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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第40章 冒険参観
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第6話 騒がしい再会

「部屋を一つ貸してもらえますか?」

「あ、はい!」


 マルセラさんに頼んで会議室の一つを貸してもらう。

 これも高ランク冒険者の特権の一つだ。


「それで、どうしてあのようなことを……?」


 エルマーが言っているのは先ほどの俺の発言。


「その前に煩い奴らがいるんで会ってもらっていいか?」


 会議室の床に魔法陣が描かれると、すぐにシルビアを始めとしたアイラ以外の眷属が姿を現す。


「わぁ、久し振りね」

「ははっ」

「さっきから自分たちも会わせろってうるさいんだよ」


 念話でガンガン話し掛けてくるものだから煩くて仕方ない上、周囲の人たちには事情を共有してもらうことができない。


「本当に大きくなって……本当に大きくなってる」


 シルビアが改めて正面に立つエルマーをしっかり見ようと目線を合わせようとしたところで、自分が見上げる形になっていることに気付いた。


「シルビアさん!?」


 思わずガクッと項垂れる。


「旅立つ前はわたしよりちょっと小さかったのに……」

「アリスターを離れて少しした頃に成長期が来てくれたおかげで大きくなったんですよ。やっぱり剣を振るなら体は大きい方がいいですからね」

「う、ショック……」


 衝撃から立ち直れそうになかった。


「どうしたんだ、シルビアは?」


 小声でアイラに尋ねる。


「ああ、あの子は地味に自分の身長を気にしていたじゃない?」

「まあな」


 眷属の中で最も身長の低いシルビア。

 正しくはノエルの方が頭頂部までなら若干低い。だが、狐耳をピンと立たされてしまうとシルビアよりも高くなってしまうため彼女としては自分が一番低いという評価をしていた。

 そうして、最後に会った時は自分よりも低かった子供のように思っていた相手が自分よりも高くなってしまった。


「そんなに気にすることか?」

「あの子にはショックだったんでしょ」

「あ、わたしに任せて」


 シルビアに近寄ったノエルが抱き起して椅子に座らせている。


「子供に身長を追い抜かれるのがこんなにショックだったなんて知らなかった。これをアルフの時にもあるかもしれないと思うと……」

「もしかしたらソフィアちゃんにも抜かれるかもね」

「あ、あの子はわたしに似ているから身長も低いだろうし……」

「そんな悲観的な事を言ってどうするの」


 未だにショックを受けている状態にノエルが呆れていた。

 そっちはまだいい。


「ふかふか」

「ふふっ、甘えん坊さんですね」


 抱き着いてきたジリーをメリッサが優しく抱き返していた。

 魔法をメリッサから教わったため自然と懐いてしまっていた。


「ただ、これは羨ましいです」


 満面の笑みを浮かべていたのに急に鋭い視線を正面に向けていた。

 憧れからメリッサのようになりたかったジリー。だが、容姿の方はメリッサに似ず小柄になってしまった。

 高い身長と大きな胸を成長が止まってしまった今だからこそ羨ましく見ていた。


「……そろそろ本題に入りましょうか」

「そうだな」


 長いテーブルの片側にエルマーたち4人が座り、反対側に俺たち6人が座る。シエラとリックは俺とアイラの膝の上にいる。

 二人とも難しい話を聞いても理解できないため既に眠たそうにしている。


「お前たちがパレントに来た理由は聞いた。その後の事を教えてくれ」

「はい--」


 エルマーたちがパレントに辿り着いたのは3日前の昼前。

 初日はギルドへの挨拶だけで宿の手配や町の状態を確認する為などに時間を使うつもりだったので、そのような時間を狙っての訪問となった。


 その時に応対してくれたのがマルセラさん。唐突に訪れたBランクの冒険者、高ランクの冒険者にしては若く最初は疑ったものの冒険者カードは本物。

 マルセラさんはエルマーたちを応援の人員だと判断した。


「パレントの迷宮で問題が起きていることなんて知りませんからマルセラさんの話を聞いてしまったんです」


 性格的に聞いてしまった問題を放置することなどできなかった。

 心優しい彼らしい判断ではあるものの許容を越える問題にぶつかった時が恐ろしくなる。


「で、依頼も引き受けることにしたと」

「はい」


 初日はパレントでの拠点の確保。

 二日目は情報収集に精を出した。

 昨日は、集めた情報を元に上層部分を探索して齟齬がないことを確認した。


「ホヴァさんは優秀ですね。きちんと必要な情報を集めてくれていました」


 少しばかり素行の悪いところが目立ってしまうものの優秀であることには間違いがなく、パレントを拠点にしているという責任感もある。


「それに比べて他の二組はダメですね」

「そう言えば、他にもいるんだったな」


 Bランク冒険者のアルバは、以前は騎士だったが問題を起こして冒険者になった経緯がある。そういった経歴から自分も同じ冒険者であるにもかかわらず他の冒険者を見下した傾向がある。


「ですが、騎士だったこともあって能力は問題ありません」

「ただ、冒険者としては異端と言っていいんです」


 彼らが攻略する様子を見ていたジェムとジリーによると、アルバのパーティは兵士のように統一された装備を身に付けた者で固められていた。

 まるで騎士団のような状態で敵に突撃すると問題なく屠っていく。

 騎士だったアルバに指揮されていることから本当に騎士団に見えたらしい。


「それは、何階の話だ?」

「地下7階での話です」

「迷宮の構造に変化は?」

「大きくはないみたいです」

「アホだろ」


 それほど広くない洞窟の通路でそのようなことをすれば通路を塞いでしまうし、場所によっては全員が横一列に並ぶことができなくなってしまう。

 人数を集める戦術など狭い場所で行うべきではない。


「兵士の人たちも文句なく従っていたのが不気味だったんです」

「どうやら数の多い魔物の群れを相手にした功績があるらしく、詳しい情報を知らなかった冒険者ギルドが呼び寄せてしまったらしいんです」


 迷宮には魔剣を武装したスケルトンが集団でいる。

 対抗する為に数多くの魔物を相手にすることに慣れた者を呼びたかったのだろう。


「詳しく調べてみたところ、平地での戦闘には慣れているみたいですけど、洞窟のように狭い場所での戦闘には慣れていないみたいでした」

「地下21階以降に行ければ活躍できるのかもしれないけど……」

「期待できませんね」


 到達することはできるだろう。

 だが、昨日の時点で地下7階では攻略はかなり遅いと判断した方がいい。人数を集めた弊害が出たパーティだ。


「もう一組にも何かしら問題があるんだろ。で、お前はどうするつもりなんだ?」

「既に迷宮が正常に機能しなくなって1カ月が経っています」


 長時間も今の状態にしておくのは街にとって問題だ。


「なるべく早期での解決を目指します。幸いにして情報が正しかったことは分かっていますし、地下7階まで行くことは問題なくできました」


 アルバのパーティに邪魔されて、先へ進むことができなかった。

 元より昨日は情報の精度、それから簡単に自分たちでも確認しておくことが目的だったため問題なかった。


「無茶な冒険はしない。俺たちの教えは守られているみたいだな」

「はい。自分たちの命があってこそです。時には冒険をしなければならないことはあるかもしれませんが、命を担保にするような真似をするつもりはありません」


 それが実践できたからこそエルマーたちは生き残ることができた。


「ただ、僕たちとしては魔剣を持った魔物と戦ってみたかったのですが、遭遇することができなかったのでパレントの魔剣、という物がどういう物なのか調べてみたんです」


 俺たちがギルドを訪れるまでしていた作業。

 それが一段落したので休憩する為にも外へ出たところで遭遇してしまった。


「真っ先に出てきたのが15年前の事件でした」


 エルマーに知られてしまったことに気付いてアイラが身を小さくする。


「あの事件の当事者がアイラさんですね」


 賢いエルマーは察してしまった。

冒険者ギルドには過去に起こった事件の記録なども残されています。

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