第40話 行くぞ、陛下と面談だ
さて、陛下との面談だ。
最速で面談予定を組んでいただいたらしい。
わたしが……というか、お父様が申請してからわずかに五日で、わたしたちと陛下の面談が叶ってしまった。
うわー、ありがたいけど。王様のご予定って数か月先まで決まっているんでしょ?
わたしとの面談、ねじ込んだのかな……。
というわけで、今わたしは、アスランとお父様とカッシーニ伯爵夫妻と一緒に、王城の謁見の間になんか来てますよー。
さすがに王城にお猫様達、全員を連れてはいけない。
代表して二匹、子猫を連れて行くと言ったら、ハチワレとミケが前に出た。
「あなたたち二人……じゃなかった、二匹は子猫たちのリーダー……だったのかな?」
子猫になって見分けがつかなくなったけど。孤児院の子どもたちには大きい子と小さい子がいた。多分その大きい子がこの二匹か。
「よし。他の子やラグにゃんたちは、王様にあってくる間フィリップとアナベルにお願いするね」
やってきた謁見の間。既に陛下と王妃様が王座って言うの? 豪華な椅子に座ってわたしたちを待っていた。
その横には宰相閣下? とか? わからないけど、偉そうな人がずらっと並んで。
更に壁際には護衛兵がたくさん。
「おおっ! よくぞ来たっ! キアラよっ!」
「謁見が叶い、光栄でございます……」
ハチワレとミケを抱いてもらっているアスラン。わたし、そしてカッシーニ伯爵とお父様も。
四人と二匹で陛下と王妃様に頭を下げる。
ただし、わたしとアスランは沈痛な面持ちで。
お父様は、いつも通り不遜な顔。
カッシーニ伯爵は、陛下を前にした緊張で、カッチンコッチンだ。
「どうした? 気を楽にしてよいぞ」
そして、そのお猫様を触らせろ……的なことを言い出しそうな陛下を制して、わたしはいきなり土下座した。
「申し訳ございません陛下っ!」
先制、奇襲攻撃。さあ、嘘八百……というか、嘘も方便で、全方向ハッピーに収めましょうっ!
「ど、どうしたキアラ……」
「せっかく……、猫神様が……、陛下のためにと、新たなるお猫様を下賜、してくださったのですが……」
「おお、報告は受けておるぞ。十匹を超す猫が、我が国に降臨したと……」
報告したのはフィリップとアナベルよね。うん、わたしも陛下に対する報告を止めはしなかった。
「はい……ですが、わたしの不徳の至り……。お猫様が、お猫様が……」
よよよ……と崩れ落ちる。
「どうしたというのだ。泣いていては、わからんではないか」
「陛下、このお猫様方を見てお分かりになりませんか……?」
「猫がどうした……。ああ、小さいな」
「そこが問題なのでございますっ!」
わたしは、勢いよく顔を上げた。
「小さい……、小さいお猫様なのです。陛下、よく思い出してくださいませ。カッシーニ伯爵家にいた三匹の猫をっ! あの猫たちは、もう少し大きかった……」
「そ、それがどうしたのだ……?」
「この小ささでは、現世に、陛下のこの国に、この猫たちが存在できずに、猫の国に戻ってしまいます……っ!」
「な、なんだと……っ! なぜだっ! せっかくやってきた猫たちが、なぜ元の猫の国の戻る……っ!」
わたしはわざとらしくならないように、ハンカチを取り出し、涙をぬぐうふりをした。
「本来、お猫様は、ある程度の大きさをもって顕現します。そうでないと、この世界の圧に耐え切れない……。わたしも、このように小さなお猫様と、魂の契約を結んだことはなく……。隷属といいますか、主従契約も結べず、仮契約という形で、今、小さき猫たちを、ここに連れてきているだけです」
「仮、契約……?」
「はい。使用期間のようなもので、その期間のうちに本契約を……つまり、主従契約を結ばねば、お猫様は元の世界に戻る……」
「そ、それは……」
「わたしも、このままでは何とかならないかと、努力はいたしました。ですが……。お猫様達の、顕現した場所が悪かった……」
「場所?」
「はい。猫精霊様のお導きに従って、わたしは……、マッグレガー侯爵家のとある孤児院に参りました……。ですが、そこは……」
言葉を切ったわたしに、陛下だけでなく周りの重鎮たちもわたしに視線を集中する。
「そこは……、なんなのだ?」
「ひどい有様でした……。孤児院の子どもたち、世話役の下男は……、何日も食事することができず、飢えの果てにマッグレガー侯爵家に行ったようなのです。ですが……卑しい者が触れるなと蹴られ……、臭いだとか、不敬だと言われ……、その果てに……」
「もしや、死んだのか⁉」
わたしは何も言わず、目を伏せた。
いや、嘘じゃないからね。
陛下は立ち上がった。
「誰か至急っ! マッグレガー侯爵家の様子を調べてこいっ!」
ん、こうしておけば、サバトラさんとキジトラさんの孤児院以外の場所も、なんとかなるかなー。うん、監査でも、厳しくしてね。これ以上、わたしには他家の領民に対してできることはない。
ばたばたとした足音がして、誰かがたぶん調べに行くか、命令を下しに行くかしたであろう後、わたしは目を開けた。
「……カッシーニ伯爵領にて顕現してもらえれば無事だったのかもしれません。ですが、お猫様、お猫精霊様にとっては、人間の領土など認知の外……。わたしがいる近くに、新たなるお猫様を下してくれたつもりだったのでしょう。ですが、マッグレガー侯爵領はあまりにも……、お猫様にとっては、不浄の地で……、お小さくしか顕現できなかった……」
はい、演技続行中です。
アスランも沈痛な面持ちで、ハチワレとミケを抱いています。
「マッグレガー侯爵家に関しては即急に対応しよう。それで、猫たちは、普通の大きさになり、主従契約を結べるのか⁉」
陛下の言葉にわたしは首を横に振る。
「即座には、無理でございます……」
「何とかする方法は……」
よし、その言葉を待っていた。
わたしは重々しく「ございます」と答えた。




