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ヒロイン達と下町を散策……聖地巡礼をしました。

ロジーとフレイ様の先導で城下町を散策する事になったわ。日も暮れかけてきて、ガス灯、水銀と……じゃないのよね、魔法灯の明かりに照らされて、ミニバラや季節の花を咲かせた童話に出てくるような可愛らしいレンガ作りのお家が軒を連ねているのは、感慨深いわ。


だってそう、これはいわばゲームの聖地巡礼!


デートイベントに出てきた路地や、告白シーンの街の広場の噴水や、プロポーズシーンの街の教会……!


うへへへ、垂涎の光景だぁ!オタクとしては狂喜乱舞、大満足ですよ。

スクショ撮れないのが悲しいけれど。ぐぬぬ。


前世では色々キツい事もあったけど、頑張ってきて良かったわ。

前世の何処かで手を抜いていたら、今世こんなに大当たりじゃなかったかもしれない。皆、真っ当に生きようね!


そう言えば、この世界カメラないのよね。不便。作るしかないか。

いや待て、公爵家のお抱えの画家とかいたか?絶対スチルシーン描かせて寝室に飾るわ!

公爵家の豪奢なベットルームが、あら不思議!見事なオタク部屋になることでしょう。


……バレたらお母様に物凄い怒られそう。


「ねえ、ロジーちょっとそこに立って。

リオ、こっちにこう、膝をついてロジーの手を取って!」


「はい?どうしてですか?

これでいいです?」


「……何故か嫌な予感がするから断る」


くそう、ロジーは素直に立ち位置についてくれるのに、妙に勘のいいリオが頑なに断り続けるからゲームのシーン再現出来ないじゃない!


それにしても、リオの奴、こんなに近くに可愛らしいヒロインがいるのに、口説くどころか意識もしないなんてどういう事なの?鈍感か?朴念仁?


先ほども、リオと2人きりにしてみたのだけど、世間話と何故か私の話で談笑するばかりで、一向にロマンスな関係性が進む気配なかったわ。どうして?


「なら、フレイ様。お願い!」


フレイ様ルートも展開が凄く良かったのよね。

突然覚醒した自分の光の力に戸惑いながらも、進もうとするヒロインの事を絶対オレが守るから!とそばで支え続けた聖騎士フレイ様。理想の騎士道物語だったわ。


「え、オレ?出演料高いぜ?」


「なら、こちらでいかが?」


そう言ってポケットから忍ばせておいたサファイアとプラチナゴールドの指輪を握らせる。

お母様から押し付けられたやつよ。なんでも、護符のアミュレットになっているんですって。なんなら婚約指輪にしてもいいのよ?


……ついさっきポケットに忍ばせておいたのを思い出したなんて言えない。


「ひっ!いやぁ!怖い怖い!こんなの売りに出したらすぐ足ついちゃう!丁重にお断りしますぅ!」


キャーキャー言われながら丁重に押し返されたわ。まことに遺憾である。

仕方ないのよね、この指輪ウチの公爵家の青薔薇の家紋が裏に入っちゃっているし。ぐぬぬ……察しが良いな、この下町出身。



ちょっと……いや、かなり困ったな。全然ゲーム通りに進まないなんて……。

フレイ様はついさっき知り合ったばっかりだから仕方ないとは言え、なんかこう、上手く良い雰囲気にならないものかな!?

ああ、さっさとくっついちゃってよ!もう!


やはり、私こと悪役令嬢という異分子が存在しているのがいけないのか。


しかし逃げようにもリオとフレイ様がガッチリガードしていて逃れようがないのよね。

ついさっきお手洗いに逃亡しようとしたけど駄目だったわ。おおかたフィオ殿下の指示だろうけれど。



ただ、幾つか問題視したところが何ヶ所かあって。


「……ねぇ、なんであそこの地区、上下水道整ってないの?」


たじたじとした様子で答えるのはフレイ様。


「あのなぁ、エリーゼお嬢。あそこは貧民街で迂闊に手を出せねーし、予算というものがね?」


実をいうとあそこの貧民街、ヒロインが攫われるイベントが起こるポイントなのよね。

確かデートイベント中に起こる予定だったはず……何も起きないのはどうしてなの。


やはりあの誘拐事件の首謀者って悪役令嬢だったのかな。


「おトイレだってそう!あれじゃ衛生環境良くないわ!」


「あんなにトイレの設備整ってるの上流階級だけだからな?」


リオが気まずそうにしているわ。それはそうよね。権力者側だもの。


「あんな所じゃ免疫力の低い子供や高齢者がかわいそうよ!どうにかできないの?」


「だから、それオレに言われてもさぁ」


「もう!お父様に言いつけてやるんだから!」


「あ、はい。それは是非ともよろしくお願いします、お嬢」


ウチのお父様も、ちゃんと国や国王陛下に掛け合ってくれるかは果てしなく疑問に思うけれど、やらないよりはマシよね。


「流石エリーゼ様ですね。

貧民街なんて皆見向きもしないし、むしろ嫌がるお貴族の方も多いんですよ」


……あ、しまった。やらかしたわ。

思い返してみれば、ゲームでの悪役令嬢は下町の事も見下していたし、貧民街なんて毛嫌いしていたはずよね。


「べ、別に気にしてなんか!貧民や下町なんて本当は嫌なんだからね!?」


「えぇ?分かりやすい嘘、雑な前言撤回するなよ」


印象をゲーム通りに戻そうとするものの、どうして言い方がツンデレっぽくなってしまうのでしょうか。


「その、すまない。……この件は国王陛下と兄上には報告して、元老院に釘刺すよう言っておくから」


「いや、あのな。簡単に謝るなよ、王子様。

このお嬢結構無茶言ってるからな?ウチの国って元々そんな予算ないから。

ドルシュキーが商工業発展させるまで本当貧乏国家だったからな?

北の方だと土地が痩せてるし寒過ぎてジャガイモしか育たない、燕麦しか育たない所とかザラにあるから。

人より羊の数の方が多いわ、人より金になる羊の方が大事にされてる所もあるぐらいで」


「ならこれに乗じて上下水道や道路の整備などのインフラ整備もそうだけど、農地改革や農法の開発支援、公立学校孤児院や老人ホームの設置、成人年齢に達した女性含む国民全員を対象とした普通選挙や一般市民で構成した下院議会、あと税制も見直して固定資産税や相続税の導入も」


「あのな、それ絶対お貴族ばっかの元老院と敵対するやつじゃないの!?

そんなの一気に無理にやろうとしたらお嬢の命が狙われるって!頑張って根回しして、長年のコネ作ろ?!」


それでも誰かが言い出さなきゃじゃない?

現代日本のインフラと治安と衛生環境と選挙制度と税制その他諸々目指さないと!

……そういえば前世の兄貴、ウチの実家の土地を無事に相続したのかな。田舎過ぎて土地売りに出しても売れないだろうし……職場の先輩が相続に関わる税ヤバいって言っていたのを今更思い出したわ。


「……要検討にしておくわ。うん」


「頼むからヒヤヒヤさせないでくれよ。

……それにしても、エリーゼお嬢は確かに変わってるよな。

お貴族のお嬢さんが庶民的なフィッシュ&チップスを食べたり、こんなに早く下町や庶民に馴染むなんて」


「えっ?そんなに?」


「エリーゼ姉上は、下働きのメイド達にも気取らずに話しかけるお方だからな。


なにせ昔、ジャガイモや玉ねぎの皮剥きを手伝おうとしてメイド達につまみ出されたり、洗濯物を干すの手伝おうとして執事にそんな事は貴族のご令嬢がする事ではありません、と怒られた事が」


「リオ、ちょっと黙って」


私はただ、国外追放になった時に備えて、自分の身の回りの事は一通り出来るようになりたかったのに。

まあ、その事をうっかり口に出して、お母様とアニータにギャン泣きされた事もあった。あの時は随分と悪い事をしてしまった。


「おいおい、エリーゼお嬢。アンタ、本当に変わってるんだな。ウチのお父様も前妻のミランダ様も、オレの母さんだってそんな事しないぜ?

それとも東の方の輪廻転生って考えを信じるなら、前世じゃド庶民だったとか?」


うーん、流石にフレイ様は痛いところを的確についてくるわ。

前世の記憶に引っ張られて、フランクになり過ぎたかな。


私はサラッと流すように、こう呟いた。


「……さあ?どうでしょうね」

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