第143話 最深部の静動、菌糸に抱かれた「白銀の巨人」
セインの隠蔽術式に守られ、胞子の濁流を泳ぐように進んだ先。迷宮の拍動が最も激しく、そして最も重く響く「王の間」へと辿り着いた瞬間、その隠蔽を無理やり剥ぎ取るほどの凄まじい衝撃波が一行を襲った。
広大な空洞の中央、天井まで届く巨大な菌糸の心臓の前に、それは鎮座していた。
「……ふぅ。……おっきい。……これ、……オーガ……じゃない。……森の……主、……取り込まれた。……真っ白……だけど、……中身……真っ黒。……悲しい……叫び、……聞こえる。……ミル、……耳……痛い」
ミルが、激しく拍動する**『もう壊さない杖』**を両手で握りしめ、前方に「静寂の障壁」を展開した。
吸血鬼の彼女には、眼前の巨人が単なる魔物ではなく、この森の生態系の頂点にいた古き守護者が、菌糸に寄生され、その憎悪と魔力を増幅させられた「哀れな操り人形」であるのが視えていた。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! 全身が結晶の鎧で固められてやがる! アタシのパチンコじゃ、表面を傷つけるのが精一杯だねぇ! ――セイン、ありゃあもう生物の範疇を超えてるよ!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**の全ロックを解除し、内蔵された「超高密度圧縮弾」を装填した。
ドワーフの彼女は、巨人の皮膚が塔の構造そのものと連結しており、ダメージを与えるたびに塔から無限に魔力が供給される「不滅の循環」に気づき、その接続を断つための構造的弱点を探し始めた。
「……論理的に見て、……正面突破は……不可能です。……構造解析……。……っ、……彼の……心臓部……、……魔力核が……塔の……中枢と……直結……しています! ……環境上書き……! ……私たちの……存在……確率を……塔の……認識から……消去……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の隠蔽術式をさらに深化させ、一行を「無」へと書き換えた。
ハーフエルフの彼女は、敵がこちらを認識できない隙に、巨人と塔を繋ぐ「菌糸のへその緒」を物理的に断ち切る、精密な作戦を仲間に共有した。
「……任せなよぉ。……あたいの……銀靴は、……止まるために……あるんじゃ……ないからね……!! ……みんな、……一瞬……だけ……道に……なって……あげるよぉ!!」
カノンが、銀靴の踵を火花が散るほど激しく打ち鳴らした。
回避タンクとしての真骨頂。彼女は巨人が放つ広範囲の「胞子波」を、物理法則を無視したような超高速移動ですべていなし、塔の壁面に張り巡らされた巨大な中枢神経へと肉薄した。その背後には、彼女が駆け抜けた熱量で胞子が焼き切れた「一筋の道」が残されていた。
「……ありがとう、カノン。……みんなの……想い、……この……剣に……乗せるよ。……苦しみから、……今……解き放って……あげるから……!」
クレアが、虹色の輝きを放つ**『銀竜の絆』**を正眼に構えた。
かつての彼女なら、圧倒的な巨躯の前に立ちすくんでいた。でも今は、カノンがこじ開けた一瞬の隙と、セインが示した急所、そして仲間たちの信頼が、彼女の腕に「確かな重み」を与えていた。
リトル・リンク、今日も(悲しき巨人の呪縛を、白銀の一閃で断ち切るために)ちょっとだけ成長中。
第143話を修正してお届けしました。
カノンの決め台詞、少し引き締めて「動」のイメージを強めてみました。お調子者だけどやる時はやる、回避タンクとしての矜持を感じていただければ幸いです!
菌糸の塔の真の主――それは寄生され、変異した古き守護者でした。
物理的な強さだけでなく、塔そのものから無限に供給される魔力を持つ難敵に対し、リトル・リンクは「認識の消去」というセインの奇策と、カノンの超機動力で対抗します。
決戦は最高潮へ。クレアの放つ一撃は、巨人の心を救えるのでしょうか。
「カノンの新しいセリフ回し、スピード感があって良い!」「セインの存在確率消去がチート級にかっこいいw」と思ってくださった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして、応援いただけると励みになります!




