第160話 帰還の門、擬似天空の「光源」と銀の翼
リビングの空気は、ポータルが放つ蒼い燐光に染まっていました。
カノンは新調された銀靴の感触を噛みしめるように、何度も床を軽く叩いては、その反発係数を脳に刻み込んでいました。
「……ふぅ。……いくよ。……ポータル、……ぐるぐる……してる。……ミル、……お腹……いっぱい。……魔力……パンパン。……これ、……空中庭園の……一番……高い……ところ……まで……一気に……行ける……一秒前」
ミルが、新素材で補強された**『もう壊さない杖』**をぎゅっと握りしめ、ポータルの中心を見据えました。
吸血鬼の彼女にとって、昨夜のフルコースで得た良質な栄養は、そのまま高純度の魔力へと変換されていました。彼女の瞳は、これまでにないほど深く、澄んだ紅色の光を湛えています。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! アタシの作った特注の『気圧安定装置』、ちゃんと全員の背負い袋に仕込んであるからねぇ! ――セイン、ポータルの出口、あの『偽物の空』のド真ん中に設定しておくれ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**のベルトを締め直し、豪快に笑いました。
ドワーフの彼女は、街で仕入れた素材を加工し、高高度でも呼吸を楽にするための魔導フィルターを完成させていました。
「……論理的に見て、……この……地底湖……上空に……浮かぶ……『太陽』……。……発光……原理が……不明……です。……構造解析……。……っ、……核融合……では……なく……、……膨大な……魔力の……収束体……! ……環境上書き……! ……私たちの……網膜を……異常……光量から……防護……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の「座標固定術式」を爆発させました。
ハーフエルフの理性が、ダンジョンの天井付近に居座る謎の光源――「偽りの太陽」を冷徹に分析します。地上ではないこの場所に、なぜこれほどの熱量と光があるのか。その矛盾さえも彼女はデータとして処理し、仲間を守るための「遮光殻」を構築しました。
「……あはは、……やっぱり……あっちの……眩しい……タマに……一番……早く……触れるか……銀貨……三枚……!! ……ねえ、……クレア……、……あたいが……あの……偽物の……お天道様に……届くか……賭ける……!?」
カノンが、銀靴の踵をポータルの縁で「カチッ」と鳴らし、光の中へと飛び込みました。
回避タンクとしての真骨頂。彼女の新しい靴が空間を蹴るたびに、目に見えないほどの魔力の火花が散り、彼女の体は重力を置き去りにして、地底の空を焦がす「光源」へと加速していきます。
「……ありがとう、カノン。……あそこは……本当に……太陽……なのかな。……でも、……眩しいのは……本物……だね。……みんな、……行こう! ……あの……光の……向こう側に……、……三層への……道が……あるはずだよ!」
クレアが、虹色の輝きを放つ**『銀竜の絆』**を正眼に構え、光の奔流へと足を踏み入れました。
地底の闇の中に作られた、あまりに不自然で、あまりに美しい空の世界。その「光」の正体を突き止めるべく、彼女たちは最強の装備と絆を携えて帰還しました。
リトル・リンク、今日も(地底の偽りの太陽を見上げ、その矛盾さえも力に変えて突き進みながら)ちょっとだけ成長中。
第160話をお読みいただき、ありがとうございました。
ダンジョンの天井付近に浮かぶ、あまりに不自然な「太陽」。
セインの解析によれば、それは自然の産物ではなく、膨大な魔力が一箇所に固定された「超高密度魔力体」のようです。
なぜ地底に空があるのか? なぜ太陽があるのか?
その謎の核心に迫るべく、新型・銀靴を手に入れたカノンが先陣を切って飛び込みます。
眩しすぎる光の向こう側で、彼女たちを待つ「空中庭園の主」とは……?
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