第151話 換金の咆哮、秘蔵の「素材部屋」と夢のフルコース
ポータルの青い光がリビングに弾け、五人の少女たちが我が家の床へと帰り着きました。
一歩踏み出しただけで「ガサッ」と鈍い音が響いたのは、放置されたゴミではなく、これまでの冒険で少しずつ持ち帰り、リビングの隅に積み上げられていた「素材の山」に足が当たったからでした。
「……ふぅ。……おわった。……ミル、……もう……限界。……これ、……過去……最大級の……飢え。……お腹の……中、……ブラックホール……開いてる。……換金、……はやく。……お肉、……はやく」
ミルが、潤んだ瞳で**『もう壊さない杖』**を抱きしめ、キッチンの空っぽのパン箱を見つめていました。
吸血鬼の彼女にとって、今回の長期遠征は死活問題でした。蓄えていた予備の血液パックも、おやつのレバークッキーも全て底を突き、今はただ、街の高級肉店に並ぶ「極上和牛の血潮」だけを夢見ていました。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! アタシの『巨大背負い袋』の中身、弾薬も食料もすっからかんにしちまったのは計算外だったが……! ――見ておくれよ、クレア! 前に持ち帰ったオークの牙に、マイコ・オーガの結晶甲殻、それにさっきのゲイザーの羽根! これ全部かき集めたら、とんでもない山になるねぇ!」
ケットルが、煤まみれの顔で、リビングの棚や床に「とりあえず」置いてあった素材を次々と大きな麻袋に詰め込み始めました。
ドワーフの彼女は、街へ戻る手間を惜しんで、小分けにして持ち帰った素材を自宅にストックしていたのです。今やこのリビングの一角は、職人ギルドが腰を抜かすような一級品の宝物殿と化していました。
「……論理的に見て、……現時点での……自宅……在庫……総資産は……金貨……百枚を……超える……見込み……です。……構造解析……。……っ、……市場の……相場変動を……考慮……しても、……今夜は……街で……一番……高い……レストランに……行けます! ……環境上書き……! ……私たちの……質素な……食卓を……豪華な……フルコースへと……書き換えなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の「棚卸し術式」を展開しました。
ハーフエルフの理性が、これまでの備蓄生活を過去のものとし、最高の祝杯を挙げる準備を整えていました。彼女の指先は、すでにギルドへの納品リストを魔力で代筆し始めていました。
「……あはは、……やっぱり……あたいの……全財産……、……さっき……賭けて……正解……だったねぇ!! ……ねえ、……クレア……、……換金所の……お姉さんが……この……ストックの……量……見て……卒倒する方に……デザート……賭けて……勝負……しない……!?」
カノンが、銀靴の踵をリビングの絨毯の上で軽快に打ち鳴らしました。
ギャンブル好きの彼女にとって、溜まりに溜まった「在庫」を一気に吐き出す瞬間の快感は、何物にも代えがたい勝利の美酒でした。彼女はすでに、懐に入るはずの金貨の重みで、今夜のカジノの軍資金を計算していました。
「……うん、……そうだね。……みんな、……本当によく……頑張ったね。……消耗品が……なくなるまで……走り続けて、……おうちには……こんなに……戦果が……溜まってたんだもん。……よし、……最高に……美味しいものを……食べに行こう!」
クレアが、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**を立てかけ、仲間の手を取りました。
かつての彼女なら、これほどの富を前にして「奪われる恐怖」を感じていたでしょう。でも今は、この富を全員で分かち合い、明日への糧に変える強さと絆がありました。
五人が大袋を担いで街の活気の中へと繰り出すと、夕暮れの市場の匂いが、戦い抜いた彼女たちの五感を強烈に刺激し始めました。
リトル・リンク、今日も(溜め込んだ素材を金貨の山に変えて、夢のフルコースを求めて街を闊歩しながら)ちょっとだけ成長中。
第151話をお読みいただき、ありがとうございました。
自宅にコツコツとストックしていた素材たちが、ついに日の目を見る時が来ました!
一回ごとに換金せず、溜めに溜めて一気に放出する。この「一攫千金感」こそ、リトル・リンクらしいカタルシスですね。
オークの素材から最新の変異体素材まで、ギルドの査定員がどんな顔をするのか楽しみです。
次回は、ギルドでの大騒ぎと、念願のフルコース!
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