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アルバイト

 森の家に帰った次の日、外泊するために、家畜たちには多めの餌と水を用意し、盗賊退治へ向かうべくロッキーにまたがった。いつもの装備に加えて革袋には、肌着の替えと、携帯用の砥ぎ石、防具の補修材、ロープなどを入れている。今日は町の料理店で食べるつもりだし、明日の食事は領主が用意してくれるそうなので食料は持っていかない。

 万全とは言えないが、武器も防具も魔法もそろった。俺に人を殺せるかはわからないが、殺す心づもりだけは作っておこう。殺るか殺られるなら殺る方をとる。当たり前だ。問題は本番でびびらないかだな。魔物を倒したり獣を狩ったりして多少そういうことにも慣れたし抵抗感も薄れているとは思う。


「ま なんとかなるさ。」


 なるようにしかならないもんである。


 今日は荷物も少なく、ロッキーにまたがり町まで駆け抜けてみた。ロッキーも「ヒーハー!!」とご機嫌である。がんばって道を作った甲斐があるってものだ。40分も走れば町についた。道づくりの時にもしょっちゅうロッキーに乗っていたので慣れたとはいえ、ケツがいたい。癒しの水で痛みをやわらげたいとこだが、一目のあるところでやるとただの変態である。我慢した。


 昼は、屋台で簡単に済ませた。夜は「まんぷく亭」にて腹いっぱい食う予定である。寝る場所は素泊まり30銅貨の宿屋を予約してきた。ロッキーも飯付き10銅貨であずかってくれた。で、夜まで時間が空いたので冒険者ギルドで都合のいい依頼が無いか見ることにした。


 冒険者ギルドに入ると、笑顔の素敵なお姉さんが受付にいた。スキンヘッドじゃない。前もいた人だな、確か。受付に向かい話しかける。


「すいません、町での依頼は何かないでしょうか?明日盗賊退治に参加するので、今日中に終わる依頼がいいのですが。あ、ギルドカード渡しますね。」


「ありがとうございます。Eランクのアルさんですね、資料と照らし合わせますので、少しお待ちください。」


 俺の事を書いた資料と依頼をまとめた資料をパラパラと見比べている。


「良いのがございましたアルさん。ギルド近くにある料理店「まんぷく亭」のホールお手伝い依頼です。かなり繁盛されてまして短期でも長期でも手伝ってくれる人がいたら嬉しいってことで、ずっとでている依頼ですね。1日なら50銅貨、夜だけならその半分の25銅貨です。接客スキルをお持ちですし、いかがでしょうか?まかないもつくそうですよ。」


 んほ。なんかタイムリーな事で。。。昨日立ち寄った事によってフラグでも立ったんじゃなかろうか。めっちゃはやってたしなあ。断る理由もないし、受けるか。飯代も浮くしな。


「受けます。えと、素材を収めたことしかないので、こういう依頼の場合どうすればいいのでしょうか?」


「依頼書をお渡ししますので、料理店でお渡しいただき、店で依頼完了後サインをもらってきてください。それを持って報酬支払いとなります。」


「なるほど。もう昼まわってますので夜のみになると思いますが、今からいくと微妙な時間ですよね?」


 今は、昼の1時過ぎ。多分まだ「まんぷく亭」は戦場。今から行くとかえって邪魔になりそうだ。


「そうですね、夜だけの場合は4時ごろに来てほしいと言われています。」


 ちなみにであるが、冒険者ギルド含め町の中には、何か所か機械式であろう時計がある。1時間に一回鐘が鳴る。誰が鳴らしているのかは知らないけど。ちなみに俺はじいさんが持っていた30分砂時計で大雑把な時間を計算している。正確かどうかは甚だ疑問ではあるが、だいたいの事がわかれば問題ないのだ。


「2時間ほどありますね。どっかで時間つぶしてから行きます。依頼書いただいても?」


「はい、これをお持ちください。それと申し遅れましたが 私冒険者ギルドのアリエッタと申します。今後ともよろしくお願いします。」


 笑顔の素敵なギルド職員 アリエッタさん。覚えた!!年齢は25くらいかな。女性の年齢なんて当たった試しがないけども。


「はい。こちらこそ。」


 依頼書を受け取り、挨拶をして冒険者ギルドを離れた。


 1日ホールを手伝って50銅貨。飯が1食5銅貨、3食で15銅貨。素泊まり30銅貨だとすると町で生きていくのは、なかなかに厳しそうだ。俺は税を払った覚えがないけど、普通はここから税も払うだろうしなあ。というか、無納税者ってことで捕まったりするんだろうか?今度アリエッタさんか門番さんに聞いてみるか。やっぱし稼ぐなら魔物を倒す方が良さそうだ。無茶をしなければ何とかなるしなあ。

・・・と、ぼんやり考えながら通りを歩いていると、20代前半くらいのお兄さんがへたり込んで座っているのがみえた。傍らには大きめの木の樽が二つあり、ひもがついて運びやすいようになっていた。この町は、川の近くにあるのでその水を運んでいる途中で疲れたんだろうか。もしくは井戸水か。俺はありがたいことに魔法で水を生み出せるので、今生で水に困った事はないが。そうじゃない人は大変だよな。飲み水にしろ、色んな作業にしろ水って必要だろうしなあ。ん?今ふと思ったんだが、お金があまりないひとは、苦労して川や井戸で水を汲んでくるんだろうけど、苦労する代わりにお金で支払いたいっていう贅沢な人もいるんではなかろうか。


 水 売れるやもしれん・・・ふっふっふ。確認してみる価値はありそうだ。


へたりこんでいるお兄さんに話を聞いてみた。


「お兄さん、水を運んでいるんですよね?」


「ん?あーそうだよ。」


「水は川から運んでいるんですか?」


「元は川の水だけど、川の水を引き込んでるところがあってね。ゴミとかを軽く取り除いているんだ。そこから水を運んでいるんだよ。結構距離あるから大変でね。」


「なるほど。大変そうですね。ちなみにそこのお水を使うのはお金がいるんですか?」


「いや、お金はかからない。ただ見ての通り運ぶのが大変で。今休んでるところさ。」


「あの、もし水を運ぶのを代わりに行ったとして、お金出してくれる人はいそうですかね?」


「水の運び屋か?そ りゃ出す人はいるだろうよ。現にそれを商売にしてる人もいるからなあ。」


 え?すでにいるの!?水を売るというか水を運ぶ人が!?


「各家では、普通その家のこどもが運ぶんだが。商売なんかで大量に使うところは、大変だからお願いするみたいだよ。私のとこの工房は交代制で運んでるんだけどね。確かこれくらいのタルを一回運ぶのに1銅貨くらいだったかな。」


 樽は見たところ、30リットルくらいか。30リットルの水売って1銅貨だと、、、ん?使うの魔力だけだし、まあまあなんじゃないか。ぼろもうけは無理そうだけど。需要がどれだけあるかわからないし、顧客持てるまでは営業活動大変そうだけどね。


「ありがとう。お兄さん。勉 強になりました。」


「ああ、どういたしまして。」


 すぐには無理っぽいなあ。あんまり無茶やると今商売してる人からも恨まれそうだし。

楽にお金稼ぐ方法ってないもんだな。前世でも今生でも。





 その辺をぶらついた後、少し早めに「まんぷく亭」にやってきた。


「すいません。冒険者ギルドから依頼を受けて来ました。」


「はいはい〜あれ、あんた、昨日泣きながらご飯食べてた子じゃないの。よほど気に行ってくれたんだねえ(笑)」


 半分は成り行きです。。。


「わたしはこの店の女将ビーネだよ。よろしくね。じゃあ早速だけど、夕方の商売始まる前に色々教えるかね、手を洗ってからこっちおいで。」



 手を洗った後ホールに入り、食事の出し方、会計の仕方、食器類の下げ方、洗い場の使用方法等色々教わった。


「あんた、その歳にしちゃあ、しっかりしてるねぇ。家が食堂でもやってたのかい?」


「いえ、色々あって森で一人で住んでいます。問題ないなら良かったです。」


「その歳で一人かい?森は魔物がいるっていうのにすごいね。さて、そろそろ店開けるよ。がんばんなー。」


「はい。頑張ります。」



 昼も多かったが、夜もひっきり無しにお客さんが来る。エールやワインもよく出ていた。レジを使わない会計に最初多少まごついたが、前世でもイベントの時はよくあった事なので、すぐ慣れた。忙しい店に入ると大変だけど時間の流れが早くていい。何より久しぶりの接客は楽しい。女将さんの他に、厨房で料理を作っているのが旦那と息子、ホールの若い子は娘さんだそうだ。俺より少し上だったが、彼氏はいるらしい。恋のストーリーは始まりもしない(笑)


 途中ホールが落ち着いたので、洗い場に回った時、水魔法で洗浄すると、大層驚かれた。


 夜の9時ごろになり、あっという間に営業は終わった。掃除や洗い物、ゴミ出しも終わり一息つきつつ、水魔法で作った水を飲んでいると、一家総出で俺の前にきた。


「いやあ、今まで色んな人に来てもらったけど、あんたは別格だねぇ。手際もいいし、計算も早いし、水の生活魔法もたいしたもんだよ。」


 褒められるのは気持ちがいい。にしし。


「ありがとうございます。足手まといにならなくて良かったです。」


「何言ってるのさ、ウチの娘婿に、ほしいくらいだよ、ねぇあんた。」


「娘は嫁にやらん。」


「何言ってるのよ、お父さん、、、それにね顔がね、、、」


顔がなんだ!?おい。男は顔じゃない、魔力量だろう?


「今日は、ほんと助かったわ。次回からあんたが来る時だけ、報酬あげるようギルドに頼んでみるからまた来てちょうだいな。」


「ありがとうございます。機会があれば是非。」


 依頼書にサインをもらい、まかないの弁当を持たせてもらい、店を後にした。


 実に充実した労働であった。接客業は心に沁み込んでいるんだなあ。勝手に体が動いて声が出た。お金を貯めて店を出すのもいいかもしれない。調理スキルは大したことがないけど、鍛えていけば!!などと妄想を膨らませながら宿に向かい、ご飯を食べた後早々に寝た。ぐっすりと寝れた。

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