第139話 白光の迷宮、菌糸の塔を汚す「餓えた巨躯」
ポータルの青い光が霧散すると、そこは再び雪のような胞子が舞う幻想的な世界でした。
しかし、昨日までの静謐な空気はどこかへ消え去り、代わりに塔の入口からは、鼻を突く獣の体臭と、生々しい肉を喰らう咀嚼音が漏れ聞こえてきました。
「……ふぅ。……くさい。……せっかくの……お花の……におい、……台無し。……これ、……おっきい……悪い子たちの……におい。……いっぱい……いる」
ミルが、顔をしかめて**『もう壊さない杖』**を胸元に引き寄せました。
吸血鬼の彼女には、塔の内部に満ちる清浄な魔力が、どろどろとした暴力的な殺気によって掻き乱されているのが視えていました。それは、かつての第一階層で見たオークたちよりも、さらに野蛮で、知性の欠片もない「食欲」の塊でした。
「ガハハ! 冗談じゃないよ! せっかく綺麗に磨いた靴を、こんな獣の脂で汚されたかないねぇ! ――セイン、ありゃあただのオーガじゃないね。体が変な色に光ってやがる!」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**の重みを調整しながら、パチンコを塔の闇へと向けました。
ドワーフの彼女は、通路に居座るオーガたちの肌が、塔の胞子を取り込んだ影響で白く結晶化し、天然の鎧のように硬質化していることを見抜いていました。
「……論理的に見て、……異常……個体群……です。……構造解析……。……個体名、……菌化鬼。……塔の……魔力を……直接……摂取し、……肉体を……強制……進化……させています! ……環境上書き……! ……空気中の……胞子……密度を……下げて……視界を……確保……しなさい……!!」
セインが、眼鏡の奥で黄金色の解析術式を扇状に放ち、一行を包み込む「清浄な結界」を展開しました。
ハーフエルフの彼女は、オーガたちが胞子を吸い込むことで自己再生能力を高めていることに気づき、まずはその供給源を断つために周囲の空間を隔離しました。
「……あはは、……一秒……どころか……コンマ……一秒……! ……あたい、……あの……大きな……おじさんたちの……懐、……全部……走り抜けて……あげるよぉ!! ……ほら、……こっちだよぉ!!」
カノンが、銀靴の踵を胞子の上で激しく打ち鳴らしました。
回避タンクとしての本領発揮。彼女は棍棒を振り回して突進してくる三体のマイコ・オーガの合間を、銀色の残像となって縫うように駆け抜け、その鈍重な一撃をすべて空振りさせました。
「……みんな、……行こう。……この……綺麗な……場所を……、……私たちの……手で……守るんだ!」
クレアが、虹色の筋が走る**『銀竜の絆』**を抜き放ちました。
かつての彼女なら、オーガの怪力を見ただけで足を竦ませていたかもしれません。でも今は、背中を守ってくれる仲間と、自分の剣が切り開く未来を信じていました。
リトル・リンク、今日も(幻想的な塔を蹂躙する暴力に、真っ向から立ち向かいながら)ちょっとだけ成長中。
第139話をお読みいただき、ありがとうございました。
次なる敵は、塔の魔力で強化された「マイコ・オーガ」。
美しき菌糸の塔を占拠し、我が物顔で振る舞う彼らに対し、リトル・リンクの連携が火を噴きます。
カノンが敵を翻弄し、セインが環境を制御する。
そしてクレアの一撃が、硬質化したオーガの肌を貫けるのか――。
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