第90話 自由の代償、ギルドの掲示板は厳しい
いつも応援ありがとうございます!
最新式トイレの「急襲」により、前途多難なスタートを切った自由な新生活。
しかし、名誉保守官を辞めたということは、今日から自分たちで稼がなければパンの耳すら危ういということ!
意気揚々とギルドへ向かった五人を待っていたのは、世知辛い現実と、懐かしい(?)あの感覚でした。
最新式トイレとの「死闘」を終え、ようやく落ち着きを取り戻したリビング。
クレアは、テーブルの上に広げた空っぽの財布をじっと見つめていた。
金貨千枚という報酬は確かに受け取ったが、今後の拠点の維持費や、ミルの食費、セインの魔導具代を考えれば、決して「一生遊んで暮らせる」額ではない。
「……ふぅ。……論理的に見て、……私たちの貯蓄は、……今の生活水準を維持した場合、……三ヶ月で底を突きます。……名誉保守官の……終身年金を……辞退した……代償ですね」
セインが、冷徹な数値を示しながら眼鏡を押し上げた。
彼女の指先は、すでにギルドから取り寄せた「推奨依頼リスト」を端末でスキャンしている。
「えへへ、でもさ! あたいの工作機は魔力自給式に改造したし、ちょっとした修理依頼なら、この家の中でもこなせるよ!」
ケットルが、小さな胸を張って笑った。
ドワーフの可愛い女の子らしいポジティブさだが、その瞳は「早く新しい素材で何か作りたい」という職人的な欲望に満ちている。
「……よし、……行こう。……あたい、……じっとしてるの……苦手。……身体を動かして、……パーッと……稼ぎたい!」
カノンが、ようやく赤みの引いた顔で銀靴を鳴らした。
自由の身になった開放感が、彼女の「逃げ足」ならぬ「フットワーク」を軽くしているようだ。
リフェルナの冒険者ギルド。
かつて名誉保守官として丁重に扱われていた頃とは違い、今の彼女たちは、ただの「ちょっと腕の立つ五人組」に過ぎない。
受付の職員も、彼女たちの顔を見て少し驚いたようだが、すぐに事務的な対応に戻った。
「……あ、……あの掲示板の、……一番上。……美味しそうな……名前。……『森の王の、……極上レバー……採取』。……これ、……やりたい」
ミルが、杖の先で一枚の依頼書を指差した。
吸血鬼の彼女にとって、報酬よりも「中身」が重要らしい。
『もう壊さない杖』の先端が、期待に震えるミルの魔力に反応して、小さくカチリと鳴った。
「……ミル、それは……『森の王』という名の……巨大な魔物の討伐依頼だよ。……レバーを食べるのが……目的じゃないからね」
クレアが苦笑しながら嗜める。
だが、その隣の依頼書に目が止まった。
『緊急募集:リフェルナ外縁、水路の泥さらいと、迷い込んだ水魔の駆除』
「……これなら、……私たちの『家』を……拠点にして……効率よく……進められそうです。……報酬も、……論理的に見て……妥当です」
セインの言葉に、全員が頷く。
結局、彼女たちが選んだのは、かつて「最弱」と呼ばれていた頃と変わらない、泥臭くて地味な仕事だった。
「ガハハ! 泥さらいか、あたいの洗浄砲の出番だね! ……あ、間違えた。えへへ、おばちゃんっぽくなっちゃった」
ケットルが照れくさそうに笑い、五人は再び、自分たちの足でリフェルナの街へと踏み出した。
名誉も地位もない。
けれど、自分たちの意志で選んだ依頼書は、どんな勲章よりも重く、そして誇らしかった。
リトル・リンク、今日も(レバーのために森の王を狙いつつ)ちょっとだけ成長中。
第90話をお読みいただき、ありがとうございました。
名誉を捨てて最初に向かったのは、やっぱりギルドの掲示板でした。
「森の王」のレバーを食べたがるミルと、それを冷静に分析するセイン。
そしてつい「ガハハ」と笑ってしまう可愛いケットル。
この五人のやり取りを描いていると、ようやく「リトル・リンクが帰ってきたな」という感じがします。
さて、選んだのは「水路の泥さらい」。
自由になった彼女たちの初仕事は、果たして無事に終わるのでしょうか?
「ミルの食欲がブレないw」「セインの計算が早すぎる」と思ってくださった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援いただけると励みになります!
次回、第91話。
水路の奥で出会ったのは……カノンの過去を知る人物!?
お楽しみに!
次は、カノンの過去が少し垣間見える「水路の初仕事」を描く第91話に進めますか?




