盗賊戦1
今日は、盗賊討伐の日である。前日はぐっすり寝れたし、準備は万全である。ロッキーを連れて冒険者ギルドに向かった。そこそこ早めにきたつもりであったがすでに結構な人数がいた。周りを見ても俺より若いのはどうもいなさそうだった。きょろきょろしてると
「なんでお子様が、こんなとこにいるんだ~?保護者様はどこですか~?」
何かでかむさいおっさんが、俺をさげすむような感じで煽ってきた。小説やアニメだとこういう時返討にするんだろうけど。俺には無理だしなあ。てかこれって鉄板ネタじゃないか。などど考えつつ黙っていると
「やめろジャイアス。ここにいるってことは、Eランク以上の冒険者だろう。今からともに戦うのに何をしてるんだ?」
「け、Bランク冒険者セルバリー様は、言うことがお上品なことで。こんなガキといっしょに行って邪魔でもされちゃかなわねえからな。お引き取りねがおうと思ったんだよ。」
絡んできたのが「ジャイアス」うむ。名はていをなすか。190cmほどの大柄な体にごつい両手斧を持っている。防具は革系か。襲われたら瞬殺されそう。おっかねえ。で、かばってくれたのがBランクの冒険者らしい「セルバリー」さんか。片手剣っと金属鎧を着たスマートな男である。もてそうだ。
「邪魔にならないようにがんばります。」
俺がおずおずとそう言うと、
「ケっ!!」と唾を吐き捨てジャイアスは向こうに行った。
「いい腕してるんだが。荒れた性格をしていてな。ちなみに君ずいぶん若そうだがいくつだんだい?」
セルバリーさんが声をかけてきた。
「今12です。」
「ほぉー、その年でEランク以上か。大したものだ。ちなみに人を殺したことはあるのかい?」
「無いです。どうなるかわかりませんが、機会があれば今日ということになるかなと。」
「殺す ことになると理解してきているってことだね。気概は十分なようだ。今回は盗賊の数も多い。それほど腕の立つのはいないと思うが、死なないように気を付けるんだよ。」
「はい。肝に銘じます。」
そういうとさらっと人ごみに消えていった。
「あー諸君、朝早くから参加してくれた事感謝する。兵士50名、冒険者50名を持ってこの辺を荒らしまわっていた「ゴードリー盗賊団」は一人残らず殺すか捕まえる予定である。盗賊団の人数は100名を超えると聞く。同じ人数なら質はこちらの方が上だ。負けるはずがない!!では今回の作戦を説明する。」
兵士の中からひときわ偉いだろうなっておっさんが皆に声をかけた。にしても盗賊団、数多すぎじゃね?小さな村の総数より多いぞ。前世の田舎の集落より確実に多いね。何でこんなになるまで放置してたんだか。100対100・・・戦争やん。
「今までなかなかやつらの根城を見つけることができなかったが、やっとつきとめることができた。ここから約10km先にある森の洞窟がやつらの拠点だ。ある程度近づくまでは馬車や馬を使い東から迂回しながら進む。洞窟2km手前で徒歩に切り替え接近。洞窟の見張りを速やかに排除ののち、睡眠薬入りの煙幕を洞窟内に放つ。裏手に20、表に80と別れて逃がさないように出てきた盗賊を殲滅する。中でそのまま睡眠薬で眠っているのは後で処理する。編成は5人一組になってもらう。以上だ。質問はあるか?」
10km? とお!?てかよくそんなとこ見つけたな。
「質問いいか?裏手は20で少ないが 大丈夫なのか?」
冒険者の一人が質問した。
「裏手はかなりせまく、出てきたとしても一遍にでてこれない。まあ保険のようなものだしな。裏手は兵士10、冒険者10で行ってもらう。他に質問はあるか?」
特に質問はないようだ。俺も特にない。あっても目立ちたくない。
「では、今から5人組を作ってもらい、15分後出発する。」
皆がギルドの時計に目をやった後、近くの者と5人組を作るべく動き始めた。
知り合いなんていないし、どこに声かけようときょろってると割合若そうなグループが声をかけてきた。
「君、良かったら俺たちといっしょに組まないか?俺たち4人は普段「幸運の剣」って名前のパーティを組んでる。俺がリーダーのディナード。盾役だ。」
全身鎧を着て、大型の盾に片手剣を持ったディナードさんは、続けて残りの三人を紹介してくれた。2本の剣を腰に下げた剣士のエリオットさん、両手剣?らしきごつい剣を持ったダグラークさん、シンプルなバスタードソード持ちのナクレードさん・・・見事に剣士しかいねえwなるほど「幸運の剣」か。でも、装備は結構高そうなのつけてるし腕はたつんだろうなあ。少し気になった事があったので聞いてみた。
「あの、俺の武器手斧なんですけど、、、いいんでしょうか剣じゃなくて」
「あー問題ないよ(笑)で、どうする?一緒にやるかい?」
「あ、はい、お願いします。アルフレットといいます。手斧と投擲がメイン武器です。」
「じゃ。よろしく。俺たちは馬車に載せてもらうけど君は?」
「ロバを連れてますので、馬車の横を並走しますね。」
「了解。移動しながら簡単な連携も話し合っておこう。」
連携やパーティか。ドキドキするなあ。俺うまくやれるかな。
移動しながら連携の話を聞いたが、なんてことはない。ディナードさんが、盾を持って突っ込んだ後、アクティブスキル「挑発」で敵を引きつける。その間に攻撃だそうな。連携っていったい。。。
迂回しながら進み、昼を大きく回ったころ前方を走る兵士団が騒がしくなった。間が悪い事に盗賊たちはどこかを襲いに行くらしく50騎ほどで動いてるそうだ。盗賊団の頭領ゴードリーの姿もあったことから盗賊で間違いないらしい。5分もしないうちに正面対峙することになる予測らしいが、一人も逃がすつもりはないそうなので、そのまま戦闘突入を行うと指示があった。
兵士はほとんどが騎乗。冒険者のほとんどは歩兵として対峙する。臨時パーティ「幸福の剣」の皆が歩兵なので俺もロッキーから降りての戦闘である。ドクンドクンと胸が高鳴る。初めての殺し合いだ。
「あと、数分で盗賊団が姿を現す。向こうはまだこちらに気づいていないだろう。敵が動揺している間に一気にたたく。一人も逃すな!!」
兵士長の激に皆が こくんとうなずいた。俺も投擲を手に持ち構える。間もなく盗賊団の先頭が見えた。
「打て!!」
弓を持った冒険者と兵士が矢を放つ。盗賊団の何人かが馬から落ちたのが見える。いきなり前に現れた兵士や冒険者に動揺しているようで、盗賊団から叫び声や罵倒が聞こえてくる。かなり混乱しているようだ。
「行くぞ!!」
ディナードさんの呼びかけに合わせて、俺を含めた「幸福の剣」メンバーも前に出る。俺は走りながら盗賊へ向けて投げナイフを放った。狙いは首元。驚くほどすっと盗賊の一人の首元に投げナイフが刺さり馬車から降ちた。え?ってなっていると、誰かに後ろ側へ引っ張られた。そこに盗賊の剣が横なぎに振られる。後ろに引っぱられなければ斬られていた。
「一人倒したからって ぼーっとするな!!死ぬぞ!!」
両手剣持ちのダグラークさんが助けてくれたようだ。「ありが」
「礼はいい、前を見ろ。行くぞ」
礼の途中で遮られ、慌てて体制を立て直す。
「挑発!!」 ディナードさんがスキルを発動させる。盗賊の何人かが強制的にターゲットをディナードさんに向けさせられる。俺は手斧で馬に乗った相手を狙うのは難しいと判断し投げナイフでフォローに回った。「幸福の剣」の人たちは皆強く、対峙した盗賊を切り裂いていく。ディナードさんも複数の盗賊相手に余裕の盾さばきである。その後は俺の武器で盗賊を倒す事は無かったが、短い時間で戦場は静かになった。
動いている敵はいない。盗賊が乗った馬も半数以上は死んでいた。俺は自分が投げたナイフを拾って回った。盗賊の一人の喉にささったナイフも抜く。血が噴き出していた。
あっけないものだった。武器をぶつけ合うこともなく、ただ淡々と死が訪れた。俺が殺したのだ。ナイフを持つ手が震えた。震えはしたが、不思議と怖いという感じは無かった。
「初めてだったな人殺しは。」
ダグラークさんだ。
「はい。あまりにあっけなかったので、逆にあっけにとられてしまって。すいません助かりました。」
「どんなに鍛えた人間でも、死ぬときは簡単に死んでしまうものだ。鍛えようのない場所もあるしな。だが、鍛えることや経験を積むことは確実に死を遠ざける。この経験が今後に生きていくさ」
「はい。まだ今回の盗賊討伐が終わったわけではありませんし、気を引き締めます。」
「そうだな。」
「幸福の剣」は皆いい人だな。気遣ってくれたようだ。
少し離れたところでは、息のあった盗賊に尋問が行われていた。さっきはどこに行こうとしていたのか。アジトにはあと何人いるのか。アジトの内部構造は?など。息のあった盗賊は一人だけのようで、50ほどの盗賊集団は全滅だった。頭領のゴードリーの死体もあった。圧倒的な勝利だったようだが、こちらにも死傷者は2人でていた。なんとさっき絡んできてたジャイアスもその一人だった。見ていた人の話では、ジャイアスはゴードリーを含む盗賊5人を倒したが、盗賊の一人が毒剣を使ったらしくその毒にやられたそうだ。俺もダグラークさんが助けてくれなければ死んでいた可能性もあった。今まで死を身近に捉えてなさすぎたかもしれない。危機感がなさ過ぎた。盗賊たちの死体とジャイアスの死体を見つつそう思うのだった。
尋問の結果わかった事は、さっきの集団は町近くの村を襲う予定だった。アジトにはまだ30人の盗賊とさらった女性奴隷が一人。後は奴隷女性に生ませた子どもが5人いるらしい。奴隷女性は病に伏せており、子どもは少し大きめの子は料理の手伝いを、他は小さすぎて仕事はさせていないそうだ。子どもは全員病に伏せている女性の子どもというわけでもないらしく、他の母親は死んだという。今いる子どもは近々奴隷として売る予定だったそうだ。ろくでもない話である。
もし病の女性が俺を助けてくれた人だったなら、何とかして力になりたいと思う。何ができるかわからないけど。




