あの日のお弁当
卵焼きは焦げた。ハンバーグの形は悪い。彩りもイビツだ。初めてのデートでお弁当に初チャレンジしたが、散々な結果だ。
可愛くない、愛想ない、料理も下手、頭デッカチ。それなのに彼は何を期待するのか?
その卵焼きに箸をのばす。
「不味いなら、食べなくていいから」
「美味しいよ」
彼はあっさりとそう言う。
「好きな人に作ってもらって、不味い訳ないじゃん」
私は無言。彼の美味しいそうを表情を無言で見やることしかできなかった。
「不味いなら──」
「美味しいよ?」
結婚しても変わらずのやりとり。彼が作った方が美味しいのに。
「好きな人に作ってもらって、不味いわけないじゃん」
息子、君は黙れ。
Twitter上企画、世津路 章(こんぽた。)様主催「SS企画《俺のグルメFESTIVAL》」に参加した連載短編を転載しました。当初は先輩と後輩で、ここまで書くつもりはなかったのですが、グイグイと彼、彼女に引っ張れれた気がします。
さて最終話は、アンソロジー企画「おなかがすいて眠れぬ夜に」に収録していただきました。僕にとっては、人生初の同人誌参加作品とも言えまして。
現在も同人誌企画で手に取れるようです。
世津路 章はじめ、この企画で感想を交わし、そして拝読させていただいた皆様、拝読してくださった皆様、本当にありがとうございました!