第105話 執着の終わり、夕暮れに響く「ありがとう」
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執念に駆られ、リフェルナの地脈さえも汚染しようとしたシルヴィア。
しかし、クレアの一撃とエドワードの反旗が、その歪な野望を打ち砕きました。
失われた権益を追い求めた者と、失うことを恐れず「今日」を守った者。
瓦礫の山で繰り広げられた因縁の対決、ついに終着点です。
最弱パーティ、今日も(一つの大きな壁を乗り越えて)ちょっとだけ成長中!
夕闇が迫る更地に、砕けた魔石の破片が鈍く光り、やがてその輝きを失っていった。
「……どうして……。私の……完璧な……計画が……。……こんな、……どこの馬の骨とも……知れない……小娘たちに……」
シルヴィアが、掠れた声で呟いた。
かつては優雅に扇子を揺らし、リフェルナのギルドを影で操っていた彼女の姿は、今はどこにもない。
地位も、名誉も、そして信頼していた副官さえも、その手から零れ落ちていた。
「……論理的に見て、……あなたの計画は……失敗しました。……ですが、……それは……私たちが……強いからでは……ありません。……あなたが、……この街の……息吹を……無視したからです」
セインが、解析端末を静かに懐に収めた。
眼鏡の奥の瞳には、冷徹な分析ではなく、どこか寂しげな色が浮かんでいる。
「ガハハ! シルヴィア様、あんたは『価値』ばかり見てたけど、アタシらは『居心地』を見てたのさ。……家が吹き飛んだって、アタシらが笑っていられたのは、守りたかったものが魔力なんかじゃなかったからだよ」
ケットルが、**『巨大背負い袋』**を背負い直し、優しく笑った。
ドワーフの少女らしい、懐の深い言葉。
「……ん。……空気、……綺麗に……なった。……レバー……焦がした……匂い、……また……してきた。……シルヴィアさん、……お腹……空いてるから、……意地悪……したの?」
ミルが、無表情のままシルヴィアの前に歩み寄り、懐から小さな包みを差し出した。
それは、今朝市場でもらったばかりの、レバーの干肉だった。
「……な、……何よ……これ。……馬鹿に……してるの……?」
「……美味しい。……食べると、……怒るの、……忘れる。……エドワードさんも、……一本……あげる」
ミルは、隣に立つエドワードにも無造作に干肉を握らせた。
エドワードは、ケットルに直してもらった愛剣を鞘に納め、その干肉を一口噛みしめた。
「……不器用な味だ。……だが、……血が通っている」
エドワードは低く、重厚な声でそう言うと、シルヴィアに向かって深く頭を下げた。
「……シルヴィア様。……俺の役目は、……ここで終わりです。……これからは、……一人の冒険者として……自分の誇りを探します」
それは、決別の言葉。
シルヴィアは力なく笑い、受け取った干肉を震える手で口に運んだ。
「……最悪な……味ね。……こんな……安っぽいものを……有り難がるなんて……」
毒づきながらも、彼女の瞳からは一筋の涙が溢れた。
「……シルヴィアさん。……また、いつか。……ギルドで……普通に……会えるのを……待ってます」
クレアの言葉に、シルヴィアは答えなかった。
ただ、夕闇の中に消えてゆく背中は、どこか憑き物が落ちたように軽やかだった。
「……よし。……みんな、……帰ろう。……新しいお家で、……温かい……スープ……飲もう!」
カノンが銀靴の踵を鳴らし、一番に走り出した。
背中の羽をパタパタと揺らし、自由な空気を満喫するように。
リトル・リンク、今日も(過去の敵にさよならを告げて)ちょっとだけ成長中。
第105話をお読みいただき、ありがとうございました。
シルヴィアとの因縁、ついに完結です。
最後は、ミルの「レバー干肉」が彼女の心を溶かす(?)という、リトル・リンクらしい結末になりました。
エドワードも、一人の冒険者として旅立つ決意を固めたようです。
一つの大きな章が終わり、彼女たちの物語はまた新たな日常へと続いてゆきます。
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次回、第106話。
平和になったリフェルナ。
……と思いきや、ギルドに「新人教育」の依頼が舞い込んで……?
お楽しみに!




