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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第37章 暴走迷宮
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第48話 デモンプラント-前-

 イルカイト迷宮地下11階。

 ハイタンクワームの溶解液によって草が溶かされたことで周囲に腐臭が満ちる。あまり、この場に留まっていたくない。


「さっさと離れよう」

「方向は分かっているの?」


 今いるのは草原の中心。

 この草原のどこかに転移魔法陣があり、次の階層へ行けるようになっている。そこを目指す必要があるのだが、攻略情報も持たずに最短距離を進むなど不可能だ。


「当然だろ」


 ハイタンクワームが飛んで行った方とは反対へ歩き出す。

 既に【地図】で草原の状況は手に取るように分かっている。だからこそ、安全に進めるよう進行方向とは反対方向へハイタンクワームを投げ飛ばした。


「今なら安全に進めるだろ」


 腐臭のせいで魔物も近寄ってこない。遠巻きに眺めているだけだ。


 ミシミシッ!


「また地震もどきかよ」


 溶解液で満ちた場所から音が聞こえる。

 先ほどの洞窟を震わせる音とは違うが、大型の魔物が移動したことによる音だと判断して振り向く。


「……どうやら、大きくなっている最中のようですね」


 メリッサが空を見上げる。

 地面を割って樹かと思うほど太い1本の茎が現れた。天頂部には丸い真っ赤な花が咲いており、地上にいた俺たちの事をパックリと開いたギザギザの歯が生えた口を大きく開けながら見る。

 体長20メートルの花形の魔物。


「ケケケケケッッッ――!」

「笑っている……」

「それに、どうしていきなり現れたの!?」


 アイラが言うように花の魔物――デモンプラントはいきなり現れた。


「いいえ、違います。いることに気付けなかったんです」


 だが、全員が気付いていない中でシルビアだけはデモンプラントの気配に気付いていた。


「少し前まで手に乗る程度の大きさしかない魔物でした。ですが、溶解液を浴びた直後ぐらいから体に変化が起こったんです」

「気付いたら、どうして言わなかったんだよ!」

「浴びてから本当に数秒の出来事だったんです。わたしだってデモンプラントがここまで大きくなるなんて思わなかったんです!」


 デモンプラントは地面を割って現れた訳ではない。元々いた場所で巨大化したために地面が耐えられずに割れてしまっている。


「溶解液を浴びて巨大化……もしかしたら、ハイタンクワームの養分を吸収されてしまったのかもしれない」

「げっ、ただでさえ奴からは碌な素材が得られなかったっていうのに倒した後でも問題を引き起こすのかよ」


 イリスの推測にげんなりする。一番簡単な方法だから、と選んだ倒し方だったが最悪の事態を招いてしまったかもしれない。

 だが、相手が花の魔物なら有効な手段がある。


「メリッサ、よろしく」

「先ほどは出来なかった分、強めに焼きます」


 メリッサの手から放たれた炎がデモンプラントに当たり、あっという間に燃え広がっていく。

 植物の魔物なら炎が弱点。

 炎で包んでしまえば直に倒すことができる。


「いえ、残念ながらそこまで簡単ではないようです」

「何を言って……」

「笑っています」


 指摘されてデモンプラントを見る。

 たしかに体が燃えているというのに笑っている。


「目の前にいるデモンプラントも普通のデモンプラントではないようです」


 炎に包まれながら茎を首のように動かして自分の体へ口を向ける。

 そうして、口から吐き出した黄土色の息が炎を吹き飛ばしていく。


 軽く焦げているもののダメージなんて受けていないように見えるデモンプラントが俺たちを見ながら笑う。


「なら、次の弱点を突かせてもらうことにしよう」


 植物の魔物は、相手を毒に冒させたり、花粉で痺れさせたりすることができる。

 先ほど炎を吹き飛ばす為に吐き出した黄土色の息も、おそらくは相手に毒を浴びせる為のスキル。


 効果も強力だ。だが、そんな強力なスキルも当てられなければ意味がない。


「……先へ行こう」

「え、無視して行くの?」

「俺たちが戦う必要なんてないだろ」

「けっこう貴重そうな素材が手に入りそうなのに」


 地に根を張って立っているデモンプラント。

 足がなければ移動することもできない。

 巨大化し、強くなったデモンプラントからなら貴重な素材も間違いなく手に入るだろうが、避けられる戦闘なら無理にする必要はない。


 デモンプラントの事を惜しそうに見ていたアイラを連れて先へ進む。


 ――ミシミシッ!


「はぁ!?」


 背後から聞こえてきた嫌な音に振り向く。

 すると、デモンプラントの体が地中に埋まって見えていなかった根に支えられて持ち上げられていた。茎よりも太く、頑丈に思える根が何百本と根元から生えて足の代わりを生えていた。

 今も新しく1本の根が生成されたところでデモンプラントの体を支えていた。


「違う。最初からあったんじゃない!」

「どういうことだ?」

「きっとデモンプラントは動くことを願ったんだ」

「まさか、俺たちを追う為にか!?」


 離れて行く敵。

 どうすればいいのか考えた末にデモンプラントの辿り着いた結論が『足を手に入れる』ことだった。


 だが、植物であるデモンプラントに人間みたいな足が生えてくるはずもない。

 そこで、根が代わりを果たすことになった。


「逃げろッ!」


 奇声をあげながらデモンプラントが迫って来る。

 ハイタンクワームの時と同じように背を向けて走り出すと、後ろからデモンプラントが追い掛けてくる。


「どうすればいいの!?」

「今、考えている!」


 普通の方法では……炎で焼くような手段ではデモンプラントを倒し切ることができないのは証明された。


「いえ、そんなことはありませんよ」

「本当か!」

「それこそ周囲一帯を焼き尽くすような威力の魔法を使えば戦闘不能に陥らせることは可能だと思われます」

「却下だ」


 威力を強くすればするほど魔力の消費は大きくなる。

 草原を荒原に変えてしまうほどの威力を出されてしまうとメリッサが使い物にならなくなってしまう。

 可能なら別の手段を考えたい。


「で、その方法は?」

「……」

「ないの!?」

「仕方ないだろ! この迷宮へは初めて入ったんだから、何があるのか知らないんだから作戦を立てることもできないんだぞ」


 今は地図を参考にして罠がある場所を避けるのが精一杯。

 踏み付けた瞬間に落とし穴が生成される罠を踏んでも人間を相手にした時を想定した罠であるためデモンプラントの体よりも一回りどころか二回り以上も小さな穴が生成されるだけに終わる。

 爆発を起こす罠を踏んでも根の1本を吹き飛ばすだけに終わる。


「……走りながら考えよう」


 慌ただしく迷宮を奥へ進む。

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