盗賊戦2
盗賊のアジトの前に付いた。主力であろう盗賊は先ほど倒したがまだ30人ほど残っている。さきほどの戦場では、死体の処理などを含め兵士が20名残ったのでここには80名いる。
見張りが2名いたが矢によってあっさり死んだ。予定通り裏手をふさいだ後睡眠煙幕を投げ込み武装待機。しばらくすると中が騒がしくなりゲホゲホいいながら盗賊が出てきた。碌に武器も持ってない盗賊などもいて抵抗しないやつは生け捕りとなった。1時間後、静かになったアジトに乗り込み制圧となった。あっけないもので、不意の睡眠煙幕によりほぼ無力化された盗賊団は全て生け捕りとなった。兵士含め全員でアジトを散策。盗賊がため込んだ武器防具財宝、話にあった女性子どもも外に連れ出した。冒険者が乗ってきた馬車には、財宝と女性・子どもを詰め込めるだけのせ、兵士冒険者も持てるだけの荷物を持って町へ帰ることとなった。アジトに残されたのは、多少の生活用品と壊れた武器防具・もともと奪ってきたものであろう壊された荷馬車などであった。さすがに100人にせまる規模の盗賊団で10年以上も暴れていただけあって、それなりの額の財宝のようだった。
全員が町に着いた頃には、真っ暗になっていた。荷は領主の屋敷に全て集められ査定され、査定後の半分が冒険者に配分される。そして女性と子どもは今日は冒険者ギルドがあずかるそうだ。周りの冒険者の話だと恐らく孤児院に入れられるのではないかということだ。生け捕りされた盗賊たちは、聴取を受けた後犯罪奴隷として鉱山などに送られるそうだ。俺は、「幸福の剣」の皆さんにお礼のあいさつをし宿に向かった。疲れ切っていたので倒れ込むように眠りについた。
翌朝、冒険者ギルドに向かった。受付にはアリエッタさんがいた。
「おはようございます。アリエッタさん。」
「おはようございます。アルさん、昨日は盗賊退治ごくろうさまでした。こちらが報酬の5銀貨になります。残りの盗賊の財宝分に関しましては査定にしばらく時間がかかるそうなので、もうしばらくお待ちください。」
俺は5銀貨を受け取りつつアジトにいた女性の事について聞いてみた。
「あのアリエッタさん、昨日保護された女性の方ですが、お話しすることは可能でしょうか?」
「何のためにお話しを希望されるのでしょうか?」
「結構前の話なんですが、俺盗賊に襲われたことがあって、その時に女性に逃がしてもらったんです。もし今回保護された女性がその人だったら、お礼を言いたいのと何か力になれないかと思いまして」
「そう ですか・・・そんなことが。いいでしょう。女性に聞いてみて、話を聞いてもいいと言ったなら女性の所に案内しましょう。それとアルさんの素性も話してもいいですか?」
はいと俺が言うとアリエッタさんは「少しお待ちください。」と席を外した。別の見たことのない男性職員が受付を交代し、しばらくすると
「会うそうです。どうぞこちらへ」
と、戻ってきたアリエッタさんが2階へ案内してくれた。2階の一室に案内されるとベットに横たわった女性がいた。彼女が保護された女性だろう。近づき顔を見るとはっとしてしまった。もう長くないんじゃないだろうかと思わせる死の気配がそこにあった。正直助けてもらったときの女性の顔を微塵も覚えてはいない。目の前の女性を見ても思いだすものはなかった。
「ごめんなさいね。寝たままで。私はアイダといいます。」
「アルフレットです。、お体大変そうなのにすいません。無理を言いまして。」
「ううん、いいのよ。でね早速だけど、君が話していたこと覚えがあるわ。」
「!?では、貴方がその時の?」
「違うわ。私は話を聞いただけ。襲われた時に赤子を逃がしたって。盗賊に連れていかれるよりはましだろうって思っていちかばちか逃がしたってね。」
「話してくれた女性は?もういないということは・・・」
「死んだわ。私と同じ。君はまだ子どもだし細かい説明なんてしないけど、結構な目にあったからね。私もその人も。」
見れば分かるし。想像もつく。
「・・・」
「でもね君を助けた人、ハンナさんって言うんだけど、その子どもは生きているわ。私といっしょに助けられた子どものうち一番大きい女の子、まだ7歳なんだけど。あの子は彼女の子よ。私が親代わりをしてたの。あと2人は別の女性の子ども。一番小さい双子の子は私の子どもでまだ3歳ね。」
「・・・そうなんですか。」
お礼を言うにもしても7歳のその子にお礼を言ってもよくわからないかもしれない。それに俺の命の恩人の子を助けてくれてありがとうございますってアイダさんに言うのも何か変な気もする。
「君、確かお礼と何か力になりたいって言ってくれてたのよね?それと、貴方の素性を伺ったけど森で一人で住んでるとか。」
「はい。9歳までは拾ってくれた爺さんと二人で、それから12歳の今までは一人で住んでます。」
「もし、可能だったらあの子たちを引き取ってあげてくれないかしら?」
えっ、俺が?まだ12だぞ。子どもが子どもを育てるのか?孤児院の方が無難じゃないのか?精神年齢はそこそこ高いと思うが。前世でも独身で、子育て経験はないぞ。
不思議そうな顔をしていると
「町に住んでいれば、町の人は、あの子たちが盗賊の子だって知ってる人もでてくるわ。孤児院に入っても「盗賊の子」ってことで肩身の狭い思いをすると思う。あの子たちに罪はないわ。こんなこと、12歳の君に頼るのなんて間違ってるとは思う。でも ごほ ごほ 私はもう長くない。これから守ってやることもできない。あの子たちは皆私の子。少しでも幸せになってくれるようにしてあげたいの。」
「・・・」
「お礼を言いたいって言う君の善意につけこむようで本当にごめんなさい。でも、先ほどギルド職員さんから話を聞いた時、光明が見えたと思ったわ。お願い。あなたを助けた女性、ハンナさんの子どもを助けると思って、ねぇ。ごほごほ。」
う~ん、俺もじいさんに助けられた身だ。助けてあげたいとは思うが。。。人の命を預かるなんて俺にできるのか・・・?
「3日ほど考える時間をくれませんか?」
「ええ、無理を言ってごめんなさい。」
いったん 森に帰り考える事にした。簡単に決められることじゃない。それにまだアイダさんは生きている。行くなら彼女もいっしょでないと子ども達も納得はしないだろう。だが、森まで体が持つのか?部屋の外に出てすぐにも ゴホゴホ と言う咳が聞こえてきてた。俺に知識がないもんだから『観察』スキルを使っても ただ病気としかでなかった。
色々考えることはある。とりあえず宿を引き払ってロッキーと森に帰った。




