挑戦

 帝都の中心にある広場。

 大都市の中にあって異彩を放つ神殿の中に入る。


 その神殿の中央には縦穴があり、壁に沿うように螺旋階段が設けられていた。


「この下に迷宮の入口があります」


 螺旋階段の前には冒険者が並んでいた。


「この迷宮は、帝都の中心にあるので万が一に迷宮内の魔物が暴走した時に備えて入口を深い場所に作ってあります。さらに地上までをこのような狭くする事で大型の魔物が出入りできないようにしています」


 それだけではない。

 神殿には不浄な者の行動を著しく制限する為の結界としての機能が施されており、魔物が暴走した時に備えられていた。


「まあ、迷宮主が反乱を企てた時には無意味なのですけどね」


 全ては一般には伏せられた情報。


 たとえば地上で魔物を暴れさせたいならわざわざ迷宮の入口から出す必要なんかない。召喚を使えば、いくらでも地上へ移動させる事ができる。魔物の行動を阻害する効果が神殿にはあるみたいだけど、不浄ではない魔物――天使型の魔物を使えば神殿の破壊は容易だ。


 冒険者をしていた頃は、カトレアさんたちも神殿の力を信じ切っていたらしいので一般人に対する効果は間違いなくある。

 単純に迷宮主が反乱を企てるような状況にならなければいいだけだ。


 神殿について色々と話している内に俺たちの順番がやって来た。


「お、久しぶりだなカトレア」

「こんにちは」


 迷宮の入口で対応してくれたのは30代ぐらいの男性だ。


「今日はリオの奴はいないんだな」

「リオ様は、所用があってメティス王国の方へ行っています」

「で、別の男を捕まえたのか?」

「違いますよ。リオ様にお願いされて帝都の迷宮まで来てくれたメティス王国でも有力な冒険者です」


 男性が俺の事を上から下まで見て来る。


「あまり強そうには見えないな……」


 次いでシルビアとメリッサを見ると納得していた。


「お前らの所と同じでパーティメンバーの女の方が強いパターンか」

「何を言っているんですか」


 カトレアさんが受付の男性と談笑している。

 冒険者カードを見せるだけで特に問題もなかった。


「探索する階層は?」

「俺たちがこの迷宮へ挑むのは初めてなんで1階からです。どこまで潜るのかは分かりませんね」

「分かった」


 こういった事前の申請は必要だ。

 冒険者が何日も帰って来ないような事があれば探索していた階層で下手な事をしてしまったか、階層に異常が発生していたせいで倒されてしまった可能性が考えられる。異常が発生していた場合にはすぐに対応しなければ冒険者の間で被害が甚大になる可能性があるので適切に対処しなければならない。


 これは、倒された冒険者の為ではなく今後に冒険者の被害を出さない為の措置。


 酷なようだが、自己責任である冒険者が被害に遭ったからと言って冒険者ギルドで手厚く対応するような事はない。だが、これ以上の犠牲者を出さない為には適切な対応が求められる。

 だから探索目的の階層を聞くのは必要になっている。


 とはいえ、初めての迷宮挑戦なので1階からしか探索できない。


「ですが、最近の構造変化から既に10日以上が経過している。どんな依頼を引き受けたのか知らないが、目ぼしい素材なんかは既に狩り尽くされた後だぞ」

「今回の依頼は私用なものです。気にしない方が身の為です」

「おお、こわい……」


 実際、深入りしようとした受付の男性を睨むカトレアの視線は鋭かった。

 俺たちにとってはどうにでもなるようなレベルの殺気だが、戦闘力に乏しいギルド職員や一般人にとっては逃げ出したいほどの殺気だ。そういう意味では、逃げ出さずに怖がっているだけの職員は優秀だ。


「付いて来て下さい」


 洞窟のような入り口を抜けるとアリスターの迷宮と同じように洞窟の道が広がっていた。入り口傍に転移結晶があるのも同じだ。


 カトレアさんに従って少しだけ進むとカトレアさんが壁に向かって手を掲げると新たな道が出来上がっていた。

 この場所でなら内緒話をしても問題ない。地下1階なんて初めて迷宮へ挑む新人しかいないので元から人が少ない。そして、地図にも記されていない場所まで新人は気を配っていない。


「では、改めてルールを確認させていただきます」

「お互い同時に迷宮へ挑むという事だったけど、俺たちは入っていてもよかったんですか?」

「これぐらいは問題ありません。アリスターの迷宮と違ってグレンヴァルガ帝都の迷宮は人目に付きやすい場所にあります。入り口の外で待機していると目立ってしまいます。こちらは外で待機していても待ち合わせだとでも思って頂けると思います」


 という事は、リオたちは迷宮の入口で待機しているのか。


『イリス』

『はい』

『迷宮の入口にリオたちがいるみたいなんだけど、いるか?』

『たしかに他の冒険者を待ち合わせしているみたいな感じでいる』

『だったら迷宮に入ってもらえ。さすがに帝都と比べて人目が少ないとはいえ、何もない場所で立っていたら目立つ』

『じゃ、アイラ』

『りょうかい』


 念話でイリスとアイラに向かえに行くよう指示を出す。

 すぐにアイラが立ち上がって迷宮の中へと入れる。カトレアさんと同じようにイリスが迷宮操作を使用すれば人目に付かない小道が出来上がる。


 アイラにはそのままリオたちの案内をお願いする。


「ありがとうございます」

「これで条件は対等になりました」


 あくまでもこれは競争。

 お互いの条件は対等でなければならない。

 俺たちだけ迷宮に入った状態でのスタートはフェアではない。


「今から5分後、お互いにスタートすることになります。数秒のフライングなど意味がないかもしれませんが、不正をしていないかどうかはお互いの眷属が分かるはずです」

「そうですね」


 周囲を警戒していたシルビアが頷く。

 ここは既に敵のテリトリー。条件を対等にするつもりだが、何があるか分からない。


「そこまで警戒しなくても大丈夫です。普段とそれほど変わらないトラップや魔物しか用意していませんから」

「不正をしないとは信じていますよ」


 ここでフライングをしてもカトレアさんたち3人を通して即座にリオへ伝わってしまう。

 逆にリオたちがフライングをした場合でもイリスから即座に報告が入るように打ち合わせをしている。


 すぐにバレるような不正に意味はない。


「貴方方がスタートしたら私たちは迷宮の最下層へと移動させていただきます」

「そもそもここで待機している理由は何ですか?」


 メリッサが質問する。

 アリスターの迷宮でない以上、俺の迷宮操作はこの迷宮ではカトレアさんの迷宮操作ほどの効果を発揮する事はない。そういう意味では、小道を作ってくれたのはありがたいが、俺たちをここに隠した時点で最下層へ行っても良かったはずだ。


 イリスがしているように迷宮の最下層からでも監視は可能だ。


「単純なおもてなしです。私たちの方から案内したというのにこのような場所で別れてしまっては皇族としての品位を疑われます。出発する瞬間までは、ここで御見送りさせていただきます」

「そうですか?」


 あまりに気にし過ぎだ。

 そもそも皇族としての品位を気にするなら迷宮まで付いて来た時点で間違っているような気がする。


 それにここは迷宮を抱えた冒険者ギルド。入り口前でのギルド職員の反応や宿屋の主人の対応から即位前のリオについては知られていない可能性が高いし、その妻たちの顔なら知られていない可能性はもっと高い。


 何かもてなしとは別の理由がある。

 メリッサも俺と同じ結論に至ったのか俺と視線が合うと頷いていた。


 しかし、気にしたところでどうにかなるようなものでもない。現在の状況では判断するには情報が不足している。

 それに時間もない。


「10秒前です」


 迷宮操作で作り出した小道から出る。

 目の前には迷宮の奥へと続く道。


「『スタート』」


 きっかり10秒後、スタートを告げるカトレアさんの言葉と頭の中でイリスの言葉が同時に重なる。


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