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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第37章 暴走迷宮
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第24話 モンストンの秘密研究所

 軍事都市モンストン。

 分厚いはずの外壁は、シャルルの攻撃によって南側が崩壊しており、ガルディス帝国軍は北側へ回り込んでから入る必要があった。


 その後、連れてきた【土】魔法使いの手によって外壁が補強された。

 しばらくは外からの襲撃を気にする必要がなくなったため体力が残っている者が率先して都市内にいた魔物を討伐している。


 都市内にいるのはオーク。倉庫に残されていた食料を貪っており、夢中になっていて兵士の存在に気付かず奇襲を受けるようなオークが相手なら兵士たちでも十分対処することができる。俺たちが態々出張る必要はない。


「ホランド将軍」

「ん、君たちか」


 疲労によって倒れた兵士たちを収容した施設で指揮を執っていたホランド将軍。

 そこへシルビアとメリッサを連れ、ホルクス将軍や側近といったグレンヴァルガ軍の幹部と共に訪ねる。


「案内してほしい所があります」

「それは……?」

「シャルル・サクリーナのいた場所です」

「……!!」


 錬金術師だったシャルルが研究をしていた施設がモンストンにはある。

 外壁の上で俺たちの到着を待っていたシャルル。だが、彼女には全く別の目的があったようで、俺たちへの攻撃はあくまでもついでだったはずだ。


 なら、彼女がここで何をしていたのか。

 考えられる可能性は一つしかない。


「……ついてこい」


 護衛に二人の騎士を連れてホランド将軍が歩き出す。

 人数が少ないように思えるが、これから案内される場所は軍の中でも最重要機密であり、皇帝の命令によって闇に葬られた場所。味方であっても、よほど信頼できる人物でなければ伴うことができない。

 そんな場所へ部外者である俺たちを案内する。本来なら拒否したいところだろうが、ここに至ってそんな事を言っていられないことは彼にも分かっている。


 迷いない足取りで都市の北へ歩いていく。


「てっきり南側にあるものだと思っていたんだけど」


 モンストンは、グレンヴァルガ帝国に対抗する為、という名目から軍事施設が南側に集中しており、北側には軍事施設で働く者たちを支える為の商業施設が軒を連ねている。


「表沙汰にはできない施設だ。軍と関係のある場所に用意する訳にはいかなかったんだ」


 案内されたのは軍事施設から500メートルほど離れた場所にある倉庫街。

 そこにある倉庫の一つへ入ると、壁に掛けられていたパネルを何度か操作する。すると、床の一部がスライドして地下への入口が現れる。


「こんな場所が……」

「知らなかった」

「あまり言い触らすなよ。今後どうなるのか分からないが、公表していいような場所じゃないのは間違いない」


 地下へと進む。

 人が入って来たことを感知して壁に掛けられた魔法道具が光を放つ。


「……妙だ」

「妙、というのは?」

「施設に人がいない」

「それは放棄された施設ですから」

「それは、違う。魔物の襲撃があった時、ここにいた研究員たちはそのままにされていたはずだ」


 下手に外へ出るよりも地下にいた方が安全。

 それに、本来ならモンストンにいないはずの人たちだったため避難時の混乱があっても外へ出す訳にはいかなかった。


「緊急時の対処方法の一つだ。地上への唯一の出入口は完全に封鎖されるような仕組みになっている」


 シャルルが携わっていた研究のように非合法なものが多い。

 場合によっては全てを地面の下へ埋めてしまうつもりだったのだろう。


「出入り口には緊急時用のロックが掛かったままになっていた。中には食料も保管されているから数日は余裕だし、数週間はやり繰りすれば生きられるはず」


 だから、ホランド将軍は中で研究員が生きていると思い込んでいた。

 しかし、人に反応して光る灯りが全くついていないということは研究員はもう施設内にいない、ということになる。


「いいえ、もう一つ可能性があります」

「ホルクス将軍?」

「そうだな。ホランド将軍」

「……全員が死亡していた場合だ」


 灯りが反応するのは『生きている』人間。

 なら、全員が死んでいれば灯りが反応することはない。


「……どうやら、その推論は正解みたいです」


 奥から漂ってくる血の臭いに顔を顰める。

 この臭いは数人分なんていうレベルじゃない。


「施設には何人がいました?」

「私の記憶がたしかなら61人」


 けっこうな人数がいたらしい。


「うっ……」


 臭いを辿っていくといくつものテーブルが並べられた広い部屋に辿り着いた。

 そこに全員が集まったところを狙われてしまったのか全員が矢で射られて絶命していた。しかも、威力の高すぎる矢で攻撃されたせいで頭部の上半分を失った状態で倒れた者もいる。

 床は血で真っ赤に染まっている。この光景には戦闘に慣れているはずの将軍たちでも吐き気を催しそうになって手で口を押さえていた。

 こんな事ができる人物は一人しかいない。


「緊急時には食堂へ集まるようになっていた。そこを狙われてしまったようだ」

「シャルルがここへ来たのは間違いないようですね」

「全員を殺す為に……?」

「さあ、他に目的があったのかもしれません。他の場所も見て回ってみましょう」


 食堂を離れて別の場所を探索する。

 どんな危険があるのか分からない場所なため全員で固まっての探索。


「……何もありませんね」


 広い部屋がいくつかあるだけで、シャルルが目的にしているような物は何も見つけられなかった。


「そういうことか」


 最初の部屋を見た時から顔色が悪かったホランド将軍。

 何もなかった部屋を見て理解した。


「私の記憶が確かなら、この部屋には人が入れる培養槽がいくつも並んでいて、非合法な薬が投与されていた」

「ですが、そんな痕跡は……」

「ああ、ない」


 よく床を観察してみれば重たい筒のような物が置かれていた形跡は見つけることができる。

 では、置かれていたはずの培養槽はどこへ行ったのか?


「ここに彼女がいたのは間違いない。おそらく、彼女が持って行ったのだろう」

「いったい、何の為に?」


 ホルクス将軍が尋ねる。

 彼の胸中にも嫌な予感が渦巻いているのだろう。


「この場所が厳重に秘匿されている理由の一つにクゥエンティ皇子に見つからないようにする、というのもある。ユスティオス皇帝は、クゥエンティ皇子が見つけた研究だけを断罪し、他の非合法な研究については身内にも秘匿することで継続させた」


 さらにクゥエンティ皇子に見つからないよう、傍にいたホランド将軍には存在を教えて見つけないようにした。

 そうして、見つからなかった研究については研究を続けさせた。


 否定された研究と継続された研究。

 否定された方にとっては、継続された方が憎くて仕方ない。


「こうしてはいられない。ここで行われていた研究の成果を持ち帰って彼女が何をするつもりなのか知らないが、こうしてはいられない!」


 すぐにでも外へ飛び出していきそうなホランド将軍。


「ぐへっ!」


 襟を掴んで止まらせる。


「何をする!?」

「あなたの役割は俺たちを迷宮都市イルカイトまで無事に連れて行くことです。たとえ、途中で何があろうと目的地へ到着するまで引き返すようなことは許しません」

「だが……」

「皇帝を心配する気持ちは分かります。ですが、今のところオネイロス平原で特別なことは何も起こっていないようなので、先へ進むことを優先させることにしましょう」

「分かるのか!?」

「ええ」


 オネイロス平原にはサンドラットや他の魔物をそれとなく配置している。

 先の見えない不安から喧嘩がいくつか起こっているみたいだが、軍がいるおかげですぐに鎮圧されている。もし、喧嘩が暴動に発展するようならグレンヴァルガ軍によって問答無用で排除されている。


「あんたたちは先へ進むしか選択肢が残されていないんだ。たとえ半壊するようなことになろうとも足を止めることは許さない」

☆書籍報告☆

発売まで、あと7日。

amazonでようやく表紙公開になりました。

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