第51話:ギルドの嫌がらせと、ケットルの新発明
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
前回の第50話では、格上パーティ『轟雷の牙』からの不当な買収提案を蹴り飛ばした五人。
自分たちの「城」を守り抜いた彼女たちですが、案の定、ギルドでの扱いが怪しくなってきて……。
「最弱」の知恵と、ケットルの新発明が、水都リフェルナに新たな旋風を巻き起こします!
(※ここに第51話の本文が入ります)
リフェルナのギルドに入った瞬間、クレアは肌に刺さるような違和感を覚えた。
昨日までの歓迎ムードは消え、職員たちは目を逸らし、周囲の冒険者からはクスクスと品定めするような笑い声が漏れている。
提示されたのは、嫌がらせとしか思えない内容だった。
「……下水道の、魔導汚泥(スライム混じり)の清掃?」
クレアが依頼表を二度見する。
報酬は銀貨わずか数枚。本来なら新人の雑用だが、そこには『一箇所の磨き残しも許さない完璧な清掃』という、陰湿な条件が書き加えられていた。
「論理的に見て、シルヴィア様による圧力ですね。……彼女たちは、私たちが泥にまみれて音を上げる姿を見て笑いたいのでしょう」
セインが眼鏡を光らせ、冷淡に分析する。
しかし、リーダーのクレアは、仲間の顔を見てにっこりと笑った。
「……いいよ。泥仕事なら、うちらの得意分野じゃん!」
下水道の入り口。
絶望的な汚れと異臭を前に、カノンが鼻をつまんで顔をしかめる。
「……これは流石に、借金取りから逃げるよりキツいねぇ」
「ガハハ! だから言っただろ、準備が大事だってね!」
ケットルが背負い袋から取り出したのは、不恰好な筒状の魔導具だった。
地下で見つけた遺産と、洗浄トイレの回路を強引に組み合わせた試作品だ。
『嫌がらせを水に流す・超高圧魔導洗浄砲』
「いくよ! スイッチ、オン!」
ケットルが魔力を流すと、ノズルから凄まじい勢いで高圧水が噴射された。
こびりついた汚泥も、潜んでいたスライムも、一瞬で「物理的に」消し飛ばされ、石畳が新品のような輝きを取り戻していく。
「……すごい。……汚れが、逃げていく。……これ、……楽しい」
ミルが少しだけ目を輝かせ、杖で水の軌道をコントロールする。
五人は嫌がらせをこなすどころか、まるでお祭りのように楽しみながら、下水道をピカピカに磨き上げていった。
数日かかると言われた清掃を、わずか数時間で終わらせた五人。
泥一つついていない綺麗な姿でギルドへ戻ると、そこには進捗を「高みの見物」しに来たシルヴィアたちの姿があった。
「なっ……!? なぜもう戻っているの? 汚れが残っていたら報酬は……」
驚愕するシルヴィアに対し、セインが事務的に書類を差し出す。
「ご推薦、ありがとうございました。おかげさまで、街の衛生管理実績が『特級』に達しました。規定により、今後の指名依頼の優先拒否権を獲得です」
「……あ、シルヴィア様。……お洋服の裾、……少し汚れてます。……アタシたちの洗浄砲、……試します?」
ミルが無表情にノズルを向けた瞬間、シルヴィアとエドワードは顔を引き攣らせて後退した。
物理的な力ではなく、「余裕」と「成果」で圧倒された彼女たちは、捨て台詞を残して逃げ帰るしかなかった。
その夜。
ギルドから勝ち取った追加報酬を手に、五人はいつもの市場で「最高のご褒美」を買い込んだ。
新居のリビングには、魔導ヒーターの温かな風が流れている。
キッチンでは、ケットル選定の銅鍋で、厚切りのレバーがジューシーに焼き上がっていた。
「……生きてて、よかった。……レバー、……ふわふわ。……血が、笑ってる」
一口食べたミルが、ポッと頬を赤くして、本当に幸せそうに微笑んだ。
その笑顔を見ただけで、昼間の嫌がらせなんて、みんなの心から綺麗さっぱり消えてしまった。
「……最強になんて、ならなくていいよね。……でも、この『繋がり』だけは、誰にも邪魔させないよ」
クレアの言葉に、みんなが静かに頷く。
外の悪意なんて届かない、温かい城の灯火。
リトル・リンク、今日も(幸せを噛み締めて)ちょっとだけ成長中。
第51話をお読みいただき、ありがとうございました!
嫌がらせを「新兵器のテスト」としか思っていない彼女たちの図太さと、最後のご褒美レバー。
ミルの「生きててよかった」という笑顔で、書いている私も幸せな気持ちになりました。
もし「リトル・リンクの逆襲にスカッとした!」「ミルの笑顔に癒やされた!」と思っていただけましたら、ぜひページ下の**【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**にして応援いただけると、執筆の大きな励みになります!
ブックマークや感想も、いつも大切に読ませていただいております。
次回、第52話。
リフェルナでの地位を築き始めた五人のもとへ、あの『蒼穹の剣』から新たな報せが届きます。
引き続き、応援よろしくお願いいたします!




