第2章 豊穣の村②
「カイト、ダイキ両名。任務を遂行し終え、只今帰還しました」
薄暗く冷たい風が吹く場所にて
二人の男が一人の男に対し、跪いて返事を待っている
「ご苦労だった」
立っている男が二人に労いの言葉をかける
「して、赤いドラゴンはいたのか?」
「はっ。件の洞窟内にて、剣と盾を守るように居座っておりました」
「しかし任務は遂行できたのだろう?」
「はい。このレベル1のダイキが能力と《闇》の力を使い、命令通り破壊して参りました」
眼鏡をかけた男ーカイトが淡々と報告を述べていく
「ほう。そちらのダイキとやらの能力は?」
「はい。俺…じゃなくて私の能力はすり抜け。あらゆる物をすり抜けさせ、触れることができます。本来は自分の体や、自分の持っている物しかすり抜けさせれませんでしたが、《闇》の放出もすり抜けさせることができ、その力で剣と盾を破壊しました」
「ほう。なかなか用途が広そうな能力だ」
「見えている物で無いとすり抜けさせれない、という欠点がありますけどね」
続いてカイトの隣で跪いていた男ーダイキが質問に答えていく
「この用に、この男はレベル1ながら大変優秀でございます。それで烏滸がましいとは思いますが、任務の報酬として、このダイキをレベル2に推薦して頂けないでしょうか?」
それを聞き、ダイキが顔を下げたままニヤリと笑う
「俺から推薦しなくても、お前が推薦すればあのお方は耳を傾けてくれると思うがな、カイト。お前の目は俺もあのお方も信用している。現にお前が育てた中でもレベル7まで昇った奴もいる」
「育てたなどと滅相もございません。あの者が元より才能があったゆえです」
「《黒騎士》の中では異質な男だなお前は。いいだろう。俺からあの方に推薦しておこう」
「恐悦至極にございます」
「では、あの方の元へ行ってくる。次も期待しているぞ。カイト、そしてダイキ」
「はい」「は、はい!」
立っていた男が振り返り、去っていく
「はぁ~緊張したっす」
「まだ見られているかもしれないのだ。すぐに気を抜くな」
「うすうす」
男が去った後、直ぐに体勢を崩したダイキをカイトが諭す
「それにしても本当にあざっす、カイト先輩。これで俺もとうとうレベル2に」
「《闇》の放出をあそこまで上手く使える者は、そういないからな。お前が優秀だっただけだ」
「優秀とか言われたら照れるっすよ」
ダイキが恥ずかしそうに顔を下ろす
「それにしても先輩、あの人間二人の事は報告しなくてよかったんすか?」
「確かに少し気になるところはあったが、サクト様も忙しいのだ。あんな小さな存在など、わざわざ報告しなくてもよかろう」
「そんなもんっすかね」
「お前もレベルが上がると、上の方達に会う事が多くなるだろう。くれぐれも対応に気をつけるようにな」
「はいっす!」
そんな会話をしながらカイトとダイキもその場を去っていった
「おお~!」
ミキヤ達はレイジに連れられ、目的の村へ到達する
そこには村の名に恥じない立派な畑や牧場がいくつもあった
「ようこそ豊穣の村へ」
レイジが歓迎するようにそう言う
最初の村にも畑等はあったが、それに比べ段違いに大きい
食には全く困らなそうな村だ
「戻ったかレイジ、ルリ。その方達は?」
「あ、村長ちょうどいいところに。この二人はこの村には珍しい旅人ですよ」
「ほう?」
「お邪魔します。村長さん」「こんにちは!村長さん」
「ほっほ。元気な若者だのう」
村に入り最初に出迎えてくれたのは、まだまだ元気そうな村長らしきお爺さんだった
「旅人がこの村を訪れるとは…何年ぶりかのう」
「確かにな。二人は村に用があると言ってたけど、どうしてこんな地図にも載ってない村に?」
「地図に…載ってない?でもこの地図には」
荷物から急いで地図を取り出す
そこにはしっかり豊穣の村と記されているが…
「あれ、ほんとだ。おかしいな」
「ああ、そういえば言ってなかったのう。実は最近、王都にこの村の存在が伝わったらしくてな」
「えっそうなの」
「それで晴れてこの村も地図に載り、騎士の人も派遣されるそうじゃ」
どうやらこの村は最近まで地図に載っていなかったらしい
てことは、ストラに渡されたこの地図は最新の地図なのか?
「しかしもう地図に載っているとは、王都はさすが仕事が早いのう。この調子なら騎士の人もそろそろ来るじゃろう」
「良かったねお兄ちゃん!」
ルリが急に飛び上がって喜ぶ
「もう一人で背負わなくてもいいんだよ!」
「ああ、そうみたいだな」
「一人で背負うって?」
「ふふん。お兄ちゃんはね、この村で唯一戦える能力を持ってる人なの」
得意気にルリが言う
村に入る前に、何かしたら力ずくで追い出すと言われたのはそれでか
「それでお兄ちゃんは最近悪い予感がするとか言って、無理してたからほんとよかった」
「まあまだ騎士の人は来てないんだ。気は抜けないよ」
「もーまたそうやって気を負ってー」
「ルリはほんと優しい妹じゃのう」
「違うし!ただ心配なだけだし!」
本人に注意するくらい心配してるなら優しいのカテゴリに入るのでは
「ほっほっほ。まあとにかく、せっかく客人が来てくれたのじゃ。地図に載ることでこれから客人が増えてくるだろうし、精一杯もてなす練習台になってもらおうか」
「村長、言い方言い方」
練習台とか言われたのはともかく、もてなしてくれるのは悪い気はしない
「良いですよ村長さん。こちらの用もまだ保留みたいですし、なんなりと練習台にしてください!」
「私ももてなすことはあれど、もてなされる事はあまり無かったですが…精一杯協力させて貰います!」
「ありがとの、旅人さん方。最初に来てくれたのが優しい人達で良かったわい」
村長がにこりと微笑む
「こっちも旅の最初に来た村がこんな優しい村で良かった」
「ほんとですね」
「ではまず、儂の家に来てもらおう。レイジとルリも来なさい」
「わかった」「はーい」
もてなしに期待しつつ、村長の家へと向かった
案内されたのは村の中でも一際大きな家
ここが村長の家のようだ
「入りなさい」
「お邪魔します」
家の中は広いが、目立つような物は置いてない質素な室内だった
「さあ、そこに適当に座って。ところで四人ともお昼は食べたかの?」
「いえ、まだですね」「俺達もまだだな」
「なら良かった。おーい」
「はい、ただいま!」
村長の呼び掛けに応じ、家の奥からエプロンを来た女性が出てくる
「この者達は腹が空いておるだろうからの、この村の野菜や肉を使った最高の料理を作っておくれ」
「え、村長、俺達は別に」
「遠慮するなレイジ。お主らもここに来るのは久しぶりだろう。小さい頃はよく遊びに来てたんだがの…」
「あーわかったわかった。俺達も頂くとするよ。いいかなルリ?」
「最高の料理かあ~楽しみ~」
遠慮がちなレイジに比べ、ルリはとてもわくわくしてるようだ
「レイジとルリはともかく、この村の食べ物が外の人の口に合うのか分からなくての、是非食べてから感想を言ってくれ」
「分かりました」「はい!」
しばらく待つと、豪華な料理がいくつも出てきた
神殿で出てきた料理に勝るとも劣らない出来だ
「多くない?食べきれるかな」
「若いもんは沢山食べてなんぼじゃ。ほらほら食べるがいい」
「じゃあお言葉に甘えて」
「「「「いただきます!」」」」
まずはコーンスープのような料理に手を出す
「お味はどうかの?」
「めっちゃ美味しい」「はい!とっても美味です!」
「そうかそうか、口に合うようなら良かった」
しばらく食べていたのがお世辞にも美味しいと言えない保存食ばかりだったので、なおのこと美味しく感じる
料理の見た目は、元の世界に存在した料理と同じような物が多いが、味は同じでは無いようで、また違った美味しさがある
「旨いな、これ」「う~ん、美味しい!」
レイジとルリもご満悦のようだ
「最近レイジは思い詰めた顔ばかりしてたからの、笑顔が見れて良かったぞ」
「そ、そう?」
「そうじゃそうじゃ。この村の事を考えてくれるのは嬉しいが…無理は禁物じゃ」
「そうだよお兄ちゃん。皆心配してるんだから」
「ううむ…」
食べながら俯くレイジ
だが次の料理を口にするとまた口が綻ぶ
優しい味がするな、と思ったこの村最高の料理だった
「さて、食べ終わった所で旅人さんの話を聞こうか。この村へ何の用じゃ?」
食べ終わり満足したところに村長が質問してくる
どこから言うべきだろうか
違う世界から来たことは別に話さなくてもいいか
「えっと…俺達はストラっていう神様からのお願いで、この村に来たんだけど」
「神様?はっはっは!面白いことを言うなあ」
レイジに笑われた
どうして
「まあまあそう言うなレイジ」
「村長だって前言ってたじゃん。神様って存在が本当にいるなら魔物や《闇》に怯えなくて済むのにーって」
「いや、だから」
「この世界に神様なんていないよ」
バッサリ言われた
でもストラの存在を知ってる以上、そうだねと言うわけにはいかない
「でも、俺達は確かに神様と会って話してたんだぜ?マイなんて神様の側近だったし」
「はい!そうですよ!ストラ様は確かにいました!」
「その人が神って名乗ってるだけじゃないの?神っていう証拠はあった?」
「そりゃ勿論俺に力を与えてくれたり.異世界に行ったって話をしてくれたり…」
いや
この世界は能力という不思議な力があるのだ
能力を与えてくれたのがストラの能力だったかもしれないし、俺の世界に来たって言うのも作り話の可能性もある
これだけでは証拠にならない
「ううむ…そうだ!側近のマイならストラが神らしい事をしてるのを見たことあるんじゃない?」
「神らしい事ですか…うーん」
マイが顎に手を当て考え出す
「えーと…うーんと」
「・・・」
「もしかして…騙されてるんじゃないか?君達」
反論できない
確かに神様って何だ
俺が元いた世界ならば、能力の一つでも出せれば神様と言われても信じれるかもしれないが…
「ま、まあとりあえずその先を聞かせてよ」
何も言えなくなった俺達にルリが助け船を出してくれる
「とりあえずその神様…と名乗ってたらストラって人からお願いされた事がー」
腑に落ちないが、ストラが神を名乗る変人って事で話が進んでしまった
今すぐ帰ってストラに色々聞きたいものだ
「なるほどのう。だがこの村は今のところ何とも無いぞ?地図にも載ってなかったわけだし《黒騎士》が来たことも無いしな」
「そう考えると地図に載った今、《黒騎士》が来る可能性ができた訳か…俺が感じてた悪い予感ってこれのことか?」
「どうだろう。ストラがこの村を指定したのはその事を危惧してだろうか?」
帰って聞きたい事が増えてきた
まあストラと一緒にいた時間って丸一日も無いしな…
そんな人のお願いで旅する俺もあれだが
「用件は分かったが今は何も無いし、今日はここで泊まっていくか?」
「いいんですか?」
「良いとも。どの道この村に宿はまだできとらんしな。せっかくだしレイジとルリも泊まっていきなさい」
「いや、流石に泊まるのは」
「そうか…お前達が小さい頃はよく」
「ことあるごとに昔の事を持ち出すのは辞めてくれ…。分かった、泊まらせて貰うよ」
「ほっほっほ。それでいいのじゃ」
「じゃ、私はパパとママに言ってくるよ」
「ありがとルリ」
そうしてルリは一旦家に帰っていった
「さて、泊まるって言ってもまだ昼過ぎだし、この村でも見て回ってく?」
「それが良かろう。案内頼めるか?レイジ」
「任せてよ。それでいいかな?二人とも」
「うん。俺もこの村の事気になるし、もしかしたら暫く居座らせてもらうかもしれないし」
「そうですね。私もこの村を見て回りたいです!」
「決まりだな。じゃ、付いてきな」
荷物を村長の家に置かして貰い、家を出る
まだ外は明るく、仕事をしてる人も見える
「まあ見て回るって言っても、畑や牧場ばっかりだけどね」
そう言いながら村の色んな場所に案内してくれる
「あれ、あの畑だけ雨が降ってる?」
「ああ。あそこの畑の持ち主の能力は、雨を降らせる能力でね。降らせてる範囲はとても小さいけれど、水をまくのに使えるんだ」
「へぇ~」
「あそこ牛がすごい集まってますね!」
「ああ。あっちの牧場の持ち主の能力は、特定の動物に言うことを聞かせる事ができるんだ。一日に3回しか使えないけどね」
「なるほど~。仕事にとても合ってる良い能力ですね!」
「そうだな。この村には偶然にも、畑や牧場での仕事に使えそうな能力の人が多いんだ」
「そうなんだなあ」
「おーい。レイジじゃないか」
「あ、ユカリお婆さん。どうかしたんです?」
「いやあ新鮮な野菜が取れたから、お裾分けしようと思ってね。そこの人達は?」
「旅人の人達だよ」
「あーこの人達が例の!村中で話題になってたよ。珍しく旅人が来てるってね」
「そうなんですね」
「せっかくだ。あんた達も野菜貰っていきな!」
「いいんですか?」
「遠慮せず貰っていきな。せっかくこの村に来たんだ。この村の野菜で美味しい料理を作りなさい!」
「分かりました!ありがとうございます!」
「良いってことよ。じゃあまたね!」
「ああ。ありがとうユカリお婆さん」
「なんか…良い村だな」
ある程度見回り、夕日が見えてきた頃に呟く
「そうだろう?この村は優しい人ばっかりで、皆一生懸命仕事して助け合ってる本当に良い村だ。大きな特色は無いけれど、俺は最高の村だと思ってる」
レイジが胸を張りながらそう言う
「だから俺が守るんだ。《黒騎士》が来ようが何があろうが、絶対に俺が村を守って見せる」
レイジもその村の住人らしくとても優しい
だからこそ無理してしまうんだろうな
「そうだな。俺もこの村に居させて貰ってる間は協力するよ」
「本当か?」
「ああ。近い内に王都から騎士が来るんだろうけど、それまでまたレイジが無理に修行しないようにな」
「そうか…お前も優しい奴だな。流石、自称正義の味方だ」
「ちょっ、掘り返さないでくれよ…」
「ははは。まあとにかく、しばらくの間よろしくな。ミキヤ、マイ」
「おう!」「はい!」
レイジとは仲良くなれそうだ。
友達がいなかった俺だけど、レイジとなら仲良くやっていけるかもしれない
「そういえば、修行で木を沢山倒してたな。レイジはどんな能力なんだ?」
「俺の能力か?それは」
「キャー!」
「「「!」」」
近くから女性の悲鳴が聞こえる
レイジと顔を見合せ、すぐに走って悲鳴が聞こえた場所に向かった
何かが壊れる予感を感じた
「腹が減って森をさ迷ってたら…良いところを見つけたなあ!」
周りの人達が散っていく
何がこの村に侵入したのかその服装で分かったからだ
黒い修道服…《黒騎士》!
「こんな村が地図にも載らず隠れていたとはなあ!都合が良いからこの村を…占領しちまうか!」
「させるか!」
レイジが右手を前に出す
すると、レイジの右腕から水が滴り落ちる
「なんだァ…?お前は」
「この村を守る男だ!喰らえッ!」
レイジの右腕から青い玉…いや水が圧縮された弾丸が放たれる
それは凄まじいスピードで《黒騎士》の男に命中する
レイジの能力は圧縮された水を飛ばすのか!
「どうだ!《黒騎士》!」
「すごい威力…」
あの威力なら木を倒せるのも納得がいく
だが…
「へっへっへ、お前の能力は水か。そうかそうか」
「効いて…無いのか?」
見るからに狂っている顔をしている男は、傷一つ付いていなかった
それどころか怯みもしなかった…?
「なら…これでどうだ!」
今度は右腕からではなく、レイジの周りに先程より小さい弾丸が複数現れる
「行けッ!」
全弾命中する…が
「おいおいおい。その程度かよ?」
「な、なんだと…!?」
やはり効いていない
どうなっているんだ
「絶望を与えるために俺の能力を教えてやるよ!俺の能力は【植物】。お前が水を放つように、俺も植物を放ち攻撃するんだが…《闇》を能力に融合させたらなぁ、植物が魔力を吸収するようになっちゃってなぁ!」
「吸収だと…?」
「まあ、そんなに強い魔力は本来吸えないけどなぁ!お前の能力が俺の能力と相性が最高のおかげか、多少強かろうが吸えちまうよ!水なんて植物にとっては栄養でしかねぇからなぁ!」
絶望的だ
レイジでは相性が悪すぎる
なら俺が行くしかない!
ミキヤが腰に掛けていた剣を抜き、敵に迫る
「はっ!お前は飛び道具無しか!ならこっちから行かせてもらうぜぇ!」
木の根が絡まったような物が飛んでくる
横に回避しようとするが…
「ぐっ!」
木の根がかなり太く、完全に避けれずに弾き飛ばされる
「ミキヤ様!」
「くそ…痛ぇ」
「弱えなお前!じゃあトドメ…」
再び木の根を絡ませた物を飛ばそうとしてくる
が
「残念、こっちだ!」
敵がミキヤに気を取られている内に、レイジが敵に肉薄していた
「能力が効かないから何だ!」
「グホァ!」
レイジが敵の顔面を殴る
一発、二発、三発
「痛ぇじゃねぇかクソがあ!」
敵の体からイバラのような物が放出される
「ちっ」
レイジは後ろに避け、ギリギリでかわしきる
「おおおおお!」
そこで入れ替わるようにミキヤが敵に迫る
レイジもすぐに体勢を建て直し、敵との距離を詰めていく
「うぜってえな…雑魚共があああ!!!」
あと少しで間合いに届く…という所で足が止まった
いや、体全体がイバラのような物に絡まれ、動きを止められていた
「いつの間に!?」
イバラの根本を目で辿っていくと、敵の体からではなく、地面からそのイバラは伸びていた
「レイジは… !?」
レイジの方を見ると、そこにはレイジの足を貫通している地面から伸びた根が張っていた
「が…は…」
「あ…」
「ハハハ!弱え弱え!この程度で俺に勝てると思ったのか!?村を守る?その実力で?寝言は寝て言え雑魚が!」
レイジは必死に根を千切ろうとする
だがあんな太い根を道具も無しに千切れるとは思えない
「くそッ…くそう…」
「良い泣き顔だぜぇ?お前。じゃあ絶望する顔も見せて貰ったし、殺すかなあ!」
そう言いながら身動きが取れないミキヤに迫る
ここで終わりなのか…?
無理やり動こうとすればするほどイバラに付いているトゲが深く体を刺してくる
「させません!」
マイが両手を広げ、ミキヤの前に立つ
「マイ…」
「ミキヤ様はこの世界の正義の味方になるお方です!こんな所で殺させはしません!」
「正義の味方ぁ?ハハハ!お前も寝言を起きてる時に言うのが好きなのかあ?正義の味方なんてガキじゃねぇんだからよお!」
「ぐぅ…!」
心が折れそうだ!
でもそれよりもこのままだとマイが!
「マイ!俺の事はいいから!もう逃げてくれ!帰ってもいい!君は俺なんかの為に死んでいいような人じゃない!」
「いいえ!私はあなたのお付きです!私が生きている限り、絶対に死なせません!」
「仲良しだなあ!お前ら!そんなに仲が良いならまとめてあの世に送ってやるよぉ!」
敵の体からでてきた根が絡まり出す
死ぬ…のか…?
「ハハハ!死ねぇ!」
目の前のマイを見つめる
いや、俺は死んでもいい!でもこの子だけは!
正義の味方がこんな良い子を盾にして殺させるわけにはいかない!
必死にミキヤはもがく
動け動け動け動け!
「あああああ!!」
最後の抵抗をするかの用に明確な殺意を持って敵を睨む
すると…
「あ?」
「え?」
イバラからわずかに出ていたミキヤの手から、紫色の弾が出てくる
そしてその弾は敵めがけて飛んでいき、敵の体を押し付けながら吹き飛ばしていく
「があああああ!?!?」
そしてしばらく吹き飛び、近くの家の壁にぶつかり止まる
「が…あ…」
敵が白目を向き倒れると、次の瞬間、敵が黒い霧となり消えていく
「え…?え?」
何が起こったか全く分からないまま、敵が完全に消え去る
するとミキヤに張り付いていたイバラと、レイジの足を貫通していた根も消えた
「ミキヤ様…!良かった…!」
「ちょ、ちょっとマイ!」
マイが強く抱き締めてくる
「本当に…良かった…!」
「も、もう離れてマイ…恥ずかしいよ」
「あ、すみません」
マイが腕を離し、ほんの少し離れる
「ありがとう。マイ。庇ってくれなかったら終わってたかも…」
「いえいえ、お付きとして当然の事です!」
「当然の事って言っても…次からあんな事はしちゃ駄目だよ」
「いえ…そうはいきません!ミキヤ様がピンチであれば身を呈してでも守ります!」
「その気持ちはありがたいけど…」
強情だけど、ほんとに良い子だこの子は
だからこそ余計に死んでほしくないんだが…
「お兄ちゃん!」
ルリがレイジの元へ駆け寄る
見るとルリだけでなく、村長や他の村人も見に来ていた
「お兄ちゃん!大丈夫!?」
「右足をやられたが…なに、立てない事は無いさ。それよりも…」
レイジ達村人がミキヤを睨む
「さっきの弾…《闇》じゃな!貴様らも《闇》だったんじゃな!」
「え?違…」
「とぼけようとも無駄じゃ!何が神様だ適当抜かしおって!なぜ同士討ちをしたかは知らんが、《闇》を居座らせる訳にはいかん!この村から出ていけ!」
「そうだそうだ!」「出ていけ!《闇》!」
村長と村人がミキヤ達を必死に罵倒する
「俺たちは《闇》じゃない!むしろ《闇》を倒す側だ!な、なぁレイジ。お前も俺らの事を《闇》だと言うのか」
泣きそうな声でレイジに懇願する
が
「…ていけ」
「え?」
「この村から、出ていけ」
涙が出てくる
さっきまで協力していたのに
仲良くしていたのに
友達になれたと…思ったのに…
「…行こう…マイ」
「は、はい…」
マイと共に村の外へ向けて歩き出す
言いたいことは山ほどある
分からない事が色々ある
でも今は…この村から出ることが最優先だと思ったから




