プロローグ
魔法少女とは、小さな女の子なら誰もが憧れる存在。特殊なアイテムや力を使い、華麗に変身して可愛い姿となる。
今までの自分とはもうおさらば。ふわふわモコモコの衣服を身に纏い、困っている皆を颯爽に駆け付けてお助け! 人知れず誰を助ける者も居れば、街の人皆に感謝される人も居る。
何より、この世界には今危機に瀕しているんだ。
《秘密結社アーク》という悪党が皆の住む街で、悪さを沢山しているの。
秘密結社アークは、人の中にある純粋な想いのエネルギー《ピュアエナジー》を吸い取って、この地球を支配しようとしている。
そんな事は絶対にさせない。
魔法少女は皆、秘密結社アークを倒す為に日々精進しているの。
そんな、魔法少女にわたしはなっている。
わたしは神城咲夜。ごく普通の高校2年生だった女の子です。
そして今日も、今も、大切な街とそこに住む皆を守る為に元気いっぱい可愛く変身しています。
「サクヨ、変身するッピ!」
わたしの肩の上に乗って喋るこの子の名前はピッピー。鳩みたいにふわふわモコモコで、水色の身体をしてて綺麗なわたしのパートナー。
この子がきっかけでわたしは魔法少女になれたの。この子と一緒に、秘密結社アークに立ち向かうよ。
「うん! いくよ、アクアク!」
体内にあるわたしのピュアエナジーを練り出し、一気に解放して身体全体に纏わせる。
「レッツ、ピュアチェンジ!」
わたしの中にあるピュアエナジーが、瞬く間に魔法少女の衣装へと早変わり。
ちょこんと小さな耳が立っている帽子、学校の制服にも似ているフリルのあるピンク色の衣服。
そして極め付けは、マジピュアアイテムのトールハンマーを手に持って変身完了。
「魔法少女咲夜! 貴方の心のピュア、わたしが取り戻す!」
「サクヨ、頑張るッピー!」
アークエナジーによって生み出された怪物アクアクを倒す為に、わたしは物凄い勢いで駆け出した。地面を蹴っただけでコンクリートが抉れ、僅か数秒でアクアクの懐に潜り込めた。
左拳を作り、そのまま渾身の一撃を込めたパンチを繰り出す。
アクアクの腹部にクリーンヒットし、その衝撃が背中にまで響き渡らせて膝を着かせる程の威力。
「やった!」
一度地上に足が着かせ、再度わたしは高くジャンプしてトールハンマーでアクアクの顎を殴り、首を大きく跳ね上げさせた。
「アク、アクアク!」
だが、トールハンマーの打撃に耐えたアクアクの反撃がわたしに襲い掛かる。
空中で受け身が取れず、逃げられない状態のわたしを巨大な手で握られ、全力で投げ飛ばされてしまった。
道路を抉りながら、わたしはそのまま何十メートルと転がる。
「あいたた……」
魔法少女の身体能力や耐久力は超人と化している。このくらいなら、痛みはあるけれど傷と呼べるものは存在しない。
顔を上げ、アクアクの方へ目を移すと追撃をかまそうとしている姿を目にした。
アクアクは、口内に凄まじいアークエナジーを充填させている。
嫌な予感がする。
「自身を持つッピ! サクヨの魔法はあらゆるものを打ち砕くッピ!」
「そうだよね!」
そう。わたしの魔法は全てを砕く魔法。この世に、万に一つとして砕けないものは無い。
「アクアクー!」
周囲の建物を消し飛ばしながら、膨大なアークエナジーを凝縮させたエネルギー砲が一直線に向かって来ている。
並大抵の魔法少女では、太刀打ち出来ないこの砲撃。
「でも、わたしなら砕ける!」
トールハンマーに手を添え、ピュアエナジーを充填させる事で使えるわたしの、わたしだけの魔法。
トールハンマーを大きく掲げ、野球選手の打者の様に構える。
「せーのっ!」
トールハンマーをタイミング良く振り、高出力のエネルギー砲と衝突する。その瞬間、あまりの衝撃に大地が割れ、その余波で建物が崩れるという同時に周囲にも被害が出てしまった。
だけど少しでも力を抜こうものなら、一気に持っていかれて自分ごと街は木っ端微塵に吹き飛ぶ。故に、加減も許されない。
周囲の小さな被害より、大きな被害を出さず人々を守る。
「わたしの魔法は、どんなものも打ち砕く。これがわたしの魔法──インパクトブレイク!」
更にピュアエナジーをトールハンマーに流し込む事で、わたしの魔法の出力は上がり、煌めく。
そして、砕いた。
トンデモない轟音が街全体に響き渡る代わりに、アクアクが放った高出力のエネルギー砲を砕いて無力化する事に成功した。
「今がチャンスッピ!」
膨大なエネルギーの消費によって、アクアクは今疲れ果てて動けないでいる。
倒すなら今が好機。
ピッピーの言葉を聞いて即座にわたしは地面を蹴り、駆け出した。
「これで終わりです、ピュアブレイク!」
腹部に一撃を加え、怯んだその隙に左右に振って二撃、そして最後にトドメの一撃を上から叩き込む。
休む暇すら与えさせない四段構え。全力全開の重たい打撃によって、アクアクが起き上がる事はなかった。
そして、力尽きたアクアクは霧散となって消えたのだった。
「うへぇ……今日も沢山の被害が出てしまいました」
「死んでしまうよりマシッピ。それに、アクアクが浄化されれば、霧散したアークエナジーがピュアエナジーに変化して街を元の姿に戻すッピ」
「だとしても、なんだか申し訳なくて」
「それよりも、今日もまた派手にやっちゃったから人が集まり出しているッピ。急いで此処から離れるッピ」
そうだね、とわたしは相槌を打って急いでこの場から身を引いた。
魔法少女ピュアサクヨ。今日も秘密結社アークから街を守りました、とさ。




