蟻んこ狩り
椿鬼とパーティーを組んで、椿鬼が狩場にしていたという場所へ向かう。
木々が無くなり完全に岩と土だけになった頃、丁度地面に開いた穴から這い出てくる蟻を発見。近くには他のプレイヤーも蟻も居なかったので、そいつをターゲットにすることにした。
「椿鬼は近接での格闘戦が得意ってことでいいんだよな?」
「ああ。Pスキルの"格闘"とAスキルの"跳躍"でのインファイトがあたしの戦闘スタイルだよ」
「へぇ?"跳躍"も戦闘に使えるのか」
「まぁね。あいつ相手に見せてやるから楽しみにしてな」
跳躍かぁ、何するんだろ。跳び蹴りとかか?や、もしかしたらプロレス技かもしれん。STR型なら捕まえて跳んで地面にめり込ませれるかもしれん。やば、絶対見たい。絶対そうだ、そうに違いない、そうであれ。(三段活用)
「あんたが揃えてた短槍は投げる用だろう?数もあったし」
「さすがに分かるか。"投擲"メインで近づかれた時にに槍使う感じだな」
「あいよ。じゃあいい加減始めようかね」
「おーけー。石で呼ぶわ」
お互いに戦闘スタイルを共有したところで、蟻へ向き直る。インベントリから未加工の石(中)を取り出して、反対側へ歩きだした蟻のお尻に投げる。すかさずインベントリを操作して、投石槍を1本地面へ転がし、投丸石を両手に1つずつ持つ。
お尻に石が当たった蟻は這い出てきた穴を迂回してこちらへ向かって来る。その頭へ向かって石丸くんを投げる。先程のタゲを取る目的とは違い全力で投擲したそれは、蟻の頭を揺らして足を少し止めさせる程度の威力を出せたので、調子に乗ってもう1つもぶつける。
「おいおい、1人で倒しちまうつもりかい?」
2個目の石丸くんで再度、一瞬足を止めたのでついでに投石槍も投げようとしたところに椿鬼から呆れた様に待ったが掛かる。
おっと、つい楽しくなっちまってたぜ。流石にこれを当てても死にはしないと思うけど、パーティー組んだ初っぱなソロ討伐はなかなかにカスいよな。
「ごめんごめん。良い距離感だからつい調子に乗っちった。申し訳ねぇ」
「仮にも修理代ついでなんだ、在庫は温存してていいんだよ?」
「いやー、参加せん訳にはいかんから。余裕の時はただの石、邪魔ならん程度に投げとくわ」
「ん。それで良いさ。ならお次はあたしの腕を見て貰おうかねぇ。──いやさ、足かな」
ほう。足見てろってか。そのおみ足を。足フェチに。ありがとうございます!ありがとうございます!とは言うてもズボンの上からグリーブ着けてるから肌色はないのよねぇ。ケツでも見とくか。
「かなりヘイト取ってると思うから、ちょいとずれようか?」
「そう、だねぇ。せっかく引き付けてくれてるんだ、少しだけ横に頼むよ」
言われた通り椿鬼から5歩程度離れる。一方、それによって蟻を斜めに見ることになった彼女は、スタスタと無造作に蟻へ向かって歩いていく。触覚はピコピコと様々な方へ動かしているにも関わらず、近付く彼女を無視してヘイトを向けている方へ進んでいる。
「さて、いくよ」
車1台分ほどの距離まで近付くと、蟻が通るであろうルートの直前で、足を前後に少しずらした体勢で立ち止まった。前傾も後傾もしていないその体勢は、およそプロレス技に繋がる様には見えない
「"跳躍"ッ!ッはッ!」
蟻の頭部が半ば通り過ぎたタイミングでスキルを発動。瞬間、椿鬼の右足が跳ね上がり、頭部と胴体部の間の間接部に振り上げられる。蹴り上げられた蟻はへの字に折れ曲がり、さらにその勢いをそのままに1人と1匹は宙へ浮き上がる。
ブチブチィッッ
「あっっ──。は?」
まるで力ずくで布を引きちぎった時のような音が聴こえたかと思ったら、蟻の頭と体が分離していた。そして椿鬼の着地と同時に蟻は消滅した。
「すげぇな。使ったのまじで"跳躍"だよな?」
「‥‥‥」
「?」
「ッあ、ああ。"跳躍"だよ。こいつは使えばその場でただジャンプする訳じゃなくて、からだの角度とか足の位置とかで上にも前後にも左右にも跳び方を変えられるし、力の入れ具合によって高さの調節も出来る。それを利用して、前に置いた足を軸にしては後ろの足だけで"跳躍"してる。その足が直ぐに前方向に来るようにしてそのまま振り上げれば強力な前蹴りになるってわけさ。"跳躍"はスキルとして力強いジャンプをさせるために、副産物として脚力強化もみたいだったから思い付いたの」
呆けていたから顔覗き込んだら突然すっげえ早口で喋られたんだけど。こいつ、さてはエロいこと考えてたな。なんだろう?蟻?蟻フェチなの?あのサイズの蟻にエロさを感じたの?光沢?黒光り感にムラついた感じ?やべぇな。でも、俺は人の性癖を否定はしない男。そんなお前も愛そう。
ちな語尾。
「何変な顔してんだい、さっさとすすむよ!」
「へい」
気を取り直して更に先へ進む。