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IF③『選択の代価』

「……最近、家族とはどうだ?」


 早希がそう切り出したのは、行きがけに入ったレストランに入り、お冷を口にしているところだった。


「またいきなりな話題が来たな。お前の話題の振り方はいつも独特だから慣れっこではあるけどさ」


 口の中に流れ込む冷たい感覚をひとしきり飲みこんで、裕哉は早希を見つめ返す。単純な疑問ではなく、チョイスされた話題に対しての戸惑いの方が強かった。


「そういえば挨拶に伺えていないことを思い出してな。父上には紹介したが、そちらにも話を通さなければ高裁のその先に行くのは難しいだろう?」


「あー……それは、そうなんだろうけどな」


 裕哉としても早希と関係を進めることはやぶさかではない。結婚したいという気持ちだって確かにあるし、その未来図も想像できる。……だが、問題点がそこには一つ残されていた。


「……母さんとは、あの事件以来まともにコミュニケーション取れてないな。大切な幼馴染を見捨てた奴なんて、息子とは思いたくないだろうからさ」


 梓を守り切れなかった責任感もあるのだろうが、早希と一緒にいることを選んだあの日から家族の態度は変化した。それも悪い方向へ。……そんな親に、早希を引き合わせてもいいものなのだろうか。


「俺は誓いを違えたやつだ。折れて動けなくなった心をお前に拾い上げてもらって、大切にしてもらってようやく今がある。……それが、あっちからしたら気に入らないんだろうよ」


 大切な幼馴染を捨てた少年に、何の代償もないなどあってはならない。早希との幸せをかみしめている今でさえ、その幻影は今でも残されている。


「……お前が背負わされたものに、誰もが期待していたということか」


「そういうことだ。俺は、梓を守る騎士じゃなきゃいけなかった。一度背負ったその役割を放り捨てることは、誰もの期待を裏切って一人になる事にほかならねえよ」


「……お前の家族はお前に似ているな。そういう意固地なところ、あの時のお前にそっくりだ」


 早希が全身全霊のエゴをぶつけた結果として今があるわけで、裕哉だって頑固な事には変わりないのだ。それを溶かすことがどれだけ難しい事か、早希は痛いほどに分かっていた。


「だから、しばらくは俺の親には紹介できねえよ。アイツらももう俺には興味ねえだろうし、勝手に咳を入れてもなにも口出しはしてこないだろうけど――」


「……いや、私はお義母さんにも話を通して結婚してみせるぞ。そうでなくては本当の幸せとは言えないだろう。お前と家族の仲も、私は取り持って見せる」


「……なんだかんだ、お前も頑固なのな」


 そうでなければあの説得劇もなかったわけだし、それが裕哉たちの未来を変えたのは言うまでもないのだが。その清々しいくらいのまっすぐさが、やっぱり裕哉には眩しくて――


「……ん?」


「……着信か。二人同時なのもあって、嫌な予感がするな」


 そんなことを思っていると、二人の携帯が同時に振動する。脳裏によぎったイヤな予感を振り払いながら、取り出した携帯を耳に当てると――


「……非番のところ済まないな。今から現場に来られるか?」


「……はい、今なら早希と二人で向かえますよ」


 その予感を裏付けるような言葉が耳に届いて、裕哉は思わず顔をしかめた。

次回、成長した二人の戦闘が見られるかと思います。成熟した連携や魔術など、是非楽しみにしていただけると幸いです!

――では、また次回お目にかかりましょう!

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