第208話 ギルドマスターの「転倒」、白金の椅子とランクの限界突破
静まり返ったギルドホールに、二階の執務室から階段を一段飛ばしで駆け下りてくる激しい足音が響いた。
現れたのは、この街の冒険者ギルドを束ねる隻眼の豪傑、ギルドマスター・バルトロ。彼は受付嬢の手からひったくるように白金の親書を奪い取ると、その場で岩のように固まった。
「……ふぅ。……おじさま、……心臓の……音……、……太鼓……みたい……一秒前。……ミル、……戦慄の……魔力……視る……一秒前。……あ、……親書の……裏側……。……偽造防止の……鳳凰……、……羽ばたいた。……三……二……一……、……あ、……膝が……笑ってる」
ミルの実況。彼女が**『もう壊さない杖』**を軽く振ると、ギルドマスターの背後に「自動追尾のクッション」が展開された。
吸血鬼の彼女には、バルトロの膝が、書類に刻まれた「国王直筆の罵倒(という名の信頼)」を読み取った瞬間に砕け散るのが視えていた。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! ギルドマスターともあろうお方が、たった一枚の紙切れで腰を抜かしちゃいけないよ! ――セイン、おじさんの顔色が真っ青だねぇ! アタシの特製『鳳凰の気付け薬』を鼻先にぶっかけな!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から「超高濃度・覚醒香」を取り出した。
ドワーフの職人にとって、驚愕で硬直した権力者を「再起動」させるのは容易い御用。彼女は、バルトロが「こ、これ……秘匿任務……特等功績……だと……!?」と呻く鼻腔に、一瞬で頭を真っ白にする清涼感を叩き込んだ。
「……論理的に見て、……私たちの……現在の……功績値は……Sランク……に相当……します。……構造解析……。……っ、……ギルドの……規定……、……飛び級……は……三ランク……まで……! ……環境上書き……! ……ギルドの……評価……基盤を……王宮……直轄……モードへと……固定……し、……特例中の……特例……『白金ランク』を……強制……承認しなさい……!!」
セインの眼鏡が黄金色に輝き、受付の魔導評価器が限界を超えた光を放った。
ハーフエルフの理知的な瞳が、ギルドの古いルールを書き換える。彼女の演算により、従来のランク色ではない、白金色の光を放つ新しい冒険者プレートが、機械の奥から「ガコン!」と吐き出された。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……自称・エース冒険者たちが……プレートの……色を……見た瞬間に……膝をついて……祈りだす……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……ギルドマスターの……執務室を……全自動……洗浄トイレに……改造する……契約……結ぶか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴を鳴らして白金のプレートを指先で回した。
回避タンクとしての遊び心。彼女は、周囲の冒険者たちが「白金……? 伝説の……王家直属ランクかよ……!」とざわめくのを、勝利のウィンク一つで黙らせた。
私は、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**を一度鳴らし、ギルドマスターを見据えた。
「……マスター。……ランク、……ありがとうございます。……でも……、……私たちの……家は……、……これ以上の……お忍びには……狭すぎます。……王宮……からの……依頼は……、……週三回までに……制限……させて……もらいますよ」
リトル・リンク、今日も(冒険者ランクの天井を物理的に突き破り、秘匿任務の報酬として『白金の自由』を掴み取りながら)ちょっとだけ成長中。
第208話をお読みいただき、ありがとうございました。
ギルドマスター、完全敗北!
王家からの秘匿親書の威力は凄まじく、ギルドの評価システムがバグを起こして「白金ランク」という特例中の特例を吐き出させてしまいました。
これで名実ともに「最弱」の看板を下ろしたリトル・リンク。
しかし、白金ランクになったことで、今度は「世界中の面倒事」が彼女たちの快適な家を目がけて飛んでくることになりそうで……?
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