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投資家オンライン紀行(仮称)  作者: プロジェクト夜屋
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天気予報新聞(2)

ちょっと短いですが区切りの都合からここで。

「諸君、そういう訳で営業だ。ノルマは、厳密には無いがこういうのは雰囲気が大事なのでひとり20件。契約もぎ取るまで死んでも帰ってくるな!とも言わないけれども、あちこち迷惑にならないように回ってきて欲しい」


「分かった」「いいわよ」「はーい!」


 我が社の精鋭営業部隊である、大塚、涼音さん、それになぜかついてきた妹が整列して並んでいる。細かい話であるが、妹はギルドマスター平川さんのOKを得ての単独外出になっている。厳密に縛りのあるギルドではないが礼儀である。外出前に、「頑張ってしっかり稼いでくるのよ!」とお母さんモードに平川さんがなぜかなっていたのは関係者だけの秘密だ。しかし、たまに妙な引き出しを持ってるな、あの人。


「各人、サンプルとチラシの準備は良いか?では生産職人関係は、大塚と涼音さんよろしく。そして攻略プレイヤー回りは我が妹と珍道中の予定だ。」


「ヤー」「あるわよ」「あいさー!」


 妹を借りてきたのは、本人が付いてきたがったというのもあるが、攻略関係者への顔の広さからである。あちこち出歩いて早速顔が広まりつつあることから、つなぎ役を期待している。むろん、営業機能はおまけ程度でしか捉えていない。


一応、ギルドマスター平川さんにも相当数のパンフレットを託して来たが、こういうのはまずは自分たちで回らねば。何より、実際に出歩いてみてお客さんの反応を見るのは何をするにも大事である。何か新しいアイデアが浮かんだり、予想していたのを違うところがあったらやり方を変えないとならない。フィールド調査大事。超大事。




「号外、号外~~。天気予報の情報ありますよー。天気予報新聞ですよーー。攻略のお供に、明日への活力に、天気予報新聞~~~。」


「ですよーー。」


 妹の友人ギルドへの訪問がてら、街中で過ごしたり何か用事をしているプレイヤーがなんだなんだと興味を持ってやってくるのに、サンプルの紙面とパンフレットをセットで配っていく。ちなみに、特段何の効果性能も無いメッセージペーパーは簡単なものなら一山幾らで格安で作ることが出来る。新聞作るのに原価がかかるのなら大変だったのだが、幸いにも問題になることはなかった。且つ、アイテムなのに手渡しの他にチャットのように送れるのがメッセージペーパーの面白いところである。実際に紙媒体の印刷と流通配布を現実でやろうとすると結構な金額がかかってしまうので気軽に商売始めようなんて考えられない訳であるが、その辺は良くも悪くもゲーム、といったところか。その他、特別デザインや構図を練ったりすると専用のスキルが必要になってくるが、いまのところはそこまで凝ることはせず。いずれやるとしましょう。しかし、この分だともしかするとデザイナーが専門職として成立するかもしれない。武器防具の類もオリジナルデザインを作れる様子だし。


「ひとつ頂戴」


「あいよっ」


 男女ペアでゲームを楽しんでるらしい、見るからにあからさまにカップルっぽいプレイヤーに声をかけられる。男性が戦士風、女性が神官風。流れが流れならもげろコールが起きてもおかしくなさそうなものであるが、お客さん(候補)のことを悪く言ってはいけない。にこやかに対応してサンプルとパンフの1セットを手渡す。


「どれどれ。晴れるのは明後日からか。じゃあ、お出かけはその辺に合うように。あれ、このスクロール高値買い取りって何? というか、これ無料なの?フリーペーパーみたいなもの?」


 男性キャラの方から質問が出たので答える。


「ええ、天気のフリーペーパーです。新聞読みたいリストにフレンド登録してもらえたら次回から自動で届くようになります。他に、新聞にはお店情報やお得情報なんかも載せられればと思ってます。」


 にっこり営業スマイル。


 そうなのである。サンプル紙面の広告には、他でもない、元々検討していたスクロールビジネスの広告を入れている。商号、つまりどういう名前で店なりを出すのかは最終決定ではないのだが、とりあえずの仮入れで「スクロール商会」としておいた。とはいえ、こういうのはお客さんが馴染んでしまうと名前を変えづらくなるので、このまま行きそうである。気がかりなのは、万一スクロール以外の商売に手を広げた場合に屋号と矛盾が出てしまうこと。しかし、既に新聞屋を始めてしまっているとなると手遅れかもしれない。


 スクロール商会の側から天気予報新聞を見ると、商売についてみんなに知ってもらうための告知手段と元手資金の獲得という一挙両得の役割が期待されている。スクロールビジネスを始めるには、元手資金がある程度いる。これは理由としては単純なところで、ある程度の品揃えが無いとお客さんも店に来ない。自分の欲しいものがあるかどうか分からない店はわざわざ足を運ぶ理由に欠ける。あるとすると、よっぽど欲しいものを探し回ってる場合か、掘り出しものを探すのが楽しい


「お店の情報とかあると嬉しいな。外のサイトをわざわざ見に行くのは、やっぱり面倒なんだよね。どうしても必要なら見に行くけど、それよりもゲームを楽しみたくて。それに、美味しいもの情報なんて、ありそうにないし勿体ないな、と思ってたの。それにしても、新聞かーー、面白いこと考えるね。ゲームの中でこんなこと出来るなんて。」


 紙面を眺めていた女性キャラの方がしみじみと口にする。食べ物情報か。確かに、一時的なステータス強化とエンチャントを兼ねて食べ物系アイテムを作っている生産系ギルドもある。女性客のニーズを考えると食べ歩き情報なんて誰かにまとめて貰ってもいいかもしれない。これは涼音さんの宿題事項にしよう。女性の悩みは女性の手で。


 なんだか面白そうだから、フレンド登録もよろしく、と嬉しい反応も得られてゲーム友達が妹ともどもまた増えたのであった。


 そうこうして行脚しつつ、妹の友人ギルドを練り歩いて、着々とお客さんを積み上げる。タダだからね。気軽にじゃんじゃん申し込んでちょうだい。幾つかのギルドでは、告知にも協力してもらえるとのことで、手伝って貰えた分、スクロール取引の際にはちょっとおまけか割引するのをもってお礼とした。幾つかのギルドではスクロールの下取りも出来、財布の現金はさみしくなったもののビジネスとしては上々の滑り出しを見せている。やっぱり、スクロール商店


 そもそもでいうと、天気予報の情報自体が売れることは流れからして分かっているのである。占い師が自由選択ではなくレア発生であるあたりが憎らしい。であれば、こんな面白そうな機会を逃すなんて勿体ないじゃないですか。やるに限る。おとなしく攻略なんてしてる場合ではない、ビジネスチャンスは出てきたらすかさず逃さず掴まねば。チャンスの女神の前髪がなんたらなどとの言い方があるが、アジア圏的思想では下手すると尼僧になって髪なんかないのかもしれないですよ。機会とは貴重なのです。


―――


 ビラ巻きと妹を連れてのあいさつ回りを一通り終え、生産関係者担当の大塚/涼音コンビに応援合流すべく街を急ぐ。急ぎつつも、もちろん、道々でサンプルとパンフレットを配るのは忘れない。


「お兄ちゃん、いっぱい配れたね」


「おう」


「喜んでる人、結構いたね」


「おう」


「面白がってる人、もっといたね」


「それが一番だ。なんせここはゲームだからな。」


 βテストなんてものにわざわざ集まってくるくらいなので、プレイヤーは概ねこういう目新しい、変わったことは好きな部類の人間が多い。また、ざっと見た感じチャレンジングでお祭り好きである。だから、お祭りの機会を提示すれば大方としては乗ってくれる。噂と口コミで上手いこと広がっていくのを願おう。



 天気予報新聞で考えているビジネスモデルは、妹ギルド宅でも説明したように、基本としてはメディアである。この先の天気を知りたい、というプレイヤーに向けて、週に2回程度、週間天気的に天気予報をお知らせする。紙面は無料、さっきカップル男性方に言われたようにフリーペーパーと解すると早い。天気情報はタダで提供する代わりに、生産職からのお知らせ情報などを載せる情報スペースを作って提供する。オリジナル記事を書いてもいいのだけれども、手間になることはやめて、今のところは天気情報+広告の組み合わせ一本勝負として考えている。収益源は、広告掲載料となる。もっとも、生産関係の情報などは攻略側でも欲しい情報だろうことから、いわゆるお邪魔虫としての広告ではなく、広告自体も情報になっているともいえる。


 お金を出す人、スポンサーは商品や店のことをたくさんの人に知ってほしいから広告を出す。つまり、新聞の読者数がたくさんいればいるほど嬉しい。新聞代を取らないのはこの読者数を増やしやすくするための策でもある。


 よって、広告出したい人に声をかけるのと同じくらい、天気情報の欲しい一般プレイヤーに声をかけるのは大事なこととなる。読者が多いほど広告を出したがる人が増える=メディアとしての価値は上がるということになるので読者数を広げるのはメディアの商売の基本中の基本と言える。


お金出す方のお客さんとなるのは、生産そのものはしていなくても独自ショップ運営をしているプレイヤー、あるいは生産主体のギルドとなる。もうちょっと個人的な告知や、攻略情報などを載せていくのもあるかもしれないけれども、いきなり全部は無理なので先々の目標としたい。お祭り開催してイベント号外とか、大規模攻略イベントとかあるならまとめて絞扼感系の募集などもいいかも。


広告スペースの値付けは正直まだ良くわからないので、初回無料にしつつ当分は創刊特別価格にしておいた。まずはお試しをしてもらうのが大事。さて、生産関連向けの営業の手伝い手伝い。まずは新聞の存在を知って貰えればいいので、契約取ってこいなんて無理には言わない。上手くいくのなら、自然と回るようになるはずだから。


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