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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第40章 冒険参観
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第7話 親は親、子は子

 アイラにとってエルマーたち庇護下にある子供たちは間違いなく自分の子供として育てていた。

 そんな子供たちだからこそ自分が犯罪者の子供だと知られたくなかった。たとえ事情があったとしてもマックスさんが多くの人を殺めた事実は変わらない。


「……」


 否定も肯定もできない。

 心情としては否定してしまいたいところだが、事実であるだけに肯定するしかない。


 長い沈黙が続く。

 ……が、そんな沈黙を打ち破ったのはリックだ。


「おといれ」


 アイラの膝の上からピョンと飛び下りると部屋を出て行こうとする。

 誰もが唐突な行動に何も言えなくなる。


「まって」


 大人がそんな状況なのだから真っ先に動いたのは子供である姉のシエラだった。


「いっしょにいこ」

「うん」


 二人が手を繋いで部屋の外へ出て行く。


「いやいや、マズいですよね!? 二人だけで出て行っちゃいましたよ」


 ジリーが目の前で起こった出来事に慌てている。


「ちょっとトイレに行くぐらいだ。大丈夫だろ」

「心配なので、私も一緒に行きます!」


 部屋を出て行く。

 本来なら親のどちらかが同行するべきなのだろうが、今のアイラはそのような精神状態ではないため離れる訳にはいかなかった。

 それにシエラが一緒にいれば大きな問題も起こらない。


「軽蔑した?」

「何故ですか」

「え……?」


 ようやく絞り出された言葉。

 アイラとしては犯罪者の娘ということで軽蔑されるものだとばかり思っていた。だから自分の故郷がパレントであることすら黙っていた。


「親は親。子供は子供ですよ」

「そうかな? それでもお父さんが酷い事をしたのは事実で、あたしが娘なのは変えようのない事実じゃない」


 ずっと心の中にあった想い。

 俺たちに出会うまではきっかけとなった魔剣をどうにかすることを使命としていたから耐えられた。それも魔剣が完全に破壊されてしまったことで解放され、再び罪悪感に苛まれることとなった。

 抱えてしまった手放すことのできない想い。

 こうして問題に強く直面した今だからこそアイラの口から想いが言葉となって零れてしまった。


「アイラさんの気持ちは分かります。僕だって父親が犯罪組織の頭領ですから」

「あ……」


 グリーソン一家という犯罪組織の率いていたのがエルマーの父親。と言ってもエルマー自身は父親に会ったことがなく、その存在を知ったのは全てが終わった後からで、色々とあった末に俺たちと出会って引き取られることになった。

 アイラよりも厳しい立場にいたのがエルマー。

 それでも子供には罪がない、ということで許されて無事に成長できている。


「それに、街の人たちだって好意的に迎えてくれているのでしょう」


 魔剣に関する事件を調べたなら、その後にアイラが戻って来た後で起こった事件についても知っている。

 もし、アイラを拒絶するような街だったなら見捨てていた。

 その辺の判断を俺がすることをエルマーは分かっているから予想できた。


「それに、アイラさんがどんな人だったとしても俺たちの母親であることには変わりありませんよ」


 立ち上がったジェムが叫ぶように伝える。


「親の顔すら覚えていない俺とジリーにとっては皆さんこそ親なんです。あなたたちがどんな人だったとしても、それは絶対に変わることのない事実です」


 気付いたら孤児になっていたような状況だったジェムとジリー。

 二人とも親がいたはずなのだが、親に関する記憶を全て失っていた。


「それに酷いのは俺やジリーの方です。だって、魔剣騒動について調べるまで故郷の事を全て忘れていたんですよ」

「そういえば、お前らにとっても故郷なんだよな」


 ジェムとジリーは、リュゼによる魔剣騒動が再び起こった時に引き取った。


「たぶんアリスターへ行ってからの生活が幸せだったから忘れていたんだと思います。ここでの生活は辛い事ばかりで、忘れたいと常々思っていましたから」


 そうして幸せを得たことで故郷の事をすっぱり忘れてしまった。

 故郷の名前を聞き、久し振りに訪れても実感が湧かなかった。

 故郷だと知ったのは客観的事実を教えられた瞬間。さすがに調べれば二人は自分たちが事件の当事者だったことを思い出す。


「こんな幸せにしてくれたあなたが卑屈にならないでくださいよ。俺たちの憧れで在り続けてください!」


 不幸だった自分たちを幸せにしてくれた人物に抱いた憧れ。

 それは、当人であっても否定することを許さない。


「いいわ! こんなつまらない依頼はさっさと終わらせることにしましょ」


 アイラもやる気を取り戻してくれたみたいで作戦会議が続けられる。

 エルマーたちも今日手に入れられた情報を元に攻略作戦を立てて明日から攻略を再開させるつもりでいた。

 既に地下6階まで攻略を終えているため7階から再開させることができる。


「転移結晶は使えなくなっているんだよな」

「正確にはリセットされています」


 再び地下1階から攻略を行う必要がある。

 そうして転移結晶に触れることで再び利用することができるようになる。


「地下7階までがどうなっているのか教えてくれ」

「いいですけど、どうするつもりですか?」

「まずは、お前たちに追い付く」


 先を進む四人に追い付く。

 せっかく攻略しているのだから俺たちに付き合う必要もない。


「まず、地下1階から10階までは洞窟が続きます。これはアリスター迷宮と同じですね」

「だろうな」


 迷宮が必要とされた状況を考えれば仕方ない。


「ゴブリンやスケルトンといった数を揃えるのに魔力が必要とされない魔物が奥から現れます。魔物そのものは脅威ではありません。ですが、現れる魔物の全てが魔剣を所有しています」

「どういう状況だよ」

「僕たちは戦闘を極力避けることにしました。洞窟なんていう狭い場所で、一度に十数体もの魔剣を装備した魔物に襲われれば厳しいですからね」

「苦戦したのか?」


 狭い場所では数を頼りにした戦術は有効に働かない。


「彼らは仲間の犠牲を厭わずに攻撃してくるんです」


 最初は魔剣を装備しているものの相手がゴブリンということもあって楽に倒せるだろうと考えていた。

 エルマーたちの実力なら間違った判断ではなかった。

 魔剣を装備した4体のゴブリンが剣で攻めるエルマーとジェムの攻撃を防いでいた。そうして戦っている間にディアが洞窟の壁を駆け抜けて後ろにいるゴブリンの不意を衝いて倒す。


「その予定だったんですけど、後ろにいた8体のゴブリンが魔剣から炎や電撃を放出したんです」


 洞窟という狭い空間では逃げ場のない攻撃。


「どうにかジリーの障壁が間に合ったから助かりましたけど、威力が十分に高い攻撃でした。もしも、ゴブリンだと舐めた冒険者だったなら一撃で倒されていた可能性が高いです」


 おそらく、それが帰還者の少ない理由だろう。

 だが、油断なく攻略を進めていたエルマーたちには通用せず、逆に魔剣による攻撃が成功したことで油断しているゴブリンたちを仕留めた。


「恐ろしいのは僕たちの足止めをしていたゴブリンです。後ろから攻撃されたことで倒されました。ですが、攻撃される瞬間まで笑っていたんです。自分たちの命よりも敵を倒すことを優先させていました」

「それは魔物らしからぬ行動だな」

「はい。ですが、それ以上に厄介なのが敵の持っていた魔剣です」


 戦闘のあった場所には魔剣が一切落ちていなかった。

 その後、探索を続けていると同じように魔剣を持った魔物と遭遇し戦闘をすることになった。


「同じ効果を持った魔剣を持った奴と遭遇した訳じゃないのか?」

「そうではありません。編成が全く同じでしたし、僕のつけた傷が魔剣に残されていました」


 同じ魔剣が使用されている。

 その事実を把握した瞬間、エルマーは戦闘を避けて進むようにした。同時に魔剣の回収も諦めた。


「――その辺の謎も解明する必要があるな」


 とりあえずはエルマーたちとの合流だ。


「ところで、ジリーたち遅いですね」


 トイレにしては長すぎる。


「大方ギルドの外へ遊びに行っているんだろ」

「え、大丈夫なんですか?」


 エルマーの中でシエラの成長は5歳の頃で止まっている。

 だが、最近のシエラはお使いにも行ってくれるし、お小遣いをあげているのでお金も持っている。


「ここでの話がやっぱり退屈になって遊びに行ったんだろ」


 気配を探れば外にあった。


「過去の事件を知ってシエラが加害者の孫なら狙われるんじゃないかって心配していたんですけど、お二人が落ち着いているなら大丈夫なんですね」

「いや、そんなことはないぞ」


 既にパレント家の執事に襲われた件を説明する。


「そんな状況で外に出て行くのを黙認したんですか!?」


 襲ってくれ、と言っているような状況。


「あんまり子供を縛り付けるのは好きじゃないんだよ」

「身の安全はきちんと保障しましょうよ!」

「本当に問題はない。そりゃ俺たちが一緒にいれば臆して襲ってこないだろうな。もし、シエラを襲うようなら奴らは後悔する。けど、リックを襲うような後悔する暇すらないだろうな」


さすがに亡くなった父親にのみ向けるべき憎しみを子供にまで向けるのはダメでしょう。

さらに祖父に会ったことのない孫なら尚更関係ない。

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― 新着の感想 ―
[一言]  パレントの領主家に傷と泥を付けまくる彼には破滅が約束されますなぁ。
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