第203話 王宮への「反逆」、一家団欒の湯船と禁断の朝寝坊
特製キノコラーメンを完食した王家一家は、もはや帰還の二文字を辞書から抹消していた。
深夜、鳳凰の熱源が静かに唸る脱衣所で、国王エドワード陛下は、王冠も重厚なマントも脱ぎ捨てて、一人の父親として「鳳凰の湯」へと向かった。
「……ふぅ。……おゆ。……きんいろ……一秒前。……ミル、……しあわせの……魔力……視る……一秒前。……あ、……陛下……、……お腹の……脂肪……気にしてる。……でも……、……お湯に……触れたら……、……そんなの……どうでも……よくなった……一秒前」
ミルの実況。彼女が**『もう壊さない杖』**を振ると、浴室内に四層の翠緑魔石から抽出した「沈静のアロマ」が充満した。
吸血鬼の彼女には、国王、王妃、そして殿下が、一つの湯船に浸かりながら、これまでの形式ばった家族の壁を溶かしていくのが視えていた。リヴァイアサンの氷鱗タイルが放つ微細な振動が、一家の凝り固まった肩を等しく解きほぐしていく。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! 国王様が鼻歌を歌いながら背中を流し合うなんて、護衛騎士が見たら卒倒するねぇ! ――セイン、お風呂上がりの『極冷・鳳凰牛乳』を人数分、魔法冷蔵庫でキンキンに冷やしときな!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**から取り出した「超電導冷却器」をキッチンに設置した。
ドワーフの職人にとって、風呂上がりの一杯までが「入浴」という名の設計図。彼女は、鳳凰の熱で殺菌しつつ、リヴァイアサンの冷気で一瞬にして氷点下まで下げた、伝説級の喉越しを持つ牛乳を用意した。
「……論理的に見て、……王家一家の……睡眠……導入……効率は……一二〇%……に達します。……構造解析……。……っ、……陛下の……いびき……、……低周波……の……安眠……リズム……! ……環境上書き……! ……客室の……重力を……〇・八倍へと……固定……し、……雲の上で……眠る……ような……浮遊感を……与えなさい……!!」
セインの眼鏡が黄金色に輝き、ゲストルームのベッドが「無重力仕様」へと書き換えられた。
ハーフエルフの理知的な瞳が、一家の深い眠りを完璧にエスコート。彼女の演算により、王宮の固い天蓋付きベッドでは決して得られない、母の胎内にいるような絶対的な安らぎが一家を包み込んだ。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……護衛騎士団長が……玄関先で……『陛下、……公務が……山積みです……!』って……泣きつく……ほうに……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……騎士たちの……鎧を……全自動……洗浄機に……放り込むか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴を鳴らして家の外を警備(?)した。
回避タンクとしての遊び心。彼女は、王宮から「陛下を連れ戻せ」と急かされる伝令の馬を、四層の幻惑草を撒くことで庭先で一晩中足止めし、一家に静寂の夜をプレゼントした。
翌朝。
鳳凰の陽光が差し込むリビングに、のっそりと現れた国王陛下は、髪を寝癖で爆発させながらも、かつてないほど晴れやかな顔でこう告げた。
「……クレア。……予は……、……今日から……一週間……有給……をとる。……公務は……鏡越しの……遠隔……会議で……済ませる。……この……『鳳凰の……羽毛布団』から……出るのは……国家……損失だ」
リトル・リンク、今日も(王国の最高指導者を「二度寝」という名の快楽に沈め、王政を根底から揺るがしながら)ちょっとだけ成長中。
第203話をお読みいただき、ありがとうございました。
国王陛下、ついに「有給休暇」を宣言!
鳳凰の羽毛布団とセインの低重力ベッドの合わせ技の前に、王としての義務感は塵となって消え去りました。
王宮の侍従たちがパニックになる中、リトル・リンクの家はもはや「世界で最も快適な臨時王宮」と化しています。
次回、国王陛下、ケットルの指導のもとで「日曜大工」に目覚める!?
応援いただける方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、ブックマーク登録もよろしくお願いします!




