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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第36章 防衛構築
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第13話 処分場

「これが今のヨルタン・リシャルレットの様子です」


 応接室のテーブルの上に置かれた水晶。

 そこに迷宮の地下65階の様子が映し出され、執事のイルザだった肉塊が食われる光景を見てキース様が吐き気を抑えていた。


 今、俺とイリスがいるのはアリスター家の応接室。

 対面には俺の素性を知るキース様とギルドマスターのガナシュ様、それから兄とルイーズさんがいた。迷宮主であることを教えていなかったルイーズさんだったが今回の件を契機に教えることとなった。


「姿を見掛けないと思ったら、モルトの奴はこんな所にいたのか」

「知っているんですか?」

「奴も最初は冒険者だった。だが、自分の力に自信のあった奴は問題と衝突を何度も起こして冒険者の資格を剥奪されたんだ」


 その後は、スラム街を牛耳るようになり色々な悪事へ手を出していた。


「自業自得。真っ当に生きていれば、あのように苦しむこともなかったはずです」


 今は、迷宮の糧となっている。彼ぐらいに強い者なら1日過ごしてもらうだけで助かる。もう1年も安定して収入が得られている。


「しかし、アンタが迷宮主だったなんてね」

「今回は伝えておく必要があったから教えました。できれば大っぴらにしないでいただきたいですね」

「アタシもシエラたちには嫌われたくないからね。アンタが不利になるような情報を漏らすつもりはないよ」


 これまでの経緯からルイーズさんも信頼できると判断したこともあって教えることにした。

 それに彼らも護衛対象。無理矢理聞き出そうとすれば返り討ちに遭うようにしている。


「で、今回はどうして教えたんだい?」

「今まで俺が迷宮に放り込んできたのはスラム街にいるゴロツキ、それに敵対した冒険者です」


 敵対した、と言っても俺たちに対して正面からぶつかって来たのなら真っ当な対応を心掛けていた。少なくとも表立って衝突した連中は迷宮へ放り込むような目には遭わせていない。

 けれども、モルトたちは違う。


「彼らは俺の弱点になりそうな人たちへ狙いを定めた。こんな連中には“人”として扱う必要すら感じない」


 ただの“餌”として扱うことにした。

 幸いにして迷宮には飢えた最強の獣がいる。


「ヨルタン・リシャルレットも同様ですね」


 人質を取ることに対して全く反対をしていなかった。それどころか喜々として賛成していた。

 その時点で提案したヨルタンとイルザは餌になることが確定した。


 問題は、彼らが貴族であることぐらいだ。


「次期伯爵がいきなり消えたんでしょう。問題になるかもしれませんね」

「問題、なんていうレベルじゃない」


 キース様が頭を抱えていた。

 彼らが俺と敵対するような行動をしていた事実は、ちょっと聞き込みをすれば簡単に知ることができるだろうけど、アリスターでいなくなった事実にばかり注目されることになる。

 最悪の場合はアリスター家の責任問題になる可能性も……


「今の王家に落ちぶれた貴族を擁護するような余裕があると思いますか?」

「ないだろうね」


 貴族間のトラブルが発生した際には、王家が仲裁に入る決まりとなっている。

 だが、今の王都は復興で手一杯。とてもリシャルレット家に気を遣っているような余裕はない。


「先に謝っておきます。今後も同じように敵対する人物が現れた際には同じように対処します。俺は、少なくとも卑劣な手段に出る敵には容赦をするつもりがありません」

「そんな風にし続けていると周りは敵ばかりになるよ」


 ルイーズさんに窘められる。

 年長者として心配してくれるのは分かる。

 力を手に入れたのだから少しは周囲にも配慮をする必要がある。だが、俺が手にしたのはそんなことをする為の力ではない。


「目立って敵を作るのが嫌なら最初から目立たなければいいだけの話です。ですが、そんなことは無理な話です」


 せっかく手に入れた力を有効利用しないなどあり得ない。


「力を使わない、という選択肢がない以上は敵を作らない、という選択肢も存在しません。俺が手に入れた力は、敵を全く作らずにいられるような代物じゃありません」

「分かってやっているなら問題ないよ。けど、覚悟はできているんだろうね」

「その為の労力なら惜しみませんよ」


 もうレンゲン一族の時みたいな失態は犯さない。

 護衛の範囲を広げ全員にシャドウゲンガーを張り付けている。こうしている今もアリスターでの情報収集を行っており、不審な行動に出ようとした者が現れた時には迷宮核から教えてもらうことになっている。ただし、プライバシーもあるだろうから警戒すべき情報以外は受け取っていない。


「キース様に報告したのは貴族がいなくなったことでアリスターに迷惑が掛かるかもしれないと思ったからですし、ルイーズさんに教えるのも助けてもらっているからです」

「もうやってしまったものは仕方ない。今さらあそこから連れ出すなんて不可能だし、このまま行方不明として処理するしかないだろうね」


 そして、ギルドマスターを呼んだのにも理由がある。


「俺は関係者だからといってリシャルレット家全体にまで問題を発展させるつもりはありません。だから、ヨルタンを世話する為にいた使用人や護衛には一切の手を出していません」

「そうみたいだな。リシャルレット家の使用人から行方の分からなくなった主人と執事を探すよう依頼が出ていた。簡単に聴取をしただけだが、屋敷で他に行方の分からない人はいないらしい」


 当然、屋敷にいたはずの人が忽然と姿を消せば真っ先に疑われるのは同じ屋敷にいた人間だ。

 だから依頼を引き受けた冒険者ギルドは真っ先にリシャルレット家の人間を疑うことにした。


「実際には俺が屋敷へ忍び込んで、【転移】でパパッと連れ出しただけなんですけどね」


 【壁抜け】と【転移】があれば誰に気付かれることなく連れ去ることが可能だ。

 もし、俺の誘拐を防ぐつもりなら魔法効果を完全に打ち消す結界で屋敷を覆う必要があったのだが、リシャルレット家は物理的な侵入方法による警戒をするばかりで魔法やスキルへの対策が何もされていなかった。

 借り物の屋敷である事を思えば仕方ないのかもしれないが、俺からすればあまりに杜撰と言えなくもなかった。


「ただ、護衛に当たっていた彼らは責任を追及されることになるでしょう」

「彼らのことを心配しているのか」

「心配? いいえ、想像しているのとはちょっと違いますね。俺みたいな人間への警戒も彼らの仕事だったはずです。ところが、警戒中にも関わらず仲間と談笑して酒を飲んでいる奴までいましたよ。彼らがクビになったとしても職務怠慢が原因ですね」

「じゃあ、お前は何を心配している」

「彼らの盗賊化ですよ」


 ギルドマスターの質問に対して簡潔に答える。


「アリスターで事件が起こったんですからアリスターそのものを逆怨みする可能性があります。実力が不足していたとはいえ、一般人から見れば十分に力を備えていた人物です。盗賊になって人を襲うようになれば迷惑な話です」


 その時には手助けをしてあげてもいい。元を辿れば俺に原因の一端があると思ってもいいのだから。


「ただ、一つだけ断っておきたいのは時期の話ですね。防衛準備は整えておくつもりですけど、来月には再びアリスターを離れるつもりでいますから、その頃には手助けできないので冒険者で対処してください」

「……今度はどこへ行くつもりなんだ?」


 俺たちの計画について家族であるにも関わらず何も聞かされていなかった兄が尋ねてくる。


「ちょっとガルディス帝国まで。グレンヴァルガ帝国の皇帝と一緒に途中まで行ってきます」

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[気になる点] 「目立って敵を作るのが嫌なら最初から目立たなければいいだけの話ですが、そんなことは無理~」と主人公が語っておりますが、これをラスボスのダンマスが聞いたならば失笑するような気がします。彼…
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